子どもたちは。 毎日、小さな“初めて”を頑張ってる。 その一歩一歩が。 きっと、“大きくなる”ってことなんだろうなって。
六月。
雨の日が増えてきた。
窓には、ぽつぽつ雨粒。
結愛は、長靴を履けるだけで嬉しそうだった。
「ぴちゃぴちゃする!」
朝からテンション高い。
ある日の夜。
優月が学校から、一枚の紙を持って帰ってきた。
「ねえ、これ」
見ると。
学校の“家族参観日”のお知らせだった。
結愛も、小学校で初めての参観日。
「ぱぱくる!?」
目がキラキラ。
僕は笑った。
「もちろん」
唯ちゃんも頷く。
「楽しみだね」
でも。
その日の夜。
結愛が布団の中で、少し不安そうに言った。
「ちゃんとできるかな……」
僕は隣に座る。
「なにが?」
「おべんきょう」
結愛は、少し眉を下げていた。
まだ始まったばかりの学校。
頑張ってる分、不安もあるんだろう。
すると。
隣の部屋から優月がやってきた。
「結愛」
「うん?」
「まちがえてもいいんだよ」
結愛、きょとん。
優月は笑う。
「わたしもいっぱいまちがえたもん」
「ほんと?」
「ほんとほんと」
それから少し得意げに言った。
「ぱぱなんて、いまでもまちがえるし」
「巻き込まないで!?」
家族全員、吹き出す。
結愛も笑った。
不安が、少しだけ軽くなったみたいだった。
そして参観日当日。
教室には、小さな机と椅子。
一生懸命座ってる子どもたち。
結愛は――
背筋ピーン。
緊張してる。
先生が質問する。
「この字、読める人ー?」
結愛、勢いよく手を挙げる。
でも。
当てられた瞬間。
固まる。
「えっと……」
教室が少し静かになる。
僕まで緊張。
その時。
結愛が、小さく深呼吸した。
そして。
「“あめ”です!」
言えた。
先生が笑顔で頷く。
「正解です」
結愛の顔が、ぱぁっと明るくなる。
その瞬間。
僕と唯ちゃん、目が合う。
二人とも、ちょっと泣きそうだった。
帰り道。
結愛は、ぴょんぴょん歩きながら聞いてきた。
「ちゃんとできてた?」
僕は笑う。
「うん、すごかった」
優月も頷く。
「かっこよかった!」
結愛、嬉しそう。
でも。
少ししてから、小さく言った。
「ほんとは、どきどきした」
僕は、その正直な言葉が愛しかった。
怖くても。
緊張しても。
ちゃんと頑張った。
それって、本当にすごいことだと思う。
夜。
結愛は、ランドセルの横で眠っていた。
その寝顔を見ながら。
僕は思う。
子どもたちは。
毎日、小さな“初めて”を頑張ってる。
その一歩一歩が。
きっと、“大きくなる”ってことなんだろうなって。




