これから。 楽しいことも。 泣きたくなることも。 いっぱいある。 でも。 きっと大丈夫。 この子は。 笑いながら前へ進んでいける子だから。
四月。
桜が満開だった。
今日は――
結愛の入学式。
朝から家の中は大忙し。
制服。
名札。
ランドセル。
結愛は、鏡の前で何回もくるくる回っていた。
「しょうがくせい!」
嬉しさが隠せない。
優月は、その姿を見ながらニコニコしてる。
「ランドセルおっきいね」
実際、大きい。
ほぼランドセルに背負われてる。
唯ちゃんは、髪を整えながら少し目を潤ませていた。
「ほんとに小学生なんだねぇ……」
僕も、なんだか不思議だった。
ついこの前まで。
「ぷりん!」って走り回ってた小さな子が。
もう小学生。
時間って早い。
入学式の会場。
新しい制服の子どもたち。
少し緊張した空気。
でも。
結愛はキョロキョロ。
落ち着かない。
「おともだちできるかな」
小さい声で聞いてきた。
僕は笑った。
「結愛なら大丈夫」
優月も頷く。
「すぐできるよ」
式が始まる。
校長先生のお話。
名前を呼ばれる時間。
「山本 結愛さん」
「はい!」
元気すぎた。
体育館に響いた。
周りの保護者、ちょっと笑ってる。
僕と唯ちゃんも、つられて笑ってしまった。
でも。
返事した結愛の顔は、すごく真剣だった。
その姿を見た瞬間。
胸がじんわり熱くなる。
“ちゃんと成長してる”
そう思った。
式のあと。
桜の前で家族写真。
タイマーセット。
みんな並ぶ。
その瞬間。
風が吹く。
桜が舞う。
すごく綺麗だった。
……のに。
結愛、くしゃみ。
「はっくしょん!!」
変顔で撮れた。
優月、笑い崩れる。
唯ちゃん、立ってられないくらい笑ってる。
僕も吹き出した。
結局。
今年も“山本家らしい写真”になった。
帰り道。
結愛は、ランドセルを揺らしながら歩いていた。
少し疲れてるけど。
顔はずっと嬉しそう。
「ねえ、ぱぱ」
「ん?」
「ゆあね」
「うん」
「いっぱいおともだちつくる!」
僕は笑った。
「楽しみだね」
その時。
優月が、少し後ろから優しく言った。
「わたしも、結愛が困ったら助けるからね」
結愛は、振り返ってにこっと笑う。
「ありがと!」
そのやり取りを見ながら。
僕は思った。
優月も。
ちゃんと“お姉ちゃん”になったんだなって。
夜。
寝る前。
結愛は、ランドセルを抱きしめながら眠っていた。
大事なんだろうな。
新しい世界が。
新しい毎日が。
僕は、その寝顔を見ながら静かに思う。
これから。
楽しいことも。
泣きたくなることも。
いっぱいある。
でも。
きっと大丈夫。
この子は。
笑いながら前へ進んでいける子だから。




