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少しずつ、“誰かを大切にする気持ち”を覚えていくんだろうなって

二月。


バレンタインの季節。


スーパーへ行くと、チョコだらけ。


結愛は、入った瞬間テンションが上がった。


「てんごく……」


まだ意味は分かってない。


でもチョコいっぱいで幸せらしい。


ある日の夕方。


優月が、学校帰りに小さな袋を抱えて帰ってきた。


「ただいまー!」


なんだかソワソワしてる。


唯ちゃんが気づく。


「なにそれ?」


優月、少し照れながら袋を隠す。


「ひみつ!」


怪しい。


その夜。


キッチンから、甘い匂いがしてきた。


僕が覗くと――


優月と唯ちゃんが、一緒にチョコ作りしていた。


結愛も参加。


でも。


ほぼ食べてる。


「これあじみ!」


五回目。


優月は、一生懸命ハート型のチョコを作っていた。


真剣な顔。


でも。


途中でチョコをこぼす。


「あぁー!」


結愛、大笑い。


唯ちゃんは優しくフォロー。


「だいじょうぶだよ」


僕は、少し離れた場所からその光景を見ていた。


なんだか。


すごく温かかった。


誰かを喜ばせたいって気持ちが、部屋いっぱいに広がってる感じだった。


翌日。


朝から優月がソワソワ。


「ちゃんとできてるかな……」


何回も袋確認してる。


僕は笑った。


「絶対喜ぶよ」


優月は、小さく頷いた。


学校へ行く前。


優月が、僕にも小さな包みを渡してきた。


「これ、ぱぱに」


僕、びっくり。


開けると。


少し形のいびつなチョコ。


でも。


世界で一番嬉しいチョコだった。


「ありがとう」


優月は、照れくさそうに笑う。


「えへへ」


その横で。


結愛も走ってくる。


「ゆあも!」


渡されたのは――


半分かじったチョコ。


「なんで減ってるの!?」


家族全員、大爆笑。


夜。


みんなでチョコを食べながら、今日の話を聞く。


優月は、友達同士で交換した話を嬉しそうにしていた。


その顔を見ながら。


僕は思う。


こうやって。


少しずつ、“誰かを大切にする気持ち”を覚えていくんだろうなって。


その時。


結愛が突然。


「ぱぱ」


「ん?」


「だいすきだから、チョコあげた!」


僕は、少しだけ胸が熱くなった。


「そっか」


結愛は満足そうに笑う。


「うん!」


その横で。


優月が小さく言った。


「“好き”って、あげるとあったかくなるね」


僕は、その言葉に静かに頷いた。


たぶん。


本当にそうなんだと思う。


好きって。


言葉だけじゃなくて。


一緒に笑うことだったり。


心配することだったり。


チョコを作ることだったり。


そんな小さな行動の中に、ちゃんとあるんだろうなって思った。


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