今年のサンタ、困りそうだった。
十二月。
町はイルミネーションでキラキラしていた。
コンビニに入るとクリスマスソング。
スーパーには大きなケーキのポスター。
結愛は毎回立ち止まる。
「これたべたい!」
全部。
欲望に正直。
そんなある日。
優月が学校から、少し大きな紙袋を持って帰ってきた。
「ただいまー!」
なんだか嬉しそう。
中から出てきたのは――
手作りのリース。
松ぼっくりやリボンで飾られた、小さなクリスマスリースだった。
「わぁ……!」
唯ちゃんが目を輝かせる。
優月は少し照れながら言った。
「家にかざろうと思って」
僕は、その言葉だけでなんだか嬉しくなった。
“家に飾りたい”って思える場所になってるんだなって。
結愛は、リースを見ながら真顔。
「おいしそう」
食べ物じゃない。
その日の夜。
みんなでクリスマスツリーを出した。
箱を開けた瞬間。
結愛、テンション爆発。
「きたぁぁ!!」
飾り付け開始。
優月はバランスよく飾っていく。
唯ちゃんは、写真係。
僕は――
脚立係。
でも。
案の定。
飾りを取ろうとしてバランス崩す。
「あっ」
グラッ。
優月、即ツッコミ。
「ぱぱー!!」
結愛、大爆笑。
唯ちゃん、もう笑いすぎて写真ブレてる。
結局。
今年も安定の“転びそう担当”だった。
でも。
みんな笑ってる。
それだけで、なんだか楽しかった。
ツリーが完成すると。
部屋が一気にクリスマスになった。
ライトが、ぽわっと光る。
結愛は、床に座って見上げていた。
「きれぇ……」
優月も、その隣で静かに笑っている。
その時。
優月がぽつりと言った。
「なんかさ」
「うん?」
「毎年クリスマスくるの、うれしい」
僕は笑った。
「なんで?」
優月は少し考えてから言う。
「みんな、いっぱい笑うから」
その言葉に。
唯ちゃんが優しく微笑んだ。
僕も、静かに頷く。
たしかに。
この季節は、家族で過ごす時間が増える。
ケーキ食べて。
プレゼント悩んで。
一緒に笑う。
その“当たり前”が、きっと幸せなんだ。
夜。
子どもたちが寝たあと。
僕と唯ちゃんは、光るツリーを見ながら温かいコーヒーを飲んでいた。
唯ちゃんが、小さく言う。
「優月、大きくなったね」
「うん」
「結愛も」
僕は、静かに笑った。
本当に。
少しずつ。
ちゃんと成長してる。
でも。
今みたいに、みんなでツリー囲んで笑う時間は。
ずっと覚えていたいと思った。
その時。
寝室から声。
「……ぷれぜんとは……ぷりん……」
結愛、寝言でサンタ交渉してた。
僕と唯ちゃん、吹き出す。
今年のサンタ、困りそうだった。




