ちゃんと言えた優月は、きっと少し大人になったんだろうなって。
十一月。
少し冷たい風が吹く帰り道。
優月は、珍しく静かだった。
ランドセルを背負って。
足元を見ながら歩いている。
僕は隣で気づく。
「どうした?」
優月は少し迷ってから、小さく言った。
「今日ね……」
「うん」
「友達と、ちょっとケンカした」
家に帰ると。
唯ちゃんも、すぐ空気を感じ取った。
結愛だけは通常運転。
「おやつー!」
平和。
リビングでココアを飲みながら。
優月は、ぽつりぽつり話し始めた。
友達と意見がぶつかったこと。
うまく言えなかったこと。
最後、なんとなく気まずくなったこと。
話しながら。
少しだけ目が潤んでいた。
僕は静かに聞く。
途中で否定しない。
急いで答えも出さない。
優月は最後に言った。
「なんか、嫌われたかも……」
その言葉に。
唯ちゃんが優しく言う。
「大事な友達だから、悲しいんだよね」
優月は、小さく頷いた。
その時。
結愛が突然、優月の隣へ座る。
そして。
自分のおやつを半分差し出した。
「どーぞ」
優月、少し笑う。
「ありがとう」
結愛は真顔。
「けんかしたら、はんぶんこ!」
謎理論。
でも。
家族全員、ちょっと笑ってしまった。
夜。
寝る前。
僕は優月の部屋へ行った。
優月は、ベッドの上でぬいぐるみを抱えていた。
少し不安そう。
僕は、ベッドの横へ座る。
「パパもね」
「うん?」
「子どもの頃、友達といっぱいケンカしたよ」
優月、少し驚く。
「ぱぱも?」
「うん」
「ころんでた?」
「そこは関係ない!」
優月、吹き出す。
笑った顔を見て、少し安心する。
僕は続けた。
「でもね」
「うん」
「ちゃんと仲直りしたいって思ってるなら、大丈夫なこと多いよ」
優月は静かに聞いている。
「大事なのは、“勝つこと”じゃなくて、“分かり合いたい”って思うことだから」
しばらく沈黙。
それから。
優月が小さく言った。
「……あした、“ごめんね”って言ってみる」
僕は笑った。
「うん」
翌日。
学校から帰ってきた優月は――
玄関開けた瞬間。
「なかなおりしたー!!」
超笑顔。
ランドセル飛びそう。
僕と唯ちゃん、同時に笑う。
「よかった!」
優月は、嬉しそうに話し始めた。
「ちゃんと“ごめんね”って言えた!」
「うん」
「そしたら、向こうも“ごめん”って言ってくれた!」
その顔を見ていたら。
僕まで胸が温かくなった。
その時。
結愛が突然。
「ゆあも!」
「ん?」
「ごめんね!」
「なにが!?」
理由不明。
でも。
家族全員、大爆笑。
結局。
笑って終わった。
でも僕は思った。
“ごめんね”って。
簡単そうで、すごく勇気がいる。
だからこそ。
ちゃんと言えた優月は、きっと少し大人になったんだろうなって。




