今よりもっと、優しい人になってる気がする
十月。
空が高くて。
夕焼けが、少し早くなる季節。
ある日の夜。
優月が、学校の宿題をしながら困った顔をしていた。
「うーん……」
僕が隣に座る。
「どうした?」
優月は、ノートを見せてきた。
宿題のテーマ。
『十年後の自分へ』
優月は、少し不安そうに言う。
「十年後って、想像できない……」
たしかに。
今の優月から見た十年後なんて、ずっと先だ。
僕は笑った。
「でも、ちょっと楽しみじゃない?」
優月は、小さく頷く。
「うん」
結愛は横で、色鉛筆を並べていた。
「ゆあは、ぷりんたべてる!」
十年後もブレない。
優月、吹き出す。
「絶対食べてる」
僕も笑った。
そして優月へ言う。
「十年後の優月ってさ」
「うん?」
「今よりもっと、優しい人になってる気がする」
優月は、少し照れた顔をした。
「なんで?」
僕は答える。
「だって今も、ちゃんと人の気持ち考えられるから」
優月は、静かに聞いていた。
それから、小さく笑う。
「そっか」
その夜。
優月は、一生懸命手紙を書いていた。
『十年後のわたしへ』
時々止まって。
考えて。
また書く。
その横顔は、少し大人っぽかった。
翌日。
休日。
みんなで近くの公園へ行った。
秋の風。
落ち葉。
どんぐり。
結愛は、どんぐり拾いに夢中。
「みてー!」
両ポケットぱんぱん。
歩くたびカラカラ鳴ってる。
優月は、落ち葉を集めていた。
赤。
黄色。
オレンジ。
「きれい」
唯ちゃんが、優しく笑う。
「秋だねぇ」
その時。
結愛が突然。
「どんぐりやさんする!」
始まった。
地面に葉っぱ敷いて、お店屋さん開店。
「いらっしゃいませー!」
僕、客役。
「これください」
「300まんえんです!」
高すぎる。
優月、大爆笑。
唯ちゃん、笑いすぎて座り込んでる。
結局。
落ち葉一枚で買えた。
安くなりすぎ。
夕方。
帰り道。
空がオレンジ色だった。
優月が、僕の隣を歩きながらぽつりと言う。
「十年後ってさ」
「うん?」
「みんな、どうなってるかな」
僕は少し考える。
未来なんて分からない。
でも。
僕は笑った。
「たぶん、いっぱい笑ってる」
優月は、その答えを聞いて嬉しそうに笑った。
「それならいいな」
その横で。
結愛は、どんぐりを握りしめながら眠そうに歩いている。
そして突然。
「……ぷりん……」
寝ながら喋った。
僕と優月、吹き出す。
どんな未来でも。
きっと。
この笑い声は、ずっと変わらない気がした。




