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幸せ”って。 立派な言葉じゃない。 こうやって。 くだらないことで笑える夜なんだろうなって。

九月。


少しずつ、風が秋っぽくなってきた。


ある日の夕方。


優月が学校から帰ってくるなり、ランドセルを置いて言った。


「ねえ、家族新聞つくりたい!」


僕、きょとん。


「家族新聞?」


優月は目を輝かせる。


「みんなのこと書くの!」


面白そうだった。


ということで。


“第一回 山本家新聞”制作開始。


優月が編集長。


結愛は……なぜか“おやつ担当”。


絶対必要ない役職。


リビングのテーブルには、画用紙やペンが広がった。


優月は真剣な顔で記事を書いている。


『最近のぱぱ』


嫌な予感。


数分後。


見せられた内容。


『今月もよくころんでいます』


「ニュースにしなくていい!」


優月、大爆笑。


唯ちゃん、机叩いて笑ってる。


結愛まで追い打ち。


「どんまい!」


家族の連携が強い。


でも。


新聞には、ちゃんと温かい記事もあった。


『ままのたまごやきはせかいいち』


『結愛はぺんぎんをだいじにしています』


『みんなでたべたアイスがおいしかった』


なんでもないこと。


でも。


読んでると、自然に笑ってしまう。


その時。


優月が、急に真面目な顔で聞いてきた。


「ねえ」


「ん?」


「“しあわせ”って、なんだと思う?」


僕は少し考える。


難しい質問だった。


でも。


僕は、テーブルを見た。


笑ってる唯ちゃん。


ペンをくわえて悩んでる優月。


クッキーつまみ食いしてる結愛。


僕は笑った。


「今みたいな時間かな」


優月は、少し驚いた顔をした。


「こんな?」


「うん」


「なんで?」


僕は静かに答える。


「安心して笑えるから」


優月は、しばらく黙っていた。


それから。


小さく頷く。


「そっか」


夜。


完成した家族新聞を、みんなで読む。


最後のページ。


そこには、優月の字で大きく書いてあった。


『これからも、いっぱいわらう』


その文字を見た瞬間。


僕は、なんだか胸がじんわり熱くなった。


唯ちゃんも、優しく笑っていた。


その時。


結愛が突然。


「ゆあもしんぶんかく!」


数分後。


完成。


『ぷりん

おいしい』


終わってた。


でも。


家族全員、笑い崩れる。


優月なんて涙出てる。


僕は、そのぐちゃぐちゃな新聞を見ながら思った。


たぶん。


“幸せ”って。


立派な言葉じゃない。


こうやって。


くだらないことで笑える夜なんだろうなって。


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