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“いっぱい笑ってたこと”だけは、ちゃんと残るんだろうなって

八月の終わり。


夏休みも、あと少し。


優月は宿題ラストスパート。


結愛は、その横で自由帳に謎の絵を描いていた。


「これは?」


僕が聞くと。


結愛、得意げ。


「ぷりんドラゴン!」


強そうで弱そう。


その日の夜。


唯ちゃんが、古い箱を持ってきた。


「そういえば、これ見つけた」


中には――


手紙。


僕と唯ちゃんが、まだ結婚する前に書いたものだった。


「うわ、懐かしい……」


優月、興味津々。


「みたい!」


唯ちゃん、少し恥ずかしそう。


「えぇー……」


でも。


結局みんなで読むことになった。


若い頃の僕の字。


今よりちょっとカッコつけてる文章。


『これからも、いっぱい笑わせます』


優月、吹き出す。


「いまもしてる!」


結愛まで笑う。


「ころんでる!」


もはや伝説。


唯ちゃんの手紙には。


『どんな毎日でも、一緒にご飯を食べて笑える家族になりたいです』


その一文を読んだ時。


リビングが少し静かになった。


僕は、隣の唯ちゃんを見る。


今。


ちゃんと、その通りになっていた。


騒がしくて。


笑ってばっかりで。


時々泣いて。


でも。


一緒にご飯を食べてる。


優月が、ぽつりと言った。


「かなってるね」


唯ちゃんは、少し照れながら笑った。


「ほんとだね」


その時。


結愛が突然、真顔で言う。


「ゆあもてがみかく!」


数分後。


完成。


『ままへ

ぷりんいっぱいたべようね』


自由。


でも。


唯ちゃんは、すごく嬉しそうに笑った。


夜。


みんなでベランダに出る。


夏の終わりの風。


少しだけ涼しい。


遠くで、花火の音が聞こえた。


優月が、空を見ながら言う。


「夏、おわっちゃうね」


その声は、去年より少し大人っぽかった。


僕は笑う。


「また来るよ」


「うん」


優月は頷く。


でも。


少し寂しそう。


僕は、そんな優月を見ながら思った。


子どもって。


楽しい時間が終わるたびに、少しずつ“時間”を知っていくんだろうなって。


終わるから、寂しい。


でも。


終わるから、思い出になる。


その時。


結愛が突然。


「あ!」


「どうした?」


「せみいた!」


そして追いかける。


五秒後。


「こわいぃぃ!!」


逃げて戻ってきた。


家族全員、大爆笑。


結局。


最後は笑い声だった。


僕は、その笑い声を聞きながら思う。


きっと。


未来で今日を思い出した時。


細かいことは忘れても。


“いっぱい笑ってたこと”だけは、ちゃんと残るんだろうなって。


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