「ちゃんと積み重なってるね」
春休み。
朝の光が、少し柔らかくなっていた。
ある日。
唯ちゃんが、押し入れから大きな箱を持ってきた。
「これ、開ける?」
優月と結愛、即反応。
「なにそれ!?」
箱の中には――
昔のビデオカメラやDVD。
そして、小さなラベル。
『優月 はじめて歩いた日』
『結愛 はじめてのことば』
『家族旅行』
僕と唯ちゃん、顔を見合わせて笑う。
「懐かしい……」
その日は、“家族上映会”になった。
リビングを少し暗くして。
みんなでソファに並ぶ。
最初の映像。
まだ赤ちゃんの優月。
よちよち歩いて――
転ぶ。
僕、即ツッコミ。
「遺伝!?」
優月、大爆笑。
「ぱぱとおなじ!」
映像の中の僕は、若干若い。
でも。
今と同じように笑っていた。
次の映像。
小さい結愛が、初めて喋った瞬間。
『ぷりん!』
家族全員、爆笑。
唯ちゃん、涙出てる。
「やっぱり最初それなんだ!」
結愛本人は、ドヤ顔。
「いえた!」
誇らしげ。
でも。
映像が進むにつれて。
優月も結愛も、静かに見入るようになった。
運動会。
誕生日。
秘密基地。
花火。
どの映像にも、“笑い声”が入っていた。
優月が、小さく呟く。
「なんか……あったかいね」
僕は頷く。
「うん」
映像の中の僕たちは。
特別すごいことをしてるわけじゃなかった。
ただ。
ご飯食べて。
遊んで。
笑ってる。
それだけ。
でも。
それが、すごく幸せそうだった。
最後に流れたのは。
まだ小さい優月が、唯ちゃんへ抱きついている映像。
『ままだいすき!』
その声を聞いた瞬間。
今の優月が、恥ずかしそうに顔を隠す。
「みないでぇ!」
僕と唯ちゃん、大笑い。
結愛はすぐ便乗。
「ゆあもすきー!」
抱きつく。
結果。
全員くっつく。
暑い。
でも幸せ。
映像が終わったあと。
しばらく誰も喋らなかった。
なんだか胸がいっぱいだった。
その時。
優月がぽつりと言う。
「わたしね」
「うん?」
「おとなになったら、これみて、またわらう気がする」
僕は静かに笑った。
「絶対笑うよ」
優月は、少しだけ大人っぽい顔で頷く。
「そっか」
夜。
子どもたちが寝たあと。
僕と唯ちゃんは、消したテレビ画面をぼんやり見ていた。
唯ちゃんが、小さく言う。
「ちゃんと積み重なってるね」
「うん?」
「毎日」
僕は、その言葉に静かに頷いた。
何気ない日々。
騒がしいご飯。
くだらない会話。
転んだ運動会。
全部。
ちゃんと“家族の時間”になっていた。
その時。
隣の部屋から声。
「……ぷりん……まってぇ……」
結愛、寝言で追いかけてた。
僕と唯ちゃん、吹き出す。
どんなに感動しても。
最後はちゃんと笑わせてくれる。
それが、この家族だった。




