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神樹の少年シーナ ~転生したら、頭に葉っぱが生えたんだけど?~  作者: 月ノ宮マクラ


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009・神樹の枯死

(は、速い……!)


 駝鳥みたいな竜は、滅茶苦茶、足が速かった。


 ヒュゴッ


 風圧が凄い。


 景色が後方に吹き飛んでいく。


(光合成した僕の足でも、ここまでの速度は出せないよ)


 あと、振動も凄い。


 クレティーナさんに背中を押し付けてなければ、僕、落馬ならぬ落竜してたかも……。


 ドドドッ


 地面の起伏や障害物も関係なく、竜は走る。


 最初は驚いてばかりだったけど、30分もすれば、段々、竜の走りにも慣れて周囲を見る余裕も出てきた。


 そして、気づく。


(ん? 木が枯れてる?)


 森の木々の一部が灰色になっていた。


 葉が落ち、幹が乾燥し、枝が折れていたりする。


(んん?)


 そのまま進んでいくと、その割合が増えていく。


 ええ……?


 なんか、無事な木の方が少ないぞ。


 周囲の変化に、3人の女冒険者も気づく。


「森の木が……」


「何よ、これ?」


「ふむ。やはり、『護国の神樹』に何かあったようじゃの。……最悪の事態が起きたやも知れぬ」


 と、言う。


 僕は聞く。


「最悪の事態?」


「護国の神樹が枯れた」


「…………」


「もしそうなら、フィーンレイド王国存亡の問題となってしまうがの」


 おお……。


(凄い大事だね)


 淡々と語られるからこそ、重みを感じる。


 姉妹も無言だ。


 ドドドッ


 更に30分ほど、僕らは森を行く。


 周囲はもう、灰色の木立ばかりが広がっている。


 無事な木は、1本もない。


(何だろう?)


 周囲の木々が皆、泣いている気がする。


 そして、



 ――それ以上行くと、危ないよ。



 ――怖い奴がいるよ。



 ――引き返して。



 弱々しい草木の声なき警告が聞こえてくる気がする。


(…………)


 どうしよう?


 嫌な予感がする。


 けど、3人に説明できる材料がない。

 

 そんなことを思っている内に、3頭の竜は森の中の小高い丘を登っていた。


 ドドッ ドッ


 登り切った所で、速度を緩める。


 視界が開け、


「あ……」


 僕は、思わず声を漏らした。


 丘の上から、眼下の森が見渡せる。


 広大な大森林だ。


 その森の中に、巨大な樹があった。



 ――でかい。



 前世の野球場とか、丸ごと入りそうな幹の太さ。


 分厚い幹から生えた太い枝は左右に広がり、その規模は遥か数百メートルの長さに達するだろう。


(何だ、これ……?)


 想像の何十倍もの大きさだ。


 樹木――という生命体とは、明らかに一線を画している。


 これが、


(護国の……神樹)


 まさに神の木だ。


 だけど、


「……枯れてるわ」


 少女が、茫然と呟いた。


 年上の美女たちも険しい表情で、言葉もない。


(うん)


 見えている大樹は灰色で、枝には1枚の葉もなかった。


 地上の森には、折れた巨大な枝――その1本1本も、鉄塔みたいな大きさ――が何本も落ちている。


 明らかに、



 ――あの樹は、死んでる。



 と、わかった。


 赤毛の美女が言う。


「最悪であったか」


「……はい」


 クレティーナさんも静かに頷く。


 僕には、実感がない。


 でも、王国人の3人には『護国の神樹』が枯死したという事実は重い出来事みたいだった。


 3人とも、黙り込む。


(声、かけ辛いな)


 その時だった。



 ――あれ(・・)が、まだいるよ。



 と、木々の声がした。


(?)


 目を凝らす。


 すると、灰色の大樹の根本付近に人影があった。


(んん?)


 僕は指差し、


「あそこ、誰かいる」


「え?」


 後ろのクレティーナさんが驚き、他の2人も目を凝らす。


 3人も、人影を確認する。


(うん、僕の見間違いじゃなかった)


 よかった。


 もう1度、見る。


 その人物は、全身を灰色のローブで覆っていた。


 だから、容姿は不明。


 性別もわからない。


 その人物は、灰色の巨大な幹に細い片手を触れさせ、かすかに見えた口元は笑っていた。


 ゾクッ


 怖気が走った。


 その笑みに、邪悪な愉悦を感じる。


 その人は――それは、フィーンレイド王国の『護国の神樹』が枯死したことを喜んでいるみたいだった。


 3人の表情も変わる。


「何、アイツ?」


「妙な気配を感じます」


 と、姉妹が言う。


 赤毛の美女も頷き、


「『護国の神樹』のこの状態に、何か関与しているかもしれぬ。――捕らえるぞ」


 ビリッ


 心の芯に響くような声で命じる。


 姉妹は頷き、


 ドッ


(わっ?)


 3頭の竜が再び走り出した。


 その時、また草木の声がした気がする


 その声は、



 ――危ないよ。



 ――逃げて。



 ――あれは、人じゃないよ。



 ――きっと、みんな、殺されちゃうよ。



 と、聞こえた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 ドドドッ


 3頭の竜が丘を駆け下る。


 やがて、灰色の木々の間を抜けると、巨大な幹の根本、先程と同じ場所にフードの人物がいるのを発見した。


 ズザァッ


 地面を抉り、竜たちは停止する。


 同時に、



「――そなた、何者か! そこを動くな!」



 赤毛の女冒険者が吠えた。


(……っ)


 凄い声量。


 僕は、反射的に硬直してしまう。


 だけど、フードの人物は驚いた様子もなく、ゆっくりと振り返った。


 ユラッ


 まるで、幽鬼のような動き。


 やはり、顔はフードで隠れている。


 また極端な猫背で、実際の体格や性別も判然としなかった。


(不気味……)


 その印象が1番強い。


 僕らは、竜を降りる。


 ガシャッ


 レオナックさんが戦斧を抜く。


 紫髪の美少女も、左右の腰から短剣を抜く。


 その姉も槍を手に、


「シーナはここに」


「あ、うん」


 待機を命じられ、僕は頷く。


 そして、クレティーナさんも長い髪をなびかせながら、他2人と共に前に進む。


 フードの人物は、動かない。


 赤毛の美女が詰問する。


「何をしていた?」


「…………」


「ここは王国管理の聖域、そして、そなたが触れておったのは『護国の神樹』じゃ。国法に触れる不審者として、その身柄、拘束させてもらうぞ」


 ヒュッ


 戦斧の刃が、人物の喉元に向く。


 けど、やはり返事はない。


 代わりに、


 ニィ……ッ


 見える口元に、怪しい笑みが浮かんだ。


 同時に、草木が叫ぶ。



 ――来るよ。



 ――逃げて。



 ――アイツがやって来るよ。



(アイツ?)


 僕は困惑し、


 ギギッ


 上方から、異様な音がした。


 僕らは上を見る。


 巨大な灰色の幹を抉り、大樹の中から真っ黒な生き物が出てきた。


(は……?)


 何だ、あれ?


 巨大な虫……いや、竜?


 バッ


 黒い竜は幹から跳び、落下する。


 ズズゥン


(うわっ!?)


 僕らの目の前、フードの人物の真横に着地したのは、体長15メートルはある4本足の黒い竜だった。


 黒光りする鱗。


 頭頂部に生えた鋭く長い角。


 四肢の先にある鋭い曲爪。


 無数の牙を剥き出し、血のように真っ赤な眼球が僕らを睥睨する。


 シュウウ……


 その全身から、黒い靄が噴く。


(う、わぁ……)


 僕、茫然。


 パルシュナも目を瞠り、クレティーナさんは厳しい表情だ。


 そして、


「ほう、竜種を使役しておるのか」


 と、レオナックさん。


 フードの人物は答えず、ただ笑うのみ。


 代わりに、


 ズン


 漆黒の竜が1歩、前に出る。


 感じる強烈な殺意。



 ――明らかな敵対行動で、それは使役するフードの人物からの言葉なき返答でもある。



 赤毛の美女が、


「戦闘用意!」


 と、叫ぶ。


 反射的に、仲間2人も武器を構え直す。


 3人のリーダー、王国最強の冒険者の1人は、目の前の謎の人物と黒い竜を見据え、高らかに告げる。



「ただ今より、この竜種を狩り殺し、その者を捕縛する。――ティナ、パル、行くぞ!」



 同時に、


 ドン


 大地を蹴り、彼女は赤毛をなびかせ、黒竜へと先陣を切って挑みかかった。

ご覧頂き、ありがとうございました。


次回は明日更新です。

1日1話更新となりますので、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
序盤からいきなり強敵出現・・・ぶっちゃけ、勝てる未来が見えない・・・
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