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神樹の少年シーナ ~転生したら、頭に葉っぱが生えたんだけど?~  作者: 月ノ宮マクラ


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079・オーガストの丘の古き神殿

すみません!

本日、健診などのゴタゴタで更新が遅くなってしまいました(汗)。

誠に申し訳ありません。


では、本日の更新、第79話になります。

よろしくお願いします。

(ふぁ……)


 ふと目が覚めた。


 隣には、大好きな人の顔があり、


「あら、起きましたか」


「あ……クレティーナさん」


「ふふ、おはようございます。よく眠っていたようですね、顔色が良くなりました」


 と、笑う。


(そ、そう?)


 少し照れる。


 聞けば、2時間ぐらい眠っていたらしい。


(2時間も……)


「ごめんね、重かったでしょ?」


「いいえ」


 彼女は首を振る。


「シーナの重さと体温が心地好くて、ずっと背負っていたいぐらいでしたよ」


「…………」


 えへへ、愛を感じるよ。


 でも、申し訳ないので、ここからは僕も自分の足で歩くことにする。


 彼女は残念そうだけど、


(僕も男だし。……それに、その妹のジト~と見てくる視線も痛いしね~)


 チラッ


 見れば、少女は肩を竦める。


 はいはい。


 と、地面に降り、歩き出す。


 ちなみに2時間歩いても景色は変わらず、僕らは今も谷底の岩の大地を歩いていた。


 レオナックさん曰く、


「目的の古き神殿までは、あと4~5時間ほどかの」


 とのこと。


 意外と遠いんだね。


 道中、僕が遺跡で遭遇したダンゴ虫みたいな魔物の虫や、巨大な羽虫の魔物も現れたけれど、護衛の将軍さんや騎士隊の皆さんが簡単に倒してくれた。


(う~ん、安全)


 聖女のシャルさんも、


「楽でいいわ~」


 と、笑っていた。


 ……それでいいのか、聖女様?


 ともあれ、僕らの出番もなく、安全な道のりを進む。


 やがて、


(お……階段だ)


 岩の崖に掘られた、人工的な階段を見つけた。


 かなり昔に作られた物らしく、手すりはなく、風雨に晒されて段の角も丸くなり、全員、慎重に登っていく。


 崖の高さも、100メートル近い。


 その高低差の分、階段もかなり長く、角度もきつい。


(ふぅ、ふぅ)


 標高の高さもあり、酸素が薄く、息も乱れる。


 ちなみに、


「フィーンレイド王国の最初期、古き寺院が建てられた頃に作られた巡礼者のための道の1つだそうで、200年以上、昔の階段だそうですよ」


「へぇ~?」


「4日前、シーナを探しに行く時も、ここを通ったんです」


「そうなの?」


「はい。……だから、帰りは必ずシーナも一緒に(・・・・・・・)ここを通るのだと強く思っていました」


「あ……」


「…………」


「…………」


 僕らは見つめ合い、


 キュッ


 お互いの手を握る。


(本当に心配かけちゃったんだね、僕……)


 少し震える彼女の指に、それを感じる。


 と、その時、


 ゲシッ


(わっ?)


「こんな狭い場所で止まんな、馬鹿シーナ」


 と、僕のお尻を蹴った少女が言う。


 お、おお、落ちるだろ!?


(せっかくクレティーナさんと再会したのに、また『さよなら』する所だったじゃないか~っ)


 涙目で睨む。


 でも、彼女は気にせず、


「ほら、さっさと行け」


 ゲシゲシ


 ちょちょ……やめてっ。


(行くから~)


 本当、容赦ないね、この子。


 だけど、目を丸くしていたクレティーナさんは、すぐに柔らかく笑う。


「ふふっ」


「?」


「そうですね、パルも心配していましたものね」


(……え?)


 僕は驚き、


「は~?」


 と、妹は呆れたように姉を見る。


「心配なんてしてないわよ。私はただ、本当、面倒をかける奴だなって思ってただけよ。もう、姉上、変な勘繰り、止めてよね?」


「ふふ、はいはい」


「…………。ふんっ」


 と、そっぽを向く。


 僕は唖然。


 思わず、赤毛の美女を見ちゃう。


 彼女は苦笑し、


「ま、野暮は言わんよ」


 と、おっしゃる。


(…………)


 複雑な気持ちになる僕だけど、


 ゲシッ


「だから、止まんな」


「っ……わ、わかったよぅ」


「ふん」


 もう、本当、乱暴なんだから、このツンデレ少女は。


 年下の僕らのやり取りに、年上の美女2人だけでなく、周囲にいた騎士さんたちやシャルさんも笑っている。


 は、恥ずかしいなぁ。


 …………。


 …………。


 …………。


 やがて、1時間ほどで階段を登り切る。


 辿り着いたのは、岩山の中腹に造られた山道だった。


 多分、僕が滑落する前の山道を、そのまま進んだ先にある道なのだと思う。


 幅は、馬車1台分とちょっと。


 ちなみにここは、現代のオーガストの丘にある古き神殿へと通じる巡礼の正規道なのだと、教会関係者のシャルさんに教えてもらった。


(へ~?)


 と思いながら、歩く。


 更に、3時間ほどの移動。


 道中、魔物もなく、枢機卿・大司教派の新しい刺客も現れなかった。


(ま、さすがにね?)


 僕は初だけど、クレティーナさんたちは3度目の通行であり、当然、事情を聞いた古き神殿に待つ教会の人たちも周辺に怪しい奴らがいないか探索し、安全の確保に努めてくれていただろう。


 つまり、安全度は高い。


 もちろん油断はしないけど、


(でも、ここから襲われる可能性は、相当、低いんだろうな)


 と思う。


 更に歩いていくと、


「あ……」


 遠い東の山々の稜線が赤く輝き、その空の闇が少しだけ薄くなった。


 夜明けだ。


 ああ……5日ぶりの太陽。


 その輝きが待ち遠しく、青い瞳を細めてしまう。


 と、その時、


(ん?)


 道の先、渓谷にかかった大きな石橋の向こうの遠い丘の上に、人工的な黒いシルエットが浮かびあがった。


 思わず、足が止まる。


 今度は、蹴られない。


 太陽の光が差し込み、闇が払われる。


(あ……)


 古めかしく、けれど、威厳を感じる壮麗な神殿が荒野の丘に建っていた。


 石の尖塔が、陽光に鈍く輝く。


 見つめる僕に、隣の美女が微笑む。


 その唇が動き、



「――はい、シーナ。あれが今回の目的地、王国最古といわれる神殿……オーガストの丘に建つ『古き神殿』です」



 ◇◇◇◇◇◇◇



(あれが……)


 フィーンレイド王国で1番最初に造られた神殿。


 古き神殿のある丘は、道から地続きの場所ではなく、途中に大きな大地の裂け目があり、その先の縦長の岩柱の上に建っている感じだ。


 裂け目の空間には、長い石造りの連絡橋が架けられている。


(……凄いや)


 200年前の人たち、どうやってあの橋を架けたんだろう?


 下まで、100メートル以上ある。


 こんな重機もない世界なのに……まさか、人力? それとも、やっぱり魔法の力かな?


 なんか、浪漫を感じる。 


 僕らは、その橋を渡っていく。


 見た目から年月は感じるけど、大きく頑丈で、全然揺らぐ気配もない。


 やがて、神殿の前へ。


(へ~?)


 石造りの尖塔が何本も建った大型の神殿だ。


 入り口の前には、大きな女神像が建っている――ただ、手入れはされているみたいだけど、あちこち風化して石の翼とか一部、欠けている。


 あと、両手で1つの苗木を持っていた。


 聖女曰く、


「神話にある、大地に『神樹の幼木』を植える女神の姿やな」


 とのこと。


 ほ~、これが将来、あの巨木になるのか。


 いや、神話だし、比喩表現なのかな?


 と、パルシュナが、


「要は、あの苗木は『神樹の若木』であるアンタのお仲間ってことね」


「…………」


 た、確かに?


(そっかぁ)


 そう言われると、何だか像の苗木にちょっと親近感が湧いてしまう。


 うん、単純な僕だった。


 やがて、神殿の中へ。


 格式ありそうな神殿内には、元からこの古き神殿に勤めていた人たちや、今回のため教皇様と一緒に外から来たお付きや護衛の人など、大勢の神官さんがいらっしゃった。


 ザワッ


 まず聖女様を見つけ、全員が頭を下げる。


 金髪の幼女は、軽く手を上げ、


「楽にし」


 と、言う。


 見た目は幼女だけど、やはり偉い立場にいるらしい。


 そして、皆の視線が今度は、騎士隊や3人の冒険者などに守られる位置にいる子供……つまり、僕へと集まった。


 おお……。


(視線の圧が強い)


 期待、信仰、疑念、興味……色々な感情が伝わる。


 なんか、落ち着かない。


 と、その時、太陽が山の陰から登り切ったのか、神殿の窓から朝の光が差し込んだ。


 あ、いい光。


 5日ぶりの太陽に、



(――光合成したいな)



 と、素直に思ってしまう。


 そして、思った瞬間、疲労していた肉体が本能的に反応したのか、


 ニョキッ


 金色の髪の中から2枚の『葉っぱ』が生えた。


(あ)


 と気づいた時には、


 パァアアッ


 2枚の葉っぱは光輝き、光合成を開始する。


 その場にいた全員が驚き、その表情を照らしながら、葉っぱが生成する『聖気』は僕の体内の疲労やポーションで治し切れなかった負傷を癒してくれる。


 き、気持ちいい~!


 僕、青い目を細め、うっとり。


 両腕も、少し広げてしまう。


 すると、


 ザザザッ


 神殿にいた神官の皆さん、同行していた補佐の神官さんたち、将軍さんと騎士隊の皆さん、全員がその場に跪いた。


 太った神殿騎士さんも、聖女を肩に乗せたまま膝をついている。


(へ……?)


 な、何事?


 僕は驚き、目を丸くする。


 立っているのは、仲間の3人のみ。


 3人も驚きの表情で、


「……その無駄に神々しいのやめなさいよ、馬鹿シーナ」


 と、少女が呆れる。


(そ、そんなこと言われても……)


 僕、普通にしてただけだよ?


 ふと見ると、神殿騎士の大きな肩に座るシャルさんも目を見開いていて、やがて、納得したように頷いた。


「こら、本物やな」


「…………」


 今まで偽者だと?


 ショックな僕だけど、彼女は嬉しそうに笑う。


「ああ、マレナも喜ぶわ。――ほい、みんな! 本物の『神樹の若木』様のお通りや。すぐ教皇様と会えるよう準備し、若木様たちを案内しぃや」


 パンパン


 と、小さな手を叩く。


 その合図で全員、弾かれたように動き出した。


 …………。


 やがて、15分後、僕は今回の旅の目的である教皇マレナ・クインタールと会うことができたのである。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 教皇様がいらっしゃったのは、長い廊下の先の個室だった。


(へぇ……)


 天井が高く、台座に燭台と小振りな女神像が鎮座し、壁には歴代の神殿長らしい肖像画が10枚ほど飾られている。


 そして、部屋の執務机の横に、1人の妙齢の女の人が立っている。


 入室した僕らを見つめ、


「ようこそ」


 と、微笑んだ。


 落ち着いた声と表情。


 多分、60代ぐらいの年齢かな?


 綺麗な白髪を後ろでまとめ、聖職者らしい縦長の帽子を被っている。


 聖女のシャルさんが、


「教皇のマレナや」


 と、短く紹介。


(ああ、うん、やっぱり)


 納得しつつ、僕らは頭を下げる。


 室内にいるのは、僕と3人の女冒険者、聖女、将軍さん、そして教皇様の7人のみだ。


 促され、応接用のソファーに座る。


 …………。


 空気が静かだ。


 重い訳ではなく、むしろ、落ち着いた雰囲気で、だからこそ、口を開き難いような……そんな感じ。


 ジッ


 教皇様と目が合う。


(……薄い緑色をしてる)


 綺麗な目だ。


 だけど、深い……そんな印象がある。


 と、その視線が上の方へ、つまり、僕の頭に生えた2枚の『葉っぱ』へと向けられた。


 パアッ


 室内なので、少し弱い光。


 でも、ジッと見つめられる。


 やがて、


「そうですか」


「え?」


「王国や冒険者ギルドからの報告を聞き、きっと間違いないだろうと思っていました。そして、この目で見て、確かにわかりました」


「…………」


 えと……?


 僕は困惑する。


 でも、シャルさんが、


「せやな」


「ええ」


「じゃ、認定で」


「ふふ……貴方は本当に軽く言いますね」


 と、教皇様は苦笑する。


 幼女みたいな聖女は「重く言ってもしゃーないやろ?」と答える。


 そんな聖女に、教皇様は1度、嘆息する。


 顔を上げ、姿勢を正す。



「――フィーンレイド教皇マレナ・クインタールの名において、この者シーナを教会の認めた『神樹の若木』と定めましょう。証人は、教会の聖女、冒険者ギルドの金印、王国の将軍の3名です」



 と、宣言した。


(あ……)


 僕は驚き、3人の証人は頷いた。


 クレティーナさんは瞳を伏せ、パルシュナはなぜか唇を尖らせる。


 我に返り、


「あの、そんな簡単にいいの?」


 と、聞いてしまう。


 教皇様は微笑み、


「はい。最初からそのつもりでしたし」


「ええ……?」


「それに、その頭の葉を見せられたら、何かを試したりする必要もないでしょう?」


「…………」


「何より、皆さんがこの地に来た時点で、わたくしたち教会側に認定を拒否することはできない情勢なのですよ」


「情勢?」


 意味がわからない。


 と、隣のクレティーナさんが僕の耳元に言う。


「認めねば、フィーンレイド王国内で大規模な混乱が起きます。王国と冒険者ギルドとも敵対し、教会との火種は長く歴史に刻まれるでしょう。教会としても、それは本意ではないのです」


「…………」


 そ、そうなの?


(つまり、認定は既定路線だったのか)


 僕は少し茫然。


 証人の1人、ダレイオス将軍も頷き、


「王国としても、その判断を尊重し、敬意を払おう」


「ええ」


 白髪の教皇様も頷く。


 そして、彼女は赤毛の美女を見る。


「この絵図を描いたのは、冒険者ギルド第3支部のお嬢さんかしら?」


(!)


 僕は、ドキッとする。


 お嬢さんって、ケーシャンさんのことだよね。


(み、見抜かれてる)


 僕もレオナックさんを見る。


 ギルド所属の金印冒険者は何も答えず、ただ笑う――明言しないという、それがもう答えだろう。


 聖女のシャルさんが言う。


「前に会ったことあるけど、あん人、頭良さそうやったもんな」


「ええ」


「けど、今回は足りんもんもある。……ま、その部分に関しては、情報が足りないんやし、しゃーないんやけど」


「そうね」


 と、苦笑する教皇マレナさん。


(足りんもの?)


 僕は首をかしげ、レオナックさんたちも怪訝そうな表情だ。


 教皇様は、息を吐く。


 途端、雰囲気が変わり、室内の空気が静かに張り詰める。


 僕らも身を正す。


 そして、教皇様は僕らを見回し、



「――足りないのは、人間の枠組みの外にいる存在……つまり、『青き魔人』に関する知識と備えです」

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― 新着の感想 ―
取り敢えずパルシュナ。手を出すのは止めような・・・ 『青き魔人』というワードが出た事から魔族と確定しましたね。次回は魔人に関する情報を、分かっている範囲で提供する感じかな?
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