060・王都帰還と2通の手紙
(――はっ?)
目が覚めた。
ガバッ
慌てて身体を起こすと、窓の外、東の海面に太陽が見える。
夜明け直後の朝だ。
そして、室内の照明は灯っていて、僕の大事な3人の仲間はすでに起床し、着替えも済ませ、出発の荷造りを始めている所だった。
みんな、早起きだ……。
3人も、僕に気づく。
「おはようじゃ、シーナ」
「あら、1人で起きれたの? あとで蹴り起こしてやろうと思ってたのに」
と、2人は笑う。
そして、
「――おはようございます、シーナ。昨夜はよく眠れましたか?」
もう1人、緑色の髪の美女も柔らかく微笑む。
綺麗な笑顔。
ドキン
心臓が跳ねる。
「あ、う……お、おはよう、クレティーナさん」
何とか返事をする。
僕の挨拶に、彼女は嬉しそうに笑みを深くし、頷いてくれる。
でも、いつも通りで。
え……? あれ……?
(昨日のキスは、夢?)
僕、困惑。
いや、でも、確かに記憶はあるし、感触も覚えてる。
だけど、目の前の彼女は、特に僕を意識した様子もなく、むしろ戸惑う僕に不思議そうに小首をかしげたりする。
サラッ
その動きで、綺麗な髪が美しく揺れる。
思わず、見惚れ、
ゲシッ
(アイタっ!?)
突然、パルシュナに背中を蹴られた。
「ちょっと!? 姉上だけじゃなく、私らへも挨拶は!?」
「え?」
あ……。
「ご、ごめん。おはよう、パルシュナ、レオナックさん」
慌てて、言う。
赤毛の美女は苦笑し、
「うむ」
「ふんっ! 何よ、ついでみたいに」
少女は腕組みして、膨れている。
と、少女の姉は、
「ふふっ、シーナに挨拶されないのは寂しいですものね」
その白い手で、妹の髪を撫でる。
妹は「は……?」と口を開き、
ボッ
すぐに顔を真っ赤にした。
「ち、違うわよ! 私はただ、この馬鹿チビに礼儀を教えたかっただけで……!」
「はいはい」
「ちょっ、聞いて、姉上!?」
「ふふ、大丈夫、わかってますよ、パル」
笑顔の姉に、妹は泣きそうである。
え、え~と?
僕は、レオナックさんを見る。
彼女は苦笑し、軽く肩を竦めてみせた。
(あ、うん)
ただの姉妹のじゃれ合いらしいので、僕も静観することにしよう。
赤毛の美女は、
「今の内に、シーナも着替え、準備をしておけ」
「うん、そうする」
と、僕もベッドから降りる。
先に顔を洗ったり、うがいしたりしたかったので洗面所へ向かおうと、仲良し姉妹の横を通る。
その時、
チラッ
(あ……)
クレティーナさんと目が合った。
一瞬だけ。
でも、その紫水晶の瞳は甘く潤み、どこか大人の色気を感じさせた。
ドクン
心臓が跳ねる。
それは、昨夜の彼女の視線と同じで。
(……う、あ)
思い出した僕は、思わず、赤面してしまう。
すると、
クスッ
一瞬、彼女が甘く笑う。
そして、また妹と向き合い、姉妹のじゃれ合いに戻っていく。
…………。
やっぱり、夢じゃないかも。
足を止めず、1人で洗面所へ向かいながら、僕の胸には嬉しさと戸惑いと恥ずかしさと、そして、今後への期待が溢れてくる。
(うへへ)
つい頬がにやける。
あんな美人のお姉さんが恋人とかぁ……?
やばい。
やば~い。
洗面所から戻っても、僕は変に浮かれたままで、パルシュナ、レオナックさんには怪訝な顔をされてしまう。
でも、クレティーナさんはいつも通りで。
不自然なぐらい、いつも通りで。
(うん!)
僕も元気に出立準備を終える。
やがて、朝食を食べ、宿屋を出発する。
帰還の『転移の門』の予約は、昨日の内に、今日1番の開門で済ませてあった。
そして、時間となり、
「開門!」
管理の王国兵さんが告げ、他大勢の人と共に僕らは門を潜る。
(んっ)
転移が終わり、空気と気温が変わる。
視界には大都会の景色と、大通りの向こうに象徴的な天空城が浮かんで見えた。
約3日間の旅。
命懸けの討伐クエストを終え、僕らは無事、王都フィーンドリアへの帰還を果たしたんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
「――あ、おかえりなさい!」
冒険者ギルドに着くと、担当であるイリオナさんと再会した。
ブンブン
丸い尻尾が元気に踊る。
僕らも「ただいま」と笑顔で挨拶し、そのままクエスト完了手続きを頼むと、彼女は周りの目が気にならない3階の個室へと案内してくれた。
(うん、ありがたい)
金印のレオナックさん、人気者だもんね。
それに、
「今回の討伐対象に、事前情報になかった魔物が含まれていての」
「え?」
報告に驚く、イリオナさん。
実は……と、例の赤い魔物の件を伝える。
彼女は目を見開き、
「ええっ!? 人喰赤鬼がいたの!?」
と、驚愕する。
僕らは全員で頷く。
イリオナさんはすぐ依頼書を読み直し、でも、やはり、その記載がないことを確認する。
青褪めた顔で、
「ごめんなさい!」
と、結んだ亜麻色の髪を跳ねさせ、深く頭を下げた。
でも、ギルドや彼女のせいではない。
今回の依頼者の『王国遺構研究所』の人たちも多分、個体数は確認していても、その体毛の違いまでは把握してなかったのだろう。
無理もない。
研究者は非戦闘員だ。
調査中、突然、恐ろしい魔物に襲われ、仲間が7人も犠牲になっている。
その混乱した状況で個体の差など認識できるはずもなく、むしろ、3体という情報を覚えていただけでも凄いことなのだ。
つまり、
(今回の件は、不幸な事故、かな)
と、僕は思う。
誰も悪くない。
ただ、運が悪かっただけ。
3人もそう考えているらしく、担当の獣人さんを責める様子はなかった。
むしろ、
「気にするな」
「でも……」
「ただ、最近、魔物も増加傾向にある。今後、似たようなケースはあるかもしれぬ。そのことを他の冒険者にも、ギルドから伝えて欲しくての」
「…………。うん、わかった」
金印の美女の言葉に、イリオナさんも頷く。
1度、息を吐く。
少し考え、
「でも、赤鬼か……本来、もっと北の魔物だよね?」
「うむ、そうじゃな」
「だけど、今回、ソイツは大きく南下していた。何でだろう? 北の生息域で何かあったのかな?」
何か……?
僕は聞く。
「何かって、何?」
「わからないけど……例えば、他のもっと強い魔物がやって来て、逃げて来た……とか?」
「ええ……」
「意外とあるんだよ。生息域の玉つきによる変化って」
「そうなの?」
3人の仲間を見る。
「まぁの」
「滅多にはありませんが、はい」
「あるけど、でも、それだと『人喰赤鬼』より強い魔物が王国の北に入ってきたってことでしょ? はぁ~、やだわぁ」
「…………」
少女の嘆きに、僕も同感。
もし本当なら、
(いつか、金印のレオナックさんに討伐依頼、出るんじゃないの?)
あの人喰赤鬼より強い魔物の。
当然、僕らも一緒に行く訳で……。
(……やだぁ)
シーナ君は、若干、遠い目だよ。
と、イリオナさんは気を取り直したように言う。
「でも、凄いよね」
「む?」
「想定外の魔物がいても、ちゃんと討伐して生還するんだもん。さすが、金印レオナック・オルンだよ!」
ギュッ
と、両手を握り、力説する。
その緑色の目はキラキラと輝き、尊敬の眼差しだった。
でも、赤毛の美女は苦笑する。
首を左右に振り、
「いや、むしろ、今回、我は2度も失態を犯しての」
「え?」
「全員、無事に帰れたのは、そこのシーナがその尻拭いをしてくれたからに他ならぬ」
「え、シーナ君?」
と、2人で僕を見る。
(え、僕?)
僕も驚く。
姉妹も僕を見て、姉の方が頷き、
「確かに。シーナがいなければ、私は溺死か、あるいは魔物に殺されていたでしょう」
「…………」
「これで私は、3度もシーナに命を救われました。この3度の大恩を返すためにも、私は残りの人生の全てをこの子のために捧げなければなりませんね」
と、熱く言う。
瞳も潤み、表情は甘く微笑みを湛えている。
ええと、
(冗談……だよね?)
嬉しいけど、重い。
いや、嬉しいけども……!
イリオナさんは冗談と思ったのか、「あはは」と笑う。
でも、付き合いの長いレオナックさんは驚き、少し困ったような顔になる。
一方で、
「あ、姉上……?」
と、妹は愕然。
僕と姉を交互に見て、
キッ
なぜか最後は僕を睨む。
う、う~ん?
(クレティーナさんって清楚系美人と思ったけど、意外と一途で情熱的な人なのね)
と、少し意外に思ったり。
でも、
(悪い気はしないんだけど)
だって、僕も男だし。
彼女、素敵な美人のお姉さんだし。
そんな魅力的なお姉さんは、今も僕を熱く見つめながら、甘やかに微笑み続けていた。
…………。
…………。
…………。
と、色々ありながらも、やがて、手続きも終わり、僕らは報酬をギルド口座に振り込んでもらう。
1人当たり、2万5000リド。
クエスト内容の手違い分で、追加5000リド。
計3万リド。
(約300万円……!)
凄ぉい。
さすが、金印のクエスト、報酬額も段違いだ。
3人は平然としてるけど、僕は、通帳を見ながら青い目を丸くしてしまう。
その様子に、
「ふふっ、可愛いですね」
「うむ、初々しいの」
「はっ、小市民ねぇ」
と、年上2人は微笑ましそうで、同い年の少女は呆れ顔である。
イリオナさんは、
「ふふ、よかったね」
と、笑い、僕も「うん」と頷く。
彼女はしばらく、通帳を眺める僕を眺め、
「あ……そうだ!」
(ん?)
何かを思い出した様子の彼女に、僕ら4人の視線が集まる。
彼女は、リーダーの美女を向き、
「レオナックさん」
「む?」
「ギルド長のケーシャン様から『レオナックさんが帰ったら、すぐ自分の所に顔を出すように』って伝言されてたの。『例の手紙の件』だって言ってたよ」
「ほう……? そうか」
手紙。
(つまり、将軍さんのか)
僕と姉妹は顔を見合わせる。
レオナックさんは、そんな僕らを見る。
(うん)
僕らも頷く。
彼女も頷き返してくる。
担当の獣人さんを見て、
「わかった。すぐに会いに行くとしよう」
と、返答する。
そして、僕らは4人は、5階のギルド長室を訪れるため、全員で席を立ったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇
「――いらっしゃい、よく来てくれたわね」
5階のギルド長室に入ると、ギルド長のケーシャン・オーリアさんがわざわざ立ち上がって、僕らを迎えてくれた。
レオナックさんは頷き、僕と姉妹は会釈する。
相変わらず、真っ白な部屋だ。
案内してくれた秘書さんが全員分の紅茶を用意して、退室する。
僕は早速、紅茶を一口。
ゴクッ
(ん、美味し~)
香ばしさと砂糖の甘さが絶妙である。
秘書さん、お茶淹れるの、上手だね。
表情も緩んじゃう。
(……ん?)
ふと気づけば、全員がそんな僕を見ていた。
な、何よ?
彼女たちは苦笑し、同い年の少女だけはため息をつく。
小声で、
「アンタ、本当、良い度胸してるわ……」
ええ……?
意味がわからない。
ただ、紅茶を飲んだだけなのに……。
年上の美女たちは優しく笑い、それからケーシャンさんが言う。
「4人とも、ごめんなさいね。クエストから帰ったばかりで疲れているでしょうに」
「構わぬ」
「はい。問題ありません」
気遣うギルド長に、2人は答える。
そして、
「それより、話を聞こう」
と、レオナックさん。
直属の上司を見つめるその金色の瞳は、とても真剣だった。
僕らも頷く。
美人のギルド長さんも穏やかに微笑み、頷き返してくる。
「そう。じゃあ、早速、本題ね」
「うむ」
「出発前のレオナックちゃんの返答通り、将軍には『是』として答えたわ。そして、また面会の日取りを求める手紙が届いたの」
「ほう? もうか」
「ええ、もうよ」
頷き合い、
「よっぽど、シーナ君に会いたいみたい」
と、彼女たちは僕を見る。
(…………)
そうなんだ?
昨夜、マリンディアで話を聞いていたけれど、王国の人たちも色々焦っているのかな?
でも、
(僕、ただ頭に『葉っぱ』が生えてるだけなんだけどなぁ)
自覚的にはそう。
周りは違うってのは、理屈的にはわかるけど、でも、正直、実感ないんだよね。
赤毛の美女は、
「日取りは?」
「明後日。一応、変更可能と伝えられているけれど……」
「相手はフィーン王家じゃろう?」
「ええ、無理ね」
ケーシャンさんは、苦笑する。
そして、彼女たちは僕を見る。
(ん? あ……)
気づき、
「明後日だね? 僕は大丈夫だよ」
と、答えた。
特に予定もないし。
レオナックさんも頷き、
「そうか」
「うん」
「まぁ、ダレイオス将軍も国王陛下も悪いお人柄ではない。素直に会って良いじゃろう」
「ん、わかった」
彼女のお墨付きなら、僕も安心だ。
姉妹の姉も微笑み、僕のことを労うように僕の金色の髪を撫でてくれる。
(えへへ)
気持ちいいね。
1人を除き、皆が微笑ましそうに僕を眺める。
そして、
「でもね」
と、ギルド長のお姉さん。
(ん?)
彼女は少し困ったように頬に手を当て、もう一方の手で1枚の封書を取り出した。
僕らの前のテーブルに置く。
これは?
僕は首をかしげ、
「ぬ……」
レオナックさんが、小さく呻く。
(え、何?)
すると、姉妹の姉が言う。
「この封蝋……奉樹の神聖教会のシンボルですね。もしや、教会からも接触を求める手紙が?」
「ええ、そうなの」
と、認めるケーシャンさん。
ええっ?
(噂の教会からも……!?)
僕、唖然。
「危なかったわ」
「え?」
「将軍さんの手紙が先に届いたの。だから、フィーン王家と先に会える。もし逆だったら、王国の後ろ盾のないまま、シーナ君は教会の人と会わなければならなかったわ」
「…………」
「もしそうなら、教会と冒険者ギルド間の対立も起きたかも……」
ゴクッ
僕は、唾を飲む。
彼女の表情は、笑っている。
でも、
(目が笑ってないよ~)
めっちゃ怖いです。
レオナックさんが、
「差出人は? 教会の誰じゃ」
「フィーンレイド教会所属の枢機卿と大司教の連名ね。ただ、面会場所は指定され、王都の外の別都市の神殿とされているわ」
「ふむ、王家の介入を嫌ったか」
「でしょうね」
「返答は?」
「まだしてないわ。保留中。シーナ君、クエストで不在にしてるからって」
「そうか」
「でも、こっちも断れないの」
「で、あろうの。じゃが、現状、先にフィーン王家と話をつけられる。その後、教会と話せるのは不幸中の幸いじゃ」
「ええ、そうね」
と、話し合う2人が僕を見る。
あ、うん。
「大丈夫、そっちとも会うよ」
僕は答えた。
美女2人は、少し申し訳なさそうに、
「すまぬな」
「ごめんなさいね、シーナ君。交渉して、無理のない日程にはしてみせるから」
と、謝ってくる。
僕は、首を横に振る。
「ううん。――むしろ、僕のために色々ありがとう」
ペコッ
そして、頭を下げる。
ケーシャンさん、レオナックさんは驚いた表情を見せ、お互い困ったように笑う。
「本当、いい子ね」
「で、あるの」
と、頷き、
「じゃからこそ、何かしら下手に言質を取られぬか、心配でもあるが」
と、続ける赤毛のお姉さん。
僕の隣に座るクレティーナさんも、生真面目な表情で大きく頷く。
(ええ……?)
僕、そんなに甘くないぞ?
すると、姉妹の妹の方も、
「アンタ、世間知らずで馬鹿だからねぇ」
「…………」
き、君まで。
何だい、みんなして……僕、拗ねちゃうぞ?
不満そうに頬を膨らませる僕に気づき、彼女たちは何だか楽しそうに笑った。
やがて、
「とりあえず、2日後、フィーン王家との面会ね。場所は天空城、時間は朝の9時にダレイオス将軍の屋敷に集合し、その後、馬車で向かう予定だそうよ」
と、ケーシャンさんがまとめる。
(あ、うん)
僕らは頷く。
「教会の方は後日、交渉結果を伝えるわ。対応は、そのあと考えましょう」
「うん、わかった」
「ふふ、じゃあ、今日の私からの話はおしまい」
「あ……うん」
「4人ともお疲れ様。今日、明日は、ゆっくり休んでね」
「うん、そうするね」
僕は頷き、3人も同じように答える。
で、席を立つ。
母性的な微笑みで、ギルド長のお姉さんが見送ってくれる。
4人で部屋の外へ。
ギィィ……バタン
扉が重く閉まり、僕らは廊下を歩きだす。
歩きながら、
(しかし、国王様との面会かぁ)
前世の記憶はないけど、多分、小市民だった気がするし、一国の統治者と会うなんて、何だか転生して偉く出世した気分だよ。
正直、不安も大きいけど……。
知らず、失礼なことしたらどうしよう?
不敬罪、牢屋行き?
(や、やだな~)
と、嫌な想像をしてしまう。
すると、僕の表情に気づいたのか、
「大丈夫ですよ」
と、クレティーナさん。
(え?)
彼女は微笑み、
「私も同席します。国王だろうと枢機卿だろうと関係なく、もし何かあれば、私がシーナを守りますから。だから、安心してください」
そう言って、僕を見つめる。
笑っているけれど、真剣な眼差しだ。
瞳の奥に、深い覚悟が見える。
(…………)
なんか、僕のために命まで懸けてくれそうな雰囲気を感じる。
すると、
「我も同席するぞ」
「……え」
「保護者の1人であり、師匠でもあるからの。またリーダーとして、そなた1人で会わせはせぬ」
と、頼もしく笑う。
(レオナックさんまで……)
なんか、僕、感動。
2人の美女を見返し、そして、もう1人の少女を見る。
目が合い、
「私は行きたくないわ」
「…………」
「本当、厄病神よね。はぁ~、面倒事に巻き込んで欲しくないわぁ」
ぼやき、両手を頭の後ろで組む。
……ああ、うん。
その言い方。
つまり、行きたくないし、巻き込んで欲しくもないけど……でも、行ってくれるし、巻き込まれてもくれるらしい。
(本当、わかり辛い子)
でも、心根は底抜けに優しいんだ。
全く……もう。
ゴシゴシ
目元に滲む汗を、僕は腕で拭う。
そんな僕の様子に、3人は顔を見合わせ、そして、2人が優しく笑い、1人は唇を尖らせる。
ポンポン
赤髪の美女の手が、僕の頭を軽く叩く。
(……うん)
やがて、僕らは冒険者ギルドの白い塔をあとにし、塔の前でレオナックさんと別れ、そして、僕は姉妹と一緒に『姉妹の家』への帰路に着いたんだ。




