005・クレティーナ・レヴィン
「あ、あの~」
緊張しながら近づき、僕は声をかけた。
女さんが振り返る。
(わ……)
凄い美人さん。
年齢は、20歳ぐらいかな?
東洋と西洋のハーフみたいな端正な顔立ちで、紫水晶みたいな色の切れ長の瞳をしている。
背も高く、大人っぽい。
緑色の髪は長く、太ももまで届く。
でも、白い槍と鎧で武装しているから、とても凛々しい印象。
(あ、日本刀のイメージだ)
美しさと緊張感、両方がある感じ。
ドキドキ
しばし、見惚れてしまう。
すると、
「…………」
ガシャッ
女さんは、槍を構えた。
――僕に。
(……へ?)
慌てて、万歳。
な、何々?
僕、悪い人間じゃないよ?
今、助けたじゃん!
(うわ~ん)
驚きで涙目になってしまう。
硬直していると、
「…………。いえ、私を助けてくれましたものね。きっと、悪い存在ではないのでしょう」
と、槍を下げる。
(???)
戸惑いつつ、僕は安堵。
女さんは、
「驚かせて、ごめんなさい」
「あ……」
「それから、槍を投げてくれてありがとう。本当に助かりました」
「う、ううん」
僕は、首を振る。
やった。
異世界人と、初コミュニケーション!
最初は少し警戒されたけど、うん、どうやら友好的な会話ができそうだ。
(よかった~)
と、僕は笑う。
でも、今の会話、日本語じゃなかった気がするぞ?
だけど、意味はわかる。
そして、僕も普通に喋れてしまった。
(う~ん、不思議)
これも、転生チートかな?
でも、ありがたいや。
そんな僕を、美人な女さんは見つめる。
そして、
「私は、王都フィーンドリアで活動する銀印冒険者のクレティーナ・レヴィンと言います」
と、名乗った。
(おお、冒険者)
異世界の代表職だ!
僕は、青い目をキラキラ輝かせる。
そんな僕に、女さん――クレティーナさんも微笑む。
そして、
「もしよろしければ、貴方の名前も教えてもらえますか?」
と、優しく問われた。
あ、うん。
僕は、答えようとして……あ?
(名前、ないや)
前世の名前も覚えてない。
え、ええっと……。
僕は必死に考え、
「……あ、あの、シーナ……だよ」
と、小声で答える。
由来は『名無し』。
ななし、なーし、しーな、シーナ、である。
(あはは……)
若干、遠い目。
名付けセンス、なくてごめんね。
彼女は、紫の瞳を瞬く。
「シーナ?」
「う、うん」
「もしかして、シーナは女の子ですか?」
「え、男だよ?」
確かに、見た目わかり辛いけど。
(ぶ~!)
怒るシーナ君。
クレティーナさんは苦笑し、
「失礼しました。シーナが、あまりに可愛いので」
「……むぅ」
「ふふっ、ごめんなさい」
と、謝る。
(……もういいよ)
名付けセンスない僕が悪いんだ……。
僕、達観の境地。
すると、
「ところで、シーナ?」
「ん?」
「1つ質問なのですが、貴方のような子供が、なぜ、このような森に1人でいるのですか?」
「え……?」
僕は、彼女を見る。
クレティーナさんも、僕を見ている。
ジッ
視線の圧。
(ええっと……)
「わからないんだ」
「わからない?」
「気づいたら、この森にいて、歩き回ってたら槍を見つけて、音がする方に行ったら、クレティーナさんがいた」
「…………」
「でも、それ以前の記憶は、何も覚えてなくて」
「記憶喪失……ですか?」
「うん、多分」
僕は、頷く。
(さすがに、転生とは言えないしね)
だけど、嘘もばれそう。
なので、話せる範囲で正直に話して、あとは記憶喪失でお茶を濁したんだけど……どう?
彼女は、少し驚いた顔をしている。
それから、無言で考え込む。
(…………)
ドキドキ
なんか、判決を待つ気分。
やがて、
「そうですか。それは大変でしたね」
と、彼女は頷いた。
よ、よし、
(勝訴!)
内心、僕は深く安堵する。
と、
「では、シーナ。もう1つ質問を」
(ん?)
彼女は続ける。
その白い指が、僕の頭の上を指し、
「頭から生えているその葉っぱは何ですか?」
(あ……)
し、しまった、隠すの、忘れてたぁ!
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次回は明日更新です。
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