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神樹の少年シーナ ~転生したら、頭に葉っぱが生えたんだけど?~  作者: 月ノ宮マクラ


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32/42

032・追跡

(ん……)


 周囲は木々の世界だ。


 転生した時の森と比べ、木々の背は低く、普通な感じがする。


 でも、何だろう?


(なんか……落ち着く)


 頭に『葉っぱ』が生えてるからかな?


 周囲の植物たちも、不思議と自分を歓迎してくれているように感じられたんだ。


 トッ トッ


 3頭の狗竜は、ゆっくり森を進む。


 やがて、


「ふむ。ここが目撃された場所か」


 と、竜が止まった。


 周囲を見るけれど、土と草と木々があるだけの場所――魔物の姿は現在なかった。


 全員、狗竜の鞍を降りる。


(よっ)


 僕も、地面に着地。


 パルシュナが言う。


「さすがにいないか。……探索しないと駄目ね」


「ですね」


 姉も頷く。


 そして、僕を見る。


「シーナ」


「ん?」


「ここから小鬼を探します」


「あ、うん」


「ですが森は広いので、闇雲に探しても見つかりません。なので、まず痕跡を探します」


「痕跡?」


「はい」


 頷き、彼女は地面にしゃがむ。


(?)


 何かを探すように、ゆっくりと視線を巡らせ、


「ありました」


(え?)


 彼女は立ち上がると、槍の石突部分で地面を示した。


 土に、小さな窪みがある。


「足跡です」


「えっ?」


 これがっ!?


 僕は唖然。


 だって、ほんの少し地面が凹んでいるだけ。


 幅だって、数センチ。


(こんなの、普通、気づかないよ)


 でも、レオナックさんもパルシュナも「ふむ、そうじゃな」「見つかったわね」と納得した顔をしている。


 ええ~……。


 呆ける僕に、


「冒険者は、狩人でもあります」


「…………」


「魔物の痕跡を見つけ、追い、魔物を発見し、狩る。――そうした技術、知識も必要になりますよ」


「……うん」


 僕は頷き、彼女を見る


「わかった」


 と、もう1度、言った。


 クレティーナさんも微笑む。


 そして、


「足跡は続いています。どちらに進んだか、わかりますか?」


 と、聞かれた。


(ええっと……)


 僕も地面を見る。


 土の上には、無数の凹凸がある。


 どれが足跡か、判然としない。


 ただ、足跡と似たような窪みが、ある程度、等間隔に茂みに続いている……ように思う。


 僕は指差し、


「あっち?」


「正解です」


 クレティーナ先生は微笑んだ。


(ほっ)


 僕、安堵。


 彼女の槍の石突が、今度は茂みの草を示す。


「見てください。ここ、枝が折れているでしょう?」


「あ、うん」


「小鬼が通った跡です」


「へ~?」


「魔物を追う時は、地面だけでなく、周辺の草木の状態も確認しましょう。色々情報が残されていますから」


「うん」


 僕は頷く。


 と、レオナックさんが、


「見つからぬ時は、まず水場を探すとよい」


「水場?」


「川、池、湖。魔物も生き物じゃから、生きるために水分を必要とする。水場の周辺では、高確率で痕跡が見つかろう」


「はぁ~、そっか」


 勉強になるね。


(さすが、先輩)


 僕は、2人の冒険者を尊敬の眼差しで見てしまう。


 と、同い年の少女も、


「追う時には、風向きにも注意するのよ」


「風向き?」


「なるべく、風下から追うの。じゃないと、匂いで魔物に気づかれることも多いから」


「え、そうなの?」


「そうなの。奴らの鼻は、人間より敏感よ」


「……そっか」


「下手すると、待ち伏せされて奇襲を受けるわ。で、負傷して、クエスト失敗する赤印冒険者、いっぱいいるのよ」


「そうなんだね。うん、注意するよ」


 僕は頷いた。


 彼女は肩を竦め、


「は~、素人の面倒見るのは大変ね~」


 とか言う。


(……の、割には、結構、得意げに見えるよ?)


 内心、苦笑し、


「ごめんね。でも、パルシュナがいて頼もしいよ」


 と、伝える。


 彼女は、


「…………。そ、そう?」


 と、一瞬だけ嬉しそうな顔をした。


 気づいたのか、年上の美女2人は少女の後ろで声を出さずに苦笑している。


 彼女は、


「ま、仕方ないわね!」


 と、ツ~ンとそっぽを向く。


 う~ん、


(本当、ツンデレだな~)


 と思いつつ、「うん、よろしくね」とお願いした。


 そして、少女の姉が、


「では、痕跡も発見しましたし、シーナを先頭に追跡を開始しましょうか」


 と、言い出す。


(あ、僕、先頭?)


 驚き、そして、思い出す。


 確か、僕がどこまでやれるか知りたい、とか言っていたっけ。


 つまり、


(今回のクエストは、ある種の試験でもあるのか)


 今更、理解する。


 3人の視線が集まる。


 僕は、深呼吸。


「わかった。でも、今、誰もいないし、葉っぱも出していい?」


 と、確認する。


 姉妹は、リーダーの美女を見る。


 彼女は頷く。


「よかろう。それもシーナの能力じゃ」


 と、許可してくれた。


(よかった)


 僕は安堵し、


「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて――」


 と、頭に意識を向ける。


 ニョキ


 金色の髪の中から、2枚の葉っぱがYの字のように生えてきた。


 ん……。


 太陽の光を感じる。


 キラキラ


 無意識に光合成が始まり、自然と葉が光る。


 3人の視線を感じる。


「ふむ……」


「本当、変な葉っぱね」


 と、2人が呟き、


「ですが、とても綺麗です。まるで天使の輪のようで……」


 と、1人が言う。


(…………)


 少し照れ臭いな。


 僕は、誤魔化すように笑い、


「じゃ、行くね」


 と、宣言すると、彼女たちの先頭に立ちながら、草の茂みの方に向かった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 3頭の狗竜はその場に残し、僕らは森の中を進んだ。


 狗竜は頭がいい。


 主人の指示があれば待機し、笛を吹けば戻るよう訓練されているとか。


(凄いね)


 感心し、安心して森を歩く。


 歩きながら、


(やっぱり、『葉っぱ』は凄いなぁ)


 とも感じる。


 足が軽い。


 目がよく見える。


 全身の感覚が鋭敏になった感じ。


 おかげで、さっきまでわかり辛かった足跡などの痕跡も、はっきり認識できている。


(ここは……うん、こっちだね)


 迷いなく進む。


 後ろの3人も、少し驚いた表情だ。


「覚えが早いですね」


「ふむ。もう少し迷うかと思うたが……」


「さ、最初だけでしょ」


 と、声がする。


 しばらく進むと、痕跡が消えた。


 足跡も、踏まれた草も、折れた枝もなくなってしまう。


(えっと……)


 どうしよう?


 困っていると、


「ここを起点に、範囲を広げて、また周囲の痕跡を探しましょう」


 と、美人先生の教え。


 僕は頷き、探す。


 すると、



 ――こっちだよ。



(え?)


 声を感じた。


 人ではない、草木の声だ。



 ――もっと先。


 ――葉の冠の王様、もっと右を向いて。


 ――足跡、あるよ。



 3人を振り返る。


 でも、やはり聞こえてない感じ。


「?」


 と、僕を見る。


 僕は再び前を向き、草木の声に従ってしばらく進んでいく。



 ――そこ、足元。



(あ……)


 茂った草の陰に、足跡があった。


 痕跡だ。


(やっぱり、チートだね)


 僕は笑う。


 周囲の草木も喜んでいる気がする。


 3人を振り返り、


「あったよ」


 と、言った。


 彼女たちは、顔を見合わせる。


「この短時間で、よくわかりましたね?」


「ふむ、迷いなく見つけたようじゃが……どうやった?」


 と、聞かれる。


 僕は素直に、


「周りの草木が教えてくれた」


 と、笑う。


 そして、周囲の植物の声が聞こえることも説明する。


 3人は驚き、


「ずるぅ~」


 と、パルシュナが唇を尖らせた。


 美女2人は、


「凄いですね」


「ふむ、それも葉の能力か」


 と、感心してくれる。


(本当、便利だよね)


 チートがなかったら、痕跡探しももっと時間がかかってただろうな。


 僕は笑い、


「じゃ、行くよ?」


「はい」


「うむ」


「ちぇ……もっと苦戦しなさいよ」


 最後の少女の言葉に、彼女以外の全員が苦笑してしまう。


(ごめんね)


 そして、僕らは再び痕跡を追い、森を進んだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 探索は順調だ。


 痕跡は、時々、消えてしまう。


 でも、草木の声もあり、再発見は容易かった。


 風も、


(うん、風下だ)


 幸い、運も味方してくれているみたい。


 だけど、途中で気づく。


(あれ……?)


 僕は足を止め、周囲を見回す。


 後ろに続いていた3人も足を止め、僕の様子を見守る。



 ――うん、間違いない。



 僕は確信する。


「シーナ?」


 クレティーナさんが僕を呼ぶ。


 でも、表情には試すような気配があった。


 僕は言う。


「足跡が増えた」


「…………」


「最初は1匹だった。でも、ここから多分、3~5匹になってる。きっと、そっちの茂みから合流したと思う」


「……ふふ、正解です」


 彼女は笑った。


(やっぱり、わかってたんだ)


 僕が気づくか、見守ってたんだね。


 彼女の後ろでは、レオナックさんが「うむ」と頷き、パルシュナが「ちぇ~」とつまらなそうに両手を頭の後ろで組んでいる。


 クレティーナ先生は頷き、


「ええ、その通りです」


「…………」


「目撃情報にあった通り、小鬼は群れで活動します。今回の規模は、推定20~30の群れでしょう」


「30……」


「見てください」


 トン


 槍の石突が、地面を示す。


「小鬼が合流し、一方に歩いています。つまり――」


「つまり?」


 彼女は僕を見る。


 一拍置き、



「――この先に、巣があるのでしょう」



(!)


 魔物の巣。


 ドキッとした。


 人間を襲う危険な生物、それが30匹も集まる場所がこの先に……。


 ゴクッ


 少し緊張してきたよ。


 彼女は言う。


「追跡は正しかった――ということです」


「う、うん」


「本番はここから」


「…………」


「このまま巣を見つけ、小鬼を全て駆除しましょう。それが、今回のクエストの1番の目的です」


「うん」


 僕も頷いた。


 そうだ、それが目的だ。


(よし、やるぞ)


 気合を入れ直す。


 そんな僕に、クレティーナ先生は微笑む。


 後ろの美女と美少女も、何も言わずに僕のことを見守ってくれている。


 そして、追跡を再開する。


 慎重に。


 周囲の気配にも気を配りながら、森を行く。


 …………。


 …………。


 …………。


 やがて15分後、美人先生の予想通り、僕らは『小鬼ゴブリンの巣』を発見した。

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― 新着の感想 ―
前半の探索シーンを読んでいると「前作に出た真眼が本当にチートだったんだな」って思ったけど、今作の場合は「草木の声が聴ける」という条件アリとはいえ中々の能力をお持ちなようで・・・それでも知識が無ければゴ…
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