003・発見した槍
(綺麗な森だな~)
見える木々の緑は瑞々しく、知らない草花も咲いている。
遠くからは、小鳥の声。
頭上の葉の隙間からは、木漏れ日が柔らかく降り注ぐ。
(あ、リスだ)
可愛い。
でも、鳥みたいな翼が生えてる。
遠い木々の向こう側には、4~5頭ほどの鹿が地面の草を食んでいた。
(角、水晶みたい)
青白く透明で、淡く光ってる。
その1頭が、僕に気づく。
ピィッ
小さく鳴くと角が赤くなり、みんなでピョンピョン跳ねながら、茂みの奥に逃げてしまった。
(う~ん、異世界)
地球とは、やはり違う。
でも、だから楽しい。
それに、テレビの画面やパソコンのモニター越しじゃなく、現実として大自然の景色がここにある。
植物の匂い。
肌と髪を撫でる風の柔らかさ。
土の地面の固さ。
(うん、いいね)
森の涼しい空気を、胸いっぱいに吸う。
青い空を見て、
「こんな景色の中でなら、僕はきっと永遠に歩いていけちゃうね」
と、笑った。
◇◇◇◇◇◇◇
ごめんなさい、僕は嘘つきです。
永遠に歩けるとか言ったけど、全然、無理でした……。
あれから、約2時間、
「ハヒ、ハヒ……」
僕、もうヘトヘトです。
全身、汗だく。
転生して子供になったからかな?
体力ないみたい……。
あるいは、まだ新しい身体に慣れていないから、効率的な動かし方がわかっていないのかも?
どちらにしても、限界で、
「き、休憩しよ」
言い訳のように呟き、僕は小川近くの石に座る。
暑ぅ……。
僕は靴紐を解き、靴をポイポイと脱ぐ。
そして、白い素足を小川の水に浸けた。
(うひょっ)
冷たい。
でも、気持ちいい。
そして、とても美味しい。
…………。
…………。
…………。
え……美味しい?
自分の感覚に驚き、ポカンとなった。
澄んだ水の流れに、僕の素足が入っている――そこから確かに『美味しい』という感覚が伝わってくるのだ。
何だこれ?
しかも、
(空腹も満たされる感じがする)
まるで、食事みたい。
そっか。
これも、転生チート。
(僕、葉っぱ生えてるし、水だけで生きていける気がする)
便利な身体になったね。
水面を見れば、
パアアッ
頭の葉っぱも光っている。
しっかり、光合成中。
気づけば、疲労感も減っていき、なるほど、『光合成』には自己修復機能もあるのかもしれない。
(うん、多少の怪我も平気そう)
なんか、安心する。
よし、しっかり充電しとこう。
約20分ほど、水の食事と光合成を楽しみ、それから僕は再び森の中を歩き出した。
◇◇◇◇◇◇◇
タッ タッ
軽やかな足取りで、森を進む。
光合成したことで力に満ちた僕の足は、たった1歩で2~3メートルの距離を移動できてしまう。
道を遮る巨大な倒木も、
ピョン
ほら、簡単に飛び越えた。
そびえる崖だって、ヒョイヒョイと登れてしまう。
(うはは、楽しい)
光合成スキル、最高です。
疲れたら、小川の水を足で食べながら光合成して回復する――それを繰り返した。
あれから1時間。
僕は黙々と、森の中を移動した。
…………。
でも、人里は見えてこない。
いや、この森、相当広くないかな……?
そんなことを思いながら、3度目の休憩を小川でしようとした時だった。
(ん……?)
森の奥、小さな丘の辺りに、たくさんの倒木がある。
何だろう?
タッ トッ
地面の起伏を2歩で跳び、
「え?」
3歩目で着地した僕は、驚いた。
ここら一帯の木々が薙ぎ倒され、地面はあちこち抉れ、大きな岩が削れていた。
(竜巻でもあった?)
そんな状況だ。
うわ~……と思いながら、現場を歩く。
と、その時、
(ん?)
進路上の地面に、何やら『細長い物』が刺さっているのが見えた。
近づき、わかる。
「……槍だ」
真っ白な槍。
穂先と柄の間に、翼の装飾がある。
(へ~?)
結構、高そう。
美術品みたいだけど、実用品だったらしい細かい傷や汚れがある。
グッ
握り、抜く。
お、意外と重いや。
光合成してなかったら、持つのも大変だったかも。
でも、
(何で、こんな所に槍があるんだろう?)
僕は、首をかしげた。
ユラユラ
頭の2枚の葉っぱも揺れる。
と、その時だ。
ズズゥン
(!)
荒れ果てた森の奥から、大きな木が倒れるような音が聞こえた。
遠い空に、土煙が舞う。
(何か、いる?)
僕は、青い目を丸くする。
1度、破壊された周囲の森を見回す。
「…………。うん」
頷くと、
タン
その音の聞こえた方角へ、僕は跳ぶように走り出した。
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