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神樹の少年シーナ ~転生したら、頭に葉っぱが生えたんだけど?~  作者: 月ノ宮マクラ


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028・姉妹の家へ

 話は終わり、僕らは退室することにする。


 4人で席を立つ。


 対面のギルド長のお姉さんも立ち上がり、


「レオナックちゃん。シーナ君のこと、よろしくね」


「うむ」


 声をかけられ、レオナックさんは頷く。


 ギルド長さんは微笑む。


「今日から7日間、休みを与えます」


「む?」


「『護国の神樹』が枯死した以上、王国と教会は犯人の調査や捜索、神樹の状態確認などで多くの人員を割くでしょう。先遣の騎士隊が壊滅してるし、それこそ威信にかけてね」


「ふむ、じゃろうな」


「でも、加護が消えた以上、国中の魔物も増える」


「…………」


「きっと、各地からギルドに依頼が殺到するわ」


「……じゃの」


「ふふ、休み明けから忙しくなるから、その分、しっかり休養してね?」


 と、片目を閉じる。


 豊かな赤い髪を重そうに揺らし、レオナックさんは天を仰いだ。


 深いため息。


「わかった」


 と、一言。


 ギルド長のお姉さんも頷く。


「じゃあ、お話はここまで。今日はお疲れ様、シーナ君、クレティーナちゃん、パルシュナちゃん」


「うん」


「失礼いたします、ケーシャン様」


「……失礼します」


 僕らも軽く頭を下げる。


 扉を開き、レオナックさんを先頭にギルド長室をあとにした。


 …………。


 …………。


 …………。


 白い塔の1階まで戻ってきた。


 周囲では、冒険者やギルド職員が忙しそうに動き回っている。


(ん……)


 空気が戻った。


 何となく、日常の雑多な気配。


 パルシュナも緊張していたのか、「ふぅ~」と息を吐いている。


 うんうん、気持ちわかるよ。


 と、リーダーの美女が、


「ティナ」


「はい」


「あとは任せてよいか?」


「え?」


「我はこのあと、王国軍務局に出向き、ダレイオス将軍と面会してくる」


「将軍に?」


 クレティーナさんは少々驚く。


 僕も驚いた。


(将軍って、軍の偉い人だよね? 多分、1、2を争うぐらいの)


 そういう人と面会?


 凄ぉい。


 そっか……王国最強の『金印の冒険者』って、国の将軍と面会できるぐらい権力あるんだ?


 その美女は言う。


「直接、伝えたくての」


「何をです?」


「ギルドから報告書は行くじゃろう。じゃが、先遣の騎士隊の最期の状態をこの目で見たのは、我じゃからの。我の口から伝えておきたいのじゃ」


「…………」


「弔意を示すのもある」


「はい」


「それとシーナ関連で今後、味方となってもらうための根回しもしておきたくての」


「シーナ関連、ですか」


「うむ」


 驚く僕らに、レオナックさんは頷く。


 僕を見て、


「神樹と同じ力を操る少年じゃ。理由の清濁を問わず、周りは絶対に放っておかぬ」


 と、断言する。


 姉妹も僕を見る。


(…………)


 思わず、頭の上を押さえる。


 もちろん、そこに生えていた『葉っぱ』はすでに隠してある。


 赤毛の美女は笑い、


「じゃから、根回しをしておく。ま、ケーシャンも色々動くであろうがの」


 ポンポン


 僕の手の上から、頭を軽く叩かれた。


 クレティーナさんも頷く。


「わかりました」


「うむ」


「では、私たちは自宅へと戻ります。こちらは、シーナの生活基盤を整えておきますね」


「そうか、頼むぞ」


「はい」


 年上の2人は頷き合う。


 ……なんか、お世話かけてるなぁ。


(ん?)


 気づけば、少女が僕を見ていた。


 ジト目で、


「当分、アンタと一緒に暮らすのね。ヤダわ~」


「…………」


 ひ、酷い。


 でも、パルシュナのそういう正直な所、ちょっと安心する。


 僕は苦笑し、


「ごめん。でも、よろしくね」


「へいへい」


 頭の後ろに両手を回し、彼女はぞんざいに答える。


 表面上、嫌がる。


 でも、受け入れてくれてる。


(ツンデレ~)


 僕、ほっこり。


 でも、ふと思う。


 3人を見る。


 気づき、見返す3人に、


「あの……僕の力の秘密とかわかったけど、みんな、実際の所、僕のこと、どう思ってるの?」


 と、聞いてみた。


 彼女たちは、少し驚いた表情を見せる。


 だってさ?


(全員、態度が変わらないんだもの)


 あまり自覚はないけど、護国の神樹と同じ『聖気』を操る子供って、多分、かなり異質な存在だと思うんだよ。


 気味が悪い、とか。


 距離を置きたい、とか。


(そういう風に思ったりしないのかな?)


 少し悲しいけど。


 でも、そんな疑問。


 3人の女冒険者は顔を見合わせる。


 そして、



「――特に何も」



 と、クレティーナさんが代表して答えた。


(……何も?)


 さすがに僕、唖然。


 レオナックさんが苦笑し、


「いや、何も思わぬ訳ではないがの」


「う、うん」


「ただ我らも冒険者として活動し、未知の魔物や未知の遺跡、未知の現象を目にすることもままある。ゆえに、そなたのことも、の」


「…………」


 そうなの?


 と、少女が腰に両手を当てる。


「馬鹿ね」


「え?」


「アンタが自分で言ったんでしょ、僕は僕ってさ」


「あ、うん」


「なら、それが全てよ。私らだって、今までと同じようにシーナをシーナとして扱うだけだわ」


「…………」


「ふんっ。本当、頭悪いんだから」


 と、鼻を鳴らす。


 僕は、青い目を瞬いてしまう。


 そして、少女の姉が優しく微笑む。


「正直、驚きはありました」


「…………」


「ですが、シーナが何者であろうと、私の大切な恩人である事実は変わりませんから」


 ナデナデ


 と、白い手で僕の金髪を撫でてくる。


(ん……)


 思わず、目を伏せてしまう。


 そっか。


 僕は、僕でいいのか。


 自分だけでなく、周りからもそう許されたことが何だか嬉しかった。


 僕は下を向いたまま、


「……ありがと」


 と、小さな声で呟いた。


 年上の2人は笑みを深くし、同い年の少女は「ふん」とそっぽを向く。


 やがて、僕らは塔を出る。


 ここで、レオナックさんとはお別れ。


「ではの」


「うん」


「ええ、またあとで」


「またね~」


 1人別行動となる赤髪の美女に見送られながら、僕と姉妹は一緒に通りを歩き出した。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 3人徒歩で、王都の通りを進む。


(あれ?)


「狗竜は乗らないの?」


 ふと気づき、僕は訊ねた。


 クレティーナさんは笑う。


「はい。個人宅で飼うのは大変なので、基本、狗竜はギルドで預かってもらっているんです。今は自宅に帰るので乗れませんね」


「ああ、そうなんだ?」


「はい。まぁ、購入したのは私たちなので、狗竜の所有権はあるのですが」


「ふ~ん?」


「自宅までは30分ほどなので、がんばって歩きましょう」


「うん」


 僕は頷いた。


 と、少女が言う。


「でも、帰り、買い物してくでしょ?」


「ああ、そうでしたね」


 姉は思い出したように頷く。


(買い物?)


 僕は、姉妹を見つめる。


 気づいて、


「家、空けてたから、備蓄の食材も空なのよ」


「あとは、シーナの生活用品ですね。来客用の備品はあるので日々の着替えだけ、用意しましょう」


 と、姉妹で教えてくれる。


(なるほど~)


 考えたら、今、僕は一張羅だ。


 転生した時の服しかない。


 クンクン


 気になり、匂いを嗅ぐ。


 臭くない……と思うけど。


 そんな僕に、


「大丈夫。シーナはお日様のいい匂いがしますよ」


「そ、そう?」


 クレティーナさんの言葉は、それはそれで恥ずかしい。


 妹は、肩を竦めた。


「別に2~3日着替えなくても、大して臭くならないわよ」


「…………」


 あ~、うん。


(貧民街出身の少女の言葉だけに、何とも実感がこもっている気がするね)


 ま、彼女なりのフォローだ。


 僕は「ありがと」と素直に感謝する。


 素直じゃない少女は、「ふん」とそっぽを向いた。


 …………。


 やがて、商店通りに辿り着く。


 先に服屋で、僕の着替えを3着ほど購入する。


 2着は普段用の服で、1着は寝間着用、あと下着も購入した。


 ちなみに、


「……女の子用の服、試着してみませんか?」


「案外、似合いそうよね」


 姉妹揃って変なことを言い出し、僕は断固拒否した。


(僕、男だよ?)


 全くもう……。


 早く大人になって、筋肉欲しいや。


 服屋を出ると、次は食材店に立ち寄る。


 前世のスーパーに近い感じ。


 でも、大型の肉が吊るされていたんだけど、その品名が『オーク肉』とか『ミノタウロス肉』とかだったりする。


(さすが、異世界だよ)


 姉妹は、数種の肉と野菜、あと米を購入。


 肉は、魔物由来の鶏肉と普通の牛肉らしい。


 あと、前世日本人としては、当たり前に白米が購入できる環境だったことに内心歓喜しちゃったよ。


 販売される食材も豊富だし、


(この王国で、食事に悩むことはなさそうかな?)


 と、思った。


 店を出ると、3人で荷物を分担する。


 意外と重くて、道中、葉っぱを出したくなったけど、我慢我慢……。


 そして、再び王都内を歩く。


 テクテク


 進路的に、僕らは北西方面に向かっている。


 王都の北にある湖から流れているのか、水路に架かった橋を何回か越え、やがて、坂道を登っていく。


 通りを歩く人の数が減る。


 やがて、高台にある閑静な住宅街に辿り着いた。


 振り返ると、


(わぁ……)


 王都の景色が一望できた。


 空を渡り、吹き抜ける風が気持ちいい。


 建つ家は皆、立派で、1軒1軒の敷地も広く、日本の狭い住宅地と違い開放感がある。


 眺めながら歩いていると、


 ピタッ


(わっ?)


 先を歩くお姉さんの足が止まった。


 思わず、緑色の綺麗な髪が流れる背中にぶつかりそうになった。


 その髪を揺らし、彼女が振り返る。


「ここですよ」


 と、1軒の家の前で微笑む。


(ここ?)


 周りと同じく立派な家だ。


 敷地も広く、門から玄関まで距離がある。


 緑の芝生の庭園も広がり、家自体の築年数もまだ新しいように感じる。


 何より、


「大邸宅……」


 である。


 驚く僕に、少女は「ふふん」と得意げに鼻を鳴らす。


 姉の方は苦笑し、


「普通ですよ」


「…………」


「さぁ、入りましょう。今日からここが、シーナの家ですよ」


 ポン


 優しく背中を叩かれる。


 姉妹と共に、家の玄関へと歩き出す。


(う、う~む)


 今更だけど、僕、本当にいい人に拾われたなぁ……と思うよ。

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― 新着の感想 ―
レオナックもレオナックで動いているねぇ・・・「弔意を示すのもある」というのは冒険者として活動していく中で、そういうのも見て来たし助けられた事も何度もあるから彼女なりの筋でもあり弔い・・・でもあるんだろ…
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