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神樹の少年シーナ ~転生したら、頭に葉っぱが生えたんだけど?~  作者: 月ノ宮マクラ


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024・シーナの冒険者登録

 登録手続きのため、クレティーナさんに導かれ、僕らは総合受付に向かう。


 と、歩いている途中、


「あれ、ティナさん?」


(ん?)


 不意に背後から、声がかかった。


 振り返ると、ギルド職員の制服を着たお姉さんが書類を片手に、たまたま通りがかった様子でそこに立っていた。


 ポニーテールにされた亜麻色の髪からは、


(あ、獣耳)


 が、生えていた。


 獣人さんだ。


 年齢は、17~18歳ぐらい?


 獣耳は三角形でピンとしており、スカートのお尻からも日本犬みたいに丸まった尻尾が生えていた。


 彼女は緑色の目を瞬く。


 そして、


「おかえりなさい、ティナさん! もう帰ってたんだね!」


 と、明るい笑顔を見せた。


 う、眩しい。


 太陽みたいな元気お姉さんって感じ。


 クレティーナさんも大人の微笑みで応じる。


「ええ。ただいま、イリオナ」


「うん!」


 彼女も頷き、


「あれ……その子は?」


 と、僕に気づく。


(あ、ども)


 ペコッ


 僕は「こんにちは」と頭を下げた。


 イリオナさんは目を丸くし、「可愛い~!」と感極まった顔をした。


「何々、この子? ティナさんの弟さん?」


「いいえ」


「だよね。弟さんがいるなんて、聞いたことないし……あ、親戚の子?」


「違います」


「そう。……あ、わかった。じゃあ、年下の恋人だ!」


「…………」


 クレティーナさんは目を瞠る。


 僕を見る。


 その白い頬が、ほんのり赤くなった。


(え?)


 僕は驚き、


「え、ティナさん?」


 と、獣人のお姉さんも驚いた表情だった。


 ハッとし、


「あ、いえ、違います。シーナは私の恩人で、今回のクエスト中に保護した少年です」


「へ、へ~?」


「…………」


「…………」


 何だか、妙な空気。


 コホン


 クレティーナさんは咳払いし、その空気を砕く。


「シーナ」


「あ、うん」


「この娘の名は、イリオナ・タリージア。3年前から私の担当をしているギルド職員です」


 と、紹介してくれる。


(へ~、担当さん?)


 僕も、彼女を見る。


 パタパタ


 尻尾を揺らし、ギルド職員のお姉さんは笑う。


「イリオナだよ」


「うん」


「君は、シーナ君って言うの? よろしくね」


「うん、よろしく、イリオナさん」


 僕も笑う。


 途端、「はわぁ」とか言い出す。


「ティナさん、ティナさん! この子の笑顔、本当に天使みたいなんだけど……っ!?」


「はい」


「うわぁ、可愛いねぇ~!」


「ですね」


 同意するクレティーナさん。


(ええと……)


 2人のお姉さんの反応に、僕は困惑である。


 と、緑髪のお姉さんの方が、何かを思い出した顔をする。


「ああ、そうですね。――イリオナ?」


「ん?」


「実は今、この子の『冒険者登録』をしようと思っていたのですが、貴方にお願いできますか?」


「え? あ、うん、もちろん」


 頷く獣人のギルド職員さん。


 彼女は僕を見る。


 僕も、


「お願いします」


 頭を下げた。


 イリオナさんも「うん」と笑った。


「じゃ、登録手続きしようか。書類の作成と簡単な講習、あと、魔法印の授与があるから、3階の個室でやろうね」


「あ、うん」


「わかりました」


「ん、じゃあ、こっちだよ」


 と、歩き出す。


 制服のお尻で揺れる尻尾を眺めながら、僕らも彼女のあとを追った。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 イリオナさんに案内され、階段を登る。


 目指すは、白い塔の3階だ。


 彼女曰く、


「この階は、冒険者や依頼人と個別の面談や相談をしたり、冒険者登録などができる防音室が30室、用意されてるんだよ」


 とのこと。


(へ~?)


 と、感心。


 ちなみに、4階はギルド職員の働く専用階で、5階はギルド長室や特別応接室、会議室などがあるらしい。


 じゃあ、レオナックさんは今、5階にいるのかな?


 やがて、3階に到着。


 廊下の左右に、いくつも扉が並んでいる。


 で、案内されたのは、6人用の個室。


 上質な木製の机と革張りのソファーがあり、室内には観葉植物も置いてある。


「さ、座って」


「うん」


 僕らはソファーに座り、イリオナさんは対面へ。


 彼女の手には、数枚の書類がある。


 それを目の前の机に並べ、


「登録用の個人情報を記入してね。あ、シーナ君は文字、読めるかな?」


「あ、えっと」


 と、書面を見る。


(ふむ……?)


 日本語ではない。


 前世の世界の文字とも違い、ただ英語の筆記体に近い文字だ。


 だけど、


(読めるね)


 意味もわかる。


 異世界言語の会話と同じで、不思議と異世界文字も理解できるみたい。


 多分、書ける気もする。


「うん、大丈夫」


「そっか。じゃ、よろしくね」


「うん」


 頷き、ペンを借りる。


 ペンは、万年筆っぽい。


(では……と)


 カリカリ


 名前、性別、年齢を書いていく。


 覗き込むイリオナさんが、


「あ、やっぱり男の子なんだ。万が一、もしかして、可能性として女の子かな~って思ってたけど……」


「…………」


 男ですよぉ。


 と、次の項目でペンが止まる。


「住所……」


「ん?」


「あの、僕、住んでる家とかないんだけど……」


「え、そうなの?」


「うん」


 ギルド職員のお姉さんも驚いた顔だ。


 と、僕の隣のお姉さんが、


「では、北西区涼風通り303のレヴィン宅にしてください」


「え?」


「私の家です。しばらくは私の家で暮らしてもらうつもりでしたし、15歳の成人までは私がシーナの後見人となる気でしたから」


「ええ?」


 僕、びっくり。


 イリオナさんは、


「同棲だ!」


「……同居と言いなさい」


「あはは、そうだね」


 ポニーテールの職員さんは頭をかき、笑う。


 クレティーナさんは嘆息だ。


 僕は聞く。


「いいの?」


「はい。シーナがいなければ、あの時、私の人生は終わっていました。ならば、今後の人生のいくらかを貴方のために捧げるのも良いでしょう?」


「…………」


「私は義理堅いのですよ」


 と、微笑む。


 事情を知らないイリオナさんは、キョトンとする。


 困惑気味に、


「ティナさん、何があったの?」


 と聞く。


 聞かれた美女は平然と、


「今回のクエストで、死にかけました」


「えっ!?」


「たまたま、その場にいたシーナの助けで命拾いをしました。ですが、この子は孤児だったので、自立するまで私が引き取ることにしたんです」


「孤児……そっかぁ」


 納得するイリオナさん。


 2人して、僕を見る。


(ええと……)


 視線がこそばゆい。


 年上の女の人たちは、どこか優しい表情をしている。


 職員のお姉さんは頷き、


「わかった。じゃあ、書類追加ね」


「え?」


「身寄りのない未成年は、税率も低くできるんだ。その申請書と、あとクレティーナさんにも保証人としての書類をお願いね」


 サッサッ


 と、紙が追加。


 クレティーナさんも「はい」と受け取る。


「あと、もしもの保険を……」


「パーティー申請するので、レオの保険の対象人数を追加してください。当面、同行させる予定なので」


「そうなの?」


「はい」


「じゃ、ギルドの口座から追加の金額、来月末に引き落としするね」


「伝えておきます」


 頷くクレティーナさん。


 イリオナさんも書類を用意しながら、


「でも……初心者を『金印』クエに同行か」


「目的は、冒険者の基礎を教えるためです。危険のないよう配慮はしますよ」


「うん、お願いね」


「ええ」


 2人の間で、どんどん話が進む。


(いいのかな?)


 だけど、流れに逆らうのも難しそうだし、助かるのも事実。


 素直に甘えるか。


 僕は、


「ありがとう、クレティーナさん」


 と、お礼を言う。


 彼女たちが僕を見る。


 20歳のお姉さんの方が優しく微笑み、


「いいえ」


 と、短く答えた。


 獣人のお姉さんは微笑ましそうにしている。


 やがて、彼女たちの助けを借りながら、全ての書類に記入を終える。


 その後、講習として、冒険者としての心構え、注意事項など、15分ほどの説明を受ける。


 武器携帯は許可されるけど、暴力禁止。


 魔法の悪用、厳禁。


 魔物災害などの非常時は、ギルド指示に従う義務あり。


 各種ルールに違反すると、罰金やランク降格、最悪、除籍、もしくは投獄。


 ルール守れば、基本、自由。


(ふむふむ)


 要は、犯罪しなきゃ大丈夫。


 前世日本人の倫理観があるなら、特に問題なさそうだった。


 で、講習も終わる。


 最後に、


「よいしょ」


 ゴトン


(お?)


 台座に置かれた水晶球みたいな物を、イリオナさんが机の上に置いた。


 目を丸くする僕に、


「じゃ、ここに右手を置いて」


「あ、うん」


 素直に従う。


 感触は、滑らかで冷たい。


 イリオナさんは、少し厳かに言う。


「今からシーナ君の右手に『冒険者印』を授けます」


「あ……」


「それは魔法の紋章です。冒険者ギルド所属の『冒険者』だと証明する印であり、国際的にもシーナ君の身分を保証、証明する唯一無二のものになるの」


「…………」


「覚悟はいい?」


 と、見つめられる。


 僕は目を閉じ、1度、深呼吸する。


 青い目を開き、


「うん、お願いします」


 と、イリオナさんの目を見返した。


 彼女は笑い、頷く。


「じゃ、行くよ」


 カチ


 台座のスイッチを押す。


 途端、水晶球が淡く光り出し、熱を持ち出した。


(……っ)


 結構、熱い。


 何度も針で刺されるような疼痛がある。


 と、同時に、


「あ……」


 ポワッ


 右手の甲に、赤い光が生まれた。



 ――魔法の紋章だ。



 思わず、魅入る。


 気づけば、水晶球の光は消えていた。


 だけど、右手の甲に生まれた紅い光の紋章だけは輝いたままだった。


(…………)


 僕の、僕だけの紋章。


 と、その時、


 パチパチパチ


 突然、聞こえた音にびっくりした。


 見れば、クレティーナさん、イリオナさんが僕を見ながら拍手している。


 驚く僕に、


「おめでとう、シーナ君」


「おめでとうございます。これで貴方も、私たちと同じ『冒険者』の1人ですね」


「あ……」


 2人の笑顔と言葉が、胸の奥深くに響く。


 数秒、味わい、


 グッ


 僕は右手を握り、唇を引き結ぶ。


「うん!」


 大きく頷く。


 握り締めた右手の甲で、出来立てほやほやの魔法の紋章は美しい赤い光の輝きを放っている。




 ――この日、僕、シーナは『赤印の冒険者』となった。

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― 新着の感想 ―
イリオナさんはショタ好き・・・と思いきや、単に女の子が好きなだけなのかな?
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