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神樹の少年シーナ ~転生したら、頭に葉っぱが生えたんだけど?~  作者: 月ノ宮マクラ


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23/42

023・冒険者ギルドの白き塔

 3頭の狗竜は広場を抜け、通りに出る。


(うわ、広ぉい)


 片側3車線の大通りだ。


 クォレンの街と違い、車道と歩道に分かれていて、中央分離帯には樹木が植えてある。


 馬車、竜車などの車両も多い。


 交差点では、交通整理の兵士が立っている。


 歩道側には、街灯も設置されている。


 ちなみに、全て石畳。


 通り沿いには商店が並び、遠方には巨大な神殿とその奥に綺麗な湖、そして、湖上の空中には……え?


「……お城が浮いてる」


 僕は唖然と呟いた。


 上半分は、美しい中世風の煌めくお城。


 でも、下半分は巨大な石造りの半球状で、3本の柱が生えており、柱の表面には光る文字が刻まれていた。


 驚く僕に、


「あれは、神聖フィーンレイド王城――通称、『天空城』ですよ」


 と、クレティーナさんが教えてくれる。


(天空城……)


 か、格好いい!


 僕は、青い瞳を輝かせてしまう。


 パルシュナは「あ~、田舎者ねぇ」と呆れたように言う。


 でも、気にもならない。


 歩道には、たくさんの人々が歩く。


 人間が多く、獣人、エルフなどの亜人種の割合が5割ぐらい。


 凄く雑多。


 僕は聞く。


「ここ、何人ぐらい住んでるの?」


「王都ですか? そうですね、確か、50万人ぐらいだったかと」


「50万!?」


「はい。都市全体は東西南が城壁で囲まれ、北は湖になります。天空城を中心に扇形に広がり、北部に貴族街や行政用の建物などが集中していますね」


「へぇ~?」


 思った以上の規模だ。


 少女も言う。


「南西側の城壁近くは、貧民街があるわ」


「え……」


「誘拐、人殺し、普通に毎日起きてるから、シーナは近づいちゃ駄目よ」


「あ、うん。わかった」


 僕は頷く。


 姉妹の出身地。


(だからこそ、怖さを知ってるんだろうね)


 語る表情は淡々と。


 でも、内心、色々あるんだろう。


 だけど、僕を案じてくれたことは嬉しくて、


「ありがと、パルシュナ」


「ふん。死なれたら、寝覚めが悪いだけよ」


 僕のお礼に、少女は嘯く。


(本当、素直じゃないな~)


 見ていた年上の2人は苦笑している。


 レオナックさんは言う。


「王都は広い。一生、都市から出ずに暮らす者もいるし、端から端まで移動するのに丸1日はかかる。迷子には気をつけるのじゃぞ」


「あ、うん」


 そんなに広いんだ?


 人口50万人だと、前世日本の政令指定都市ぐらいの規模。


(しかも、土地、広く使ってそうだしね)


 より広大なのかもしれない。


 と、その時、


(ん?)


 大通り沿いに、広場と巨大な門が見えた。


 え、あれ?


「転移の門?」


「え、ああ、そうですね。クォレンとは別の門です」


「へ~?」


「王都には7基の『転移の門』があり、各地と繋がっているんですよ。その内の1基は別の国にも通じていますね」


「そうなんだ?」


 7基もあるとは驚きだ。


 広場には、大勢の人と車両が集まっている。


(……うん)


 荷馬車も多く、王国の重要な物流の要なのかもしれない。


 赤髪の美女が言う。


「あの基幹部品は、古代の魔導機での」


「魔導機?」


「1500年前の魔法文明最盛期、古代オーパィル魔法王朝時代の遺物じゃ。現代では再現も修理もできぬ」


「へぇ……」


「100年前は、10基あった。じゃが、3基が壊れ、現在は7基のみ」


「…………」


「将来は、0になるかもの」


 と、少し遠い目で語る。


(そっか)


 古代の超技術。


 前世の世界でもできない技術を、この世界の1500年前の人は成していたんだね。


 でも、今はその技術も消えゆくのみ。


「……なんか寂しいね」


 僕は呟く。


 クレティーナさんは微笑み、


「そうですね」


 と、僕の髪を撫でる。


 その妹は、


「ま、研究は進めてるらしいから、もしかしたら、0になる前に再現できるかもしれないわよ?」


「そうなんだ?」


「そうよ。期待はしてないけど~」


 と、あっけらかんと言う。


(あはは……)


 でも、それぐらいの気楽さがいいのかもね。


 レオナックさんも苦笑する。


 彼女は前を向き、


「じゃが、そうした未来も無事に迎えられるかの」


「え?」


「フィーンレイド王国を守る『護国の神樹』が枯れた。各地の魔物は活発化し、数も増すじゃろう。それに、王国が耐え切れるかどうか……」


「あ……」


「隣国のように滅びねば良いがの」


「…………」


 黄金の瞳には憂いが滲む。

 

 姉妹も神妙な表情になる。


(彼女たちは国が滅んで、難民になったんだっけ)


 当時を思い出しているのかな?


 僕は少し考え、


「大丈夫だよ」


 と言った。


 3人が僕を見る。


「根拠はないけど、みんなで力を合わせれば、きっと何とかなる気がする」


「…………」


「…………」


「…………」


 彼女たちは、顔を見合わせる。


 やがて、


「ええ、そうですね」


「ふむ、未来は自分たちで切り開くもの、か。それも確かじゃの」


「はっ、楽観論者ね~」


 と、全員が笑う。


 僕も笑った。


 本当に、ただの勘だけど。


(でも、何となく大丈夫な気がするよ)


 理屈ではなく、自分の内側にある『何か』がそう教えてくれている感じ……?


 いや、よくわからないけどさ。


 そうして、僕らは王都の大通りを進む。


 やがて、約20分後、


「――着いたの」


 と、先頭のレオナックさんが狗竜の足を緩め、僕らは目的地の『冒険者ギルド』に到着した。



 ◇◇◇◇◇◇◇



(へ~、ここが?)


 目の前には、美しい白亜の塔があった。


 敷地も広い。


 緑の芝生に綺麗な池があり、散策路も整備されていて、まるで公園みたいな雰囲気で、奥にある白い塔は5階建てぐらいの高さだ。


 ……冒険者ギルド?


 思ってたのと、少し違う。


 こう荒々しく粗野なイメージだったけど、凄く爽やか。


 裏には、駐車場も完備されている。


 数十台の馬車、竜車などが停まっており、奥には獣舎もある。


 僕らも、そちらへ。


 トットッ


 軽やかな足取りで向かうと、獣舎から専門の係員らしい人が3人出てくる。


 狗竜が止まり、


(んしょ)


 全員、降竜する。


「お疲れ様でした。お預かりします」


「うむ」


 3人は手綱を預け、


「すまぬが、荷物もギルド内の運んでおいてくれるかの。重要な品なので慎重にの」


「はい、承知いたしました」


「頼む」


 チャリ


 赤毛のお姉さんは、3人の係員さんに硬貨を渡す。


(チップだ)


 係員さんたちは作業に入る。


 そして、


「よし、行くぞ」


「あ、うん」


「はい」


「は~い。あ~、やっと帰って来れたわ~」


 少女は伸びをする。


 豊かな赤髪をなびかせる美女を先頭に、僕ら4人は白亜の塔の方へと向かった。


 近づくとわかる。


(おっきいなぁ)


 遠目より高く、大きく感じる。


 外壁の白い石は磨き上げられ、とても美しい。


 入り口には守衛さんが2名いる。


 そして、武装した人たちが何人も、その出入口の解放された扉を行き来していた。


(全員、冒険者?)


 凄いや。


 見ていると、


「ここは、王都の冒険者ギルド第3支部になります」


「え?」


「通称、白塔支部。私とレオ、パルは、ここの所属になりますね」


「……支部があるの?」


 同じ王都内に?


 クレティーナさんは頷く。


「王都フィーンレイドには『冒険者』が推定1万人以上在籍していますから。各支部2000人ずつ、計5箇所に区分けされているんです」


「へぇ……」


「シーナも、ここで登録しましょうね」


「あ、うん」


 そっか。


(僕も、白塔所属の冒険者になるのか)


 そう思うと、特別に感じるね。


 やがて、僕ら4人も守衛さんの間を抜け、開いた扉から白い塔の中へ入っていく。


 途端、熱気が伝わった。


(わっ?)


 塔の内部は、3階部分まで天井の半分が吹き抜けになっていた。


 開放感が凄い。


 正面には、円形の総合受付。


 奥に、冒険者用、依頼者用と区分けされたカウンター受付が10ぐらいあり、依頼書の貼られた大型の掲示板もある。


 壁は一部ガラス張りで、美しい庭園が見える。


 手前には休憩用の椅子が並び、観葉植物も置いてある。


 左奥にもカウンターがあり、


(あっちは、素材鑑定所かな?)


 何人かの冒険者が、採取したらしい植物を提出している。


 右奥には、2階への階段もある。


 見える範囲、2階はレストランらしく、食事用のテーブルと椅子が並んでいた。


 3階は……下からじゃ、よく見えない。


 そして、全ての階に、冒険者らしい人々が集まり、その喋る声や足音、動きに合わせて金属装備が立てる音などが響いていた。


(おお……)


 なんか、エネルギーに満ちている。


 僕は、しばし呆然だ。


 と、その時、


「お? あれ、炎帝か?」


「あら、本当だわ」


「おう、霊槍と雷剣の姫姉妹たちも一緒だな!」


「おかえり!」


「お疲れ様です、レオ様!」


「今回のクエストは、どんなものだったんですか!?」


「お~い、炎帝様一行のご帰還だぞ~!」


 と、周囲の冒険者が騒ぎ出した。


(え、ええ?)


 あっという間に、武装した数十人の人たちが集まってくる。


 僕、唖然。


 でも、3人は慣れた様子で、レオナックさんは「ただいまじゃ」と片手を上げ、姉妹は澄ました表情で前だけを見つめ、3人とも足を止めずに歩いていく。


 焦りつつ、僕も一緒に移動。


 歩きながら、


(みんな、人気者だ)


 と、驚く。


 王都だけで、1万人。


 王国全土なら、多分、十数万人?


 そんな冒険者の頂点となる『金印』の称号を持つ3人の内の1人がいるパーティー――その意味は、僕が思うより、ずっと大きかったみたいだ。


 と、周りの視線が僕にも気づく。


「おい、あの子供は何だ?」


「さぁ?」


「もしかして、炎帝の隠し子!?」


「いや、親戚の子だろ?」


「ま、まさか、若い愛人とか……」


「嘘だろ!?」


(うん、嘘だよ)


 内心、僕は呆れる。


 赤毛のお姉さんも苦笑し、


「依頼中、保護した子供じゃ。怯えるから、皆、そう騒ぐでない」


 と、窘める。


「あ、ああ」


「すまん」


「ごめんなさいね、ボク」


 と、素直に謝られてしまった。


 僕も慌てて、


「あ、ううん、大丈夫」


 と、笑って応じた。


 途端、全員が驚いたように息を飲む。


「天使……?」


「男の子……だよな?」


「いや、わからん。だが、どちらでもいいような」


「そ、そうね」


 なんて、声がする。


(???)


 僕は、キョトンとしてしまう。


 代わりに、僕の隣にいた緑髪のお姉さんが鋭く冷たい視線を周囲に投げかけた。


 ササッ


 全員、視線を逸らす。


 妹は肩を竦め、赤毛の美女は苦笑する。


 一同に、


「今、帰還したばかりでの。出迎えはありがたいが、まずは先にクエスト報告をさせてくれ」


 と、告げる。


 同じ冒険者だ。


 仕事の重要さがわかるのか、全員が納得した表情で1歩引く。


 金印の美女は、


「すまぬの」


 と、笑い、その間を歩いていく。


 僕らも続く。


 歩きながら、


「驚いたでしょう。ごめんなさいね、シーナ」


 と、隣のお姉さんに謝られた。


 僕は笑う。


「うん、少し。でも、楽しかったよ。冒険者って元気な人たちが多いんだね」


「そうですね」


 彼女は苦笑。


 妹の方が、


「馬鹿も多いけどね~」


 と、小声で辛辣なことを言う。


(き、聞こえるぞ?)


 僕は心配してしまう。


 もしかして、他の冒険者相手で、何か嫌な思いをした経験でもあったのかね?


 やがて、受付に到着。


 冒険者用の受付だ。


 受付嬢さんは立ち上がり、丁寧に一礼する。


「おかえりなさいませ、レオナック様」


「うむ」


 鷹揚に応じる赤毛の美女。


 懐から依頼書を出し、


「クエストの完了手続きを頼む。報告用の証拠素材も運び込まれておるはずじゃ。それと、第3ギルド長ケーシャン・オーリアへの面会を頼む」


「面会ですか?」


「うむ、緊急の用件じゃ」


「承知しました。すぐに連絡し、手配いたします」


「頼む」


 受付嬢さんも頷き、後ろの職員に声をかける。


 と、レオナックさんが振り返り、


「ティナ」


「はい?」


「手続きと報告は我がしておく。その間、そなたはシーナの登録を手伝ってやってくれ」


(え?)


 僕は、目を丸くする。


 クレティーナさんも少し驚き、


「よろしいので?」


「構わん」


 彼女は頷く。


「報告は、我1人でも充分じゃ。それに、恐らくケーシャンとの話は時間がかかるじゃろう」


「なるほど……わかりました」


「うむ。そちらは任せたぞ」


「はい」


 頷く、クレティーナさん。


 僕も、


「ありがと、レオナックさん」


 と、お礼を言う。


 年上の美女は再び「構わん」と笑う。


 そして、彼女1人を残して、僕と姉妹は受付前を離れる。


 と、


「じゃ、私は2階で食事してるわ」


「え?」


「姉上いたら、充分でしょ?」


 少女は軽く言う。


 姉も頷き、


「わかりました、あとで合流しましょう」


「ええ。――じゃね!」


 と、パルシュナは階段の方に行ってしまう。


 う~ん、


(僕の登録に、興味なし、か)


 ま、そんなもんだよね。


 代わりに、美人の姉の方がギュッと僕の手を握る。


 優しい体温が伝わる。


 見上げる僕に、


「では、登録しましょうか」


「うん」


 微笑む彼女に、僕も頷く。


 異世界での自立の第1歩、そうだ、僕は『冒険者』になるのだ。


(よ~し!)


 登録するぞー。

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― 新着の感想 ―
護国の神樹に関して言えばシーナが鍵になりそうな予感・・・絶対シーナの転生に関わってそうだし。そしてマイペースなパルシュナ・・・空気読んだとかじゃなく、「面倒な手続きは姉に任せる」とかありそう。
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