表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神樹の少年シーナ ~転生したら、頭に葉っぱが生えたんだけど?~  作者: 月ノ宮マクラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/17

016・クォレンの街

(おお~、人がいっぱいだ)


 門の先は、大通りとなっていた。


 道の端には街路樹が並び、正面奥には神殿らしき建物も見える。


 左右にも家々が並ぶ。


 多分、商店かな?


 多くの人が出入りし、また通りをたくさんの人と車両が埋めている――凄い、本当に異世界の街だ。


 多くは、平民らしい格好。


 だけど、中には剣や鎧の騎士風の人や、杖とローブの魔法使いっぽい人も歩いてる。


(へ~、へ~、へ~)


 キョロキョロ


 僕の視線は忙しい。


 そんな僕に、クレティーナさんは優しい眼差しである。


 トットッ


 人波の中を、3頭の竜も行く。


 意外とぶつからない。


 視線も高いので、通りの先までよく見えるんだけど、


(葉っぱが生えてる人、いないね?)


 人間8割、エルフ、獣人、ドワーフなどが2割、でも、僕のように頭に葉っぱがある人は0人だった。


 むぅ……。


 やはり、異端なのか?


 人前で過ごす時は、隠しておいた方が良さそうだと判断する。


 ……少し寂しい。


 その時、


「なんか、お腹空いたわ~」


 と、パルシュナが言う。


 全員、彼女を見る。


「王都行く前に、先に食べてかない? 『転移の門』も予約の時間かかるしさ」


「ふむ」


「シーナもお腹が空きましたか?」


 え?


 不意に言われ、驚く。


 クレティーナさんはいつも、僕を気遣ってくれる。


(ええと……)


 答えに迷う。


 正直、少し空いてる。


 今日は携帯食だけだし、水を食べれたのも1回だけだから。


 でも、


(僕、文無しだよね)


 多分、また奢られてしまう。


 人として、それでいいのか……と思う。


 だから迷うんだけど、


 ギロッ


 紫の髪の少女が僕を睨んでいた。



『――〈空いた〉と言え!』



 声なき声の脅迫が聞こえる。


 ……あ、はい。


「ええと……少し空いたかも」


「では、食事にしましょう。――レオ、構いませんね?」


「……ティナ、おぬしな?」


「やったわ、賛成多数! 4人中3人が言ってるのよ、もう決まりね!」


 言い切る少女。


 姉妹の様子に、リーダーのレオナックさんは嘆息する。


「仕方あるまい」


 と、同意した。


 民主主義に敗北したようである。


(なんか、ごめんなさい)


 賛同者の1人として、少し申し訳ない。


 でも、彼女は気を取り直したように、


「あい、わかった。じゃが、先に『王都行き』の予約を取るぞ。飯を食うはそのあとじゃ」


「は~い!」


「ええ、わかりました」


「あ、うん」


 僕も、素直に頷く。


 そのあとも、3頭の竜は通りを行く。


 街の中心部へと向かい、やがて、役場のような建物の前で停まると、


「しばし待て」


 と、レオナックさんが1人竜を降り、建物に入っていく。


 結構、人の出入りも多い。


 僕は、後ろのお姉さんに聞く。


「ここは?」


「王国の『転移門管理局』ですね。『転移の門』は1日12回と、その回数と時間、転移人数が決まっているので予約が必要なんです」


「へ~、そうなんだ」


「金額も、そこそこ高額です」


「…………」


 借金、追加決定。


(が、がんばって返そう)


 そんな決意をしながら待つこと、約20分、赤毛の美女が戻ってきた。


 でも、その美貌は渋い。


 姉妹も気づく。


「レオ?」


「どったの?」


「うむ、今日は転移希望者が多くての。明日の朝1でしか、予約が取れなんだわ」


「まぁ」


「そなの?」


「仕方ない、今日はクォレンに泊まるかの」


 と、言う。


 え……お泊まり?



 ◇◇◇◇◇◇◇



 急な宿泊宣言に、姉妹は喜んだ。


 僕はともかく、女冒険者の3人は、数日間、森の調査を行っていたらしいんだ。


 当然、お風呂も入れない。


 全員、濡れタオルで身体を拭くぐらいで、


「お風呂! 絶対、お風呂のある宿にしましょ!」


「ですね」


 妹の要求に、姉も頷く。


 レオナックさんも苦笑し、「そうじゃな」と同意していた。


(ん~?)


 クンクン


 匂いはあるけど、別に嫌な感じはしないよ?


 むしろ、いい匂い。


 まぁ、僕の感想より彼女たち本人の納得の方が大事だろうし、何も言わないけどね。


 で、宿屋へと移動する。


 15分ほどで到着。


 3階建てぐらいの三角屋根の建物だ。


 結構、大きい。


 店舗前の看板には、簡略化されたベッドと食事の絵が描かれている。


(う~ん、高そう)


 宿内に入る。


 受付で、中年のお姉様が「いらっしゃい」と出迎えた。


 4人の代表で、レオナックさんが部屋が空いているか、食事と風呂があるか確認してくれる。


 で、宿代も判明。


「1泊200リドだよ」


 とのこと。


(ふむ?)


 僕は、隣の1番仲良しなお姉さんに訊ねた。


「あの、クレティーナさん」


「はい?」


「1リドって、どれくらいの価値?」


「え?」


 驚きの表情。


 聞こえていた妹も「うわ、世間知らず」とか言ってる。


(悪かったね)


 まだ転生したてなんだよ、僕。


 でも、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥――正直、少し恥ずかしいけど、今の内に教えてもらわなきゃ。


 お姉さんは頷き、


「そうですね……大体、1~3リドでパンが1つ買えるぐらいでしょうか」


「へ~?」


 なるほど?


(多分、1リド100円ぐらいかな?)


 多少、差異はあるだろうけど、それぐらいの感覚でいいと思う。


 つまり……え?


(1泊2万円!?)


 た、高い。


 無一文の僕は慌てる。


「あ、あの、僕、外で野宿しようかな」


「え?」


「は?」


「だって、お金ないし、1人男だし、お高いし……」


 と、後退る。


 ガシッ


(わっ?)


 クレティーナさんに手首を掴まれた。


 少し怖い顔で、


「何を馬鹿なことを」


「う……」


「シーナ。私たちが貴方1人を野宿させるなど、そんな薄情な女たちに見えますか?」


「で、でも」


 僕は答えに詰まる。


 妹の方は「私は、シーナが野宿でもいいけど~」と呟き、姉に睨まれる。


 そして、お姉さんはまた僕を見る。


 胸に手を当て、


「貴方が助けてくれた私の命は、そんなに安くはありません。どうか、このクレティーナをもっと信じてはもらえませんか?」


 と、真剣な眼差しだ。


(……クレティーナさん)


 いい人だ。


 だから、信頼はしてる。


 でも、僕、槍を投げただけだし、助けた実感、あまりないんだよね。


 だから、申し訳なくて。


 と、その時、レオナックさんが戻ってくる。


「どうした? 何を揉めておる?」


「あ……」


「レオ。それが、シーナが野宿すると言い出して」


「ふむ?」


 と、彼女は目を丸くする。


 クレティーナさんと僕は、事情を説明。


 赤毛の美女は頷き、


「そうか。ならば、こうしよう。――シーナ、手を出せ」


「え? うん」


「ほれ」


 ジャラッ


 出した手に10枚、硬貨が渡された。


(え?)


 僕は目を丸くする。


「1000リドじゃ」


「は?」


「仲間の命を助けてくれた礼と思え。宿代なども、そこから出すが良い」


「いや、でも」


 こんなにもらえないよ!?


 僕の反応に、 


「たわけ」


 と、赤毛の美女はピシャリと言う。


(うっ?)


「今回の件、クレティーナが1人欠けていれば、あの使役された黒竜は倒せなかったかもしれぬ」


「…………」


「必然、調査クエストも失敗じゃ」


「…………」


「での? 今回のクエスト報酬は10万だったのじゃ」


「じ……っ!?」


 10万って、つまり、1000万円!?


(ひぇっ)


 息を飲む僕に、言う。


「つまり、そなたは10万の損害を防いだ。1000リド程度の礼は当然であろう?」


「う、でも」


「ああ、傷を治した礼もあるの。ほれ」


 ジャラッ


(わっ?)


 更に10枚、追加された。


 ち、ちょっと~?


 焦る僕に、


「これ以上、何か言うなら、更に追加するぞ」


 と、笑う。


 何、その脅迫?


 でも、クレティーナさんは『うんうん』と頷いている。


 妹の方は、


「勿体なぁ……」


 と、呆れていたけれど。


 僕は無言。


(本当にいいの?)


 と、赤毛のお姉さんの美貌を見上げる。


 気づいた彼女は、


 ポン


 僕の頭を軽く叩いた。


「正当な報酬じゃ。このレオナック・オルンが『金印』の称号にかけ保証するぞ」


「……うん」


 僕も頷いた。


 生きるには、お金がいる。


(今後の生活基盤を築くにしても、最低限、先立つものは必要になるよね?)


 だから、今は、


「――あの、ありがとう」


 ペコッ


 3人に頭を下げる。


 年上2人は鷹揚に頷き、少女は「ま、好きにしたら」と軽く言う。


(みんな、優しいね)


 約20万円。


 大事に使おう。


 でも、やっぱりもらい過ぎな気がするから、その分、きちんと3人に恩返ししていこう。


(うん、がんばるぞ)


 そう心に誓い、


 ギュッ


 手の中を硬貨を、僕は握り締めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
通貨がリドだったり、1リド100円って認識から「舞台等が違うだけで、実は前作と同じ世界の話?」と思ってしまった・・・階級が違うから、多分気のせいかもしれませんが・・・その辺どうなんでしょうか? 違う世…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ