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神樹の少年シーナ ~転生したら、頭に葉っぱが生えたんだけど?~  作者: 月ノ宮マクラ


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15/17

015・門前の一幕

 草原を走り、街道に出る。


(おお、土の道だ)


 多少、轍もあるけれど、森の地面に比べたら凹凸もなく安定感がある。


 お尻が楽ぅ~。


 しばらく進むと、街を囲む壁が近づく。 


 石積みの頑丈そうな壁だ。


 高さは5メートル以上で、街道と接する部分に巨大な門がある。


 門前には、たくさんの旅人と馬車、あるいは竜が牽く車両が並び、どうやら街に入る審査か手続きがあるみたいだった。


 僕らの竜も並ぶ。


 ドキドキ


(初めての異世界の人の街だ)


 期待値が高い。


 周囲を見ると、


(あ……あの人、耳が長い?)


 え、まさか……?


 ドキン


 心臓が跳ねる。


「ク、クレティーナさん?」


「はい?」


「あの並んでいる人……もしかして、エルフ様ですか?」


「え……様?」


「…………」


「ええと、はい、そうですね」


 と、肯定される。


(や、やっぱり~!)


 異世界の象徴的存在、ある意味、転生したら会いたかったナンバー1の方々だ。


 うわ、本当美形~。


 こう繊細な感じで、芸術品を見てる気分だよ。


 目を輝かせる僕に、


「もしかして、エルフに会うのは初めてですか?」


「うん!」


「まぁ……」


「噂では知ってたけど、美人だね」


「…………」


 彼女は、数秒、沈黙する。


 自分の胸の辺りを不思議そうに触ると、


「そう、ですね」


 と、頷いた。


 パルシュナが「アンタって本当、田舎者ねぇ」と呆れたように言う。


(悪かったね?)


 姉が「こら」と妹を叱る。


 よく見ると、


「あ、あの人、耳と尻尾がある。獣人さん!? あっちの背の低いガッチリした髭の人は、もしや、ドワーフさん!?」


「…………」


「…………」


「うはぁ、凄いなぁ……!」


 興奮する僕。


 姉妹は顔を見合わせる。


 赤毛の美女が苦笑し、


「あまりジロジロ見ると失礼じゃ。程々にの、シーナ」


「あ、うん」


 確かに、そうだね。


(でも、僕、感動だよ)


 前世では、空想の存在。


 実在しないはずの人種――その人たちが今、目の前で生きている。


 ああ……異世界。


 なんか、僕、泣きそう。


 そんな僕を、クレティーナさんが見つめる。


「…………」


 息を吐くと、


 ナデナデ


 優しく笑いながら、僕の頭を撫でたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 約30分後、手続きの番が来た。


 3人のリーダーのレオナックさんが代表して、門兵と話して手続きをしてくれる。


「冒険者か」


「うむ。これが通行許可の書類じゃ」


「確認する。……むっ、人数が合わぬな」


「ああ、あの小僧は森で保護した子供での。入街料は別に支払うぞ」


「ふむ、そうか」


 チャリン


 硬貨を渡す赤毛のお姉さん。


(…………)


 街に入るのに、お金が要るんだ?


 僕は慌てて、


「あ、あの、いつか必ず返すからね?」


 と、隣のクレティーナさんに言っておく。


 彼女は目を丸くする。


「まぁ、別に構いませんよ。シーナは私の命の恩人ですし、これぐらい――」


「だ、駄目だよ」


 お金の貸し借りって大事なことだから。


 僕の様子に、


「シーナは真面目ですね」


 と、彼女は苦笑する。


 妹の方は「じゃあ、利子、た~っぷり付けて返してもらいましょ?」と楽しげに笑う。


(ぐ……き、君って子は……)


 その間にも、手続きは進む。


「では、証明の冒険者印・・・・を示せ」


「よかろう」


 頷くレオナックさん。


 右手を出し、


 パアッ


(!?)


 その手の甲に、黄金色に輝く光の紋章が浮かび上がった。


 な、何あれ?


 僕は目を見開いてしまう。


 気づいて、


「冒険者印です」


 と、クレティーナさん。


(冒険者印?)


 彼女は、自分の右手の甲を見せ、


 ポウッ


(!)


 レオナックさんと同様、光輝く紋章を浮かび上がらせた。


 ただし、こちらは銀色。


「冒険者は登録した際に、ギルドから魔法の紋章を授かります。色はランクを示し、偽装できぬ身分証ともなります」


「へぇぇ~」


 思わず、見入っちゃう。


(凄い綺麗……)


 これも、異世界技術か。


 僕は、少女を見る。


「じゃあ、パルシュナも?」


「そりゃ、あるわよ」


 ポウッ


 幼い右手に、純白の光の紋章が灯る。


 おお~、


「格好いいね!」


「…………。ふふん、そ~お?」


 得意げな少女。


 鼻を高くする妹に、姉は苦笑する。


 そして、レオナックさんの方は、黄金の紋章を見た門兵や周りの人が驚きの表情を浮かべていた。


「金色!?」


「まさか、金印の……?」


「凄いわ。あの人、炎帝のレオ様よ!」


「マジかよ……」


 と、ざわめいている。


(へぇ……?)


 凄い反応。


 さすが、王国最強の冒険者の1人。


(前にパルシュナが言っていたように、レオナックさん、本当に有名人なんだね)


 僕も驚いちゃう。


 門兵も態度を改め、


「こ、これは失礼しました」


「構わぬ」


「手続きの問題は何もありません。どうぞ、お通りください」


 ビシッ


 門兵全員、敬礼だ。


 赤毛の美女は「うむ」と鷹揚に頷き、僕らを振り返る。


 ドキッ


 彼女は、


「許可が出た。皆、行くぞ」


「あ、う、うん」


「はい」


「はいよ~」


 竜の手綱を引き、近づく。


 タン


 豊かな赤髪をなびかせ、レオナックさんは華麗に乗竜する。


 と、僕を見て、


「どうした、シーナ?」


「あ……」


「我の顔に、何かついておるか?」


「う、ううん」


 僕は首を振る。


 そして、


「その、レオナックさんって凄い人なんだね? 周りの人の反応見てたけど、僕、なんか驚いちゃったよ」


「ふっ……そうか」


 彼女は、苦笑する。


 姉妹は顔を見合わせ、妹が「今更~?」と呆れる。


(本当、今更だよね)


 僕も笑う。


 そんな年少組のやり取りに、クレティーナさんも微笑む。


 やがて、赤毛の美女は前を向き、


「――よし、では行くぞ」


 と、自分の竜を歩かせる。


 僕らの竜もあとに続く。


 3頭の竜は石壁の門を潜り抜け、そして、僕ら4人は『クォレンの街』へと入ったんだ。

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― 新着の感想 ―
褒められて満更でもないレオナック・・・可愛い。これはシーナも冒険者登録しておきたい所だが、果たして・・・?
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