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神樹の少年シーナ ~転生したら、頭に葉っぱが生えたんだけど?~  作者: 月ノ宮マクラ


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014・森の移動

「シーナ、起きて」


(んが……?)


 身体を揺らされ、目を覚ました。


 目の前に、テントの出入り口から差し込む朝日を背に、僕を覗き込む女の人がいる。


 美しい緑の長い髪が、サラッと揺れる。


「……女神様?」


 僕は思ったままを呟く。


 女神様は目を丸くし、


 クスッ


 と、笑う。 


「おはよう、シーナ。もう出発の時間になりました。なので、起きてくださいな」


「……はっ」


 ク、クレティーナさんだ。


 僕は慌てて「っ、おはよう」と起き上がる。


(は、恥ずかしぃ~)


 赤面しながら、彼女とテントの外へ。


 そこには、駝鳥みたいな竜に荷物を積み込むレオナックさんとパルシュナの姿もあった。


「お、起きたか、小僧」


「はっ、寝坊助ねぇ」


「う……お、おはよう」


 2人にも挨拶。


 パルシュナは「ふん」と鼻を鳴らし、


「私らは一晩中、交代で見張りをしてたのにさ。本当、1人でよく寝てたわね~?」


「え、そうなの?」


「そうよ。当たり前でしょ」


「そっか……ごめん」


 知らなかった。


 頭を下げ、素直に謝る。


 と、少女の姉が慌てて、


「私たちは冒険者で慣れていますから。ですが、シーナは一般人でまだ子供です。見張りのことを気づかなくても当然です」


「でも……」


「それにシーナは昨日、私たちを治してくれたでしょう?」


「…………」


「それだけで充分、助かっていますよ」


 と、笑う。


 それから、妹を見る。


 姉の視線に、「うっ」とか呻く。


「ま、まぁ、役割分担よね」


「はい。火傷した足で見張りは、辛かったでしょうから」


「う、うぐぐ」


 なんか悔しそう。


(い、いや、睨まれても困るんだけど……?)


 難儀な少女だ。


 リーダーである赤毛の美女は苦笑し、


 パンパン


 と、手を叩く。


「ほれ。シーナも起きたし、テントを片付けたら出発するぞ」


「あ、うん」


「はい」


「へいへ~い」


 僕らは頷き、姉妹が作業に入る。


 テントの骨組みを外し、覆っていた布は部位ごとに丁寧に畳み込む。


 丸めて、


 ギュッ


 と、紐で縛った。


 で、竜の鞍へ括り付け。


(うん、手早い)


 僕は何もする暇がなかった。


 焚火の跡にも土をかけ、しっかり消火する。


 全て終えると、3人は竜に乗った。


 クレティーナさんは僕に向け、


「シーナ、手を」


「あ、うん」


 グイッ


 伸ばした手を引かれ、彼女の前に乗せられる。


 見ると、竜の背には、僕らの他に『護国の神樹』の枯れた枝や、黒い竜の牙や爪、鱗なんかも積まれていた。


 視線に気づき、


「報告用の証拠品です」


「ああ、うん」


「あと、竜の素材は高値で買い取りしてもらうこともできますね」


「へ~、そうなんだ?」


 僕は頷き、


(なんか、冒険者っぽいや)


 と、感心する。


 と、隣の竜に乗る少女が、


「余計なチビがいなければ、その分、もっと積めたんだけどな~。あ~あ、おかげで収入減るな~」


「…………」


 う、うぬぅ。


 黙る僕に、パルシュナは愉快そうに笑う。


 ゴン


「ぐへっ」


(!?)


 姉の長い槍が、妹の脳天を叩いた。


 悶える少女を無視し、


「そんな端金より、シーナの方が大事です」


 と、言い切る。

 

 僕は驚きつつ、


「あ、ありがとう」


「いいえ」


 彼女は、優しく微笑む。


 ナデナデ


 頭を撫でられる。


(…………)


 妹とは対照的に、姉の方はなぜか僕を甘やかす感じ。


 何でだろ?


 見れば、パルシュナは涙目である。


 と、


「じゃれ合いは終わったか? ならば、出発するぞ」


「あ……うん」


「はい、行きましょう」


「じ、じゃれ合ってないわよ!」


 僕らは答える。


 赤毛の美女は頷き、


「大丈夫そうじゃな。――よし、行くぞ。はっ!」


 パン


 竜の腹を、両足で蹴る。


 合図と共に竜は走り出し、姉妹も同様に「はっ」「行け」と自分たちの竜を動かす。


(わっ?)


 突然動き出し、僕は背後に倒れ込む。


 ポフン


 鎧越しの柔らかな胸のクッションが、背中と後頭部を受け止めてくれた。


 白い手が僕のお腹を押さえ、


「そのままで」


「う、うん」


 体温を感じながら、僕は頷く。


 ドキドキ


 振動と共に、大人の女性らしい肉体の感触がダイレクトに伝わってくる。


 そんな僕らを乗せ、3頭の竜は走る。


 ふと背後を見る。


 巨大な、灰色に枯れた大樹があった。


 その姿は、どんどん遠ざかる。


 ……なぜだろう?


 大事な家族から引き離されるような、そんな寂しさが胸に宿る。


(…………)


 感傷を堪え、前を向く。


 そうして僕は、3人の女冒険者と共に灰色の森の中を走り抜けていったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 ドドドッ


 竜は森を駆ける。


 枯死した『護国の神樹』を離れると、周囲の植物も緑の葉を取り戻していく。


 生命力を感じる森になる。


(綺麗だな……)


 葉の隙間から、木漏れ日が落ちている。


 幻想的な風景だ。


 と、その時、


「む? 赤魔狼がおるの」


(え?)


 レオナックさんの視線を追いかければ……あ、真っ赤な狼の群れが木々の奥にいる。


 数は、7~8頭ぐらい。


 頭に、歪な小角が何本か生えていた。


 僕は、クレティーナさんに聞く。


「魔物?」


「はい、この森固有の魔物ですね。ただ本来は、もっと浅い森で生息している種なのですが……」


「…………」


 これも、護国の神樹が枯れた影響か。


 と、魔物が駆け出す。


 ――僕らの方へ。


(わっ?)


 3人は表情を厳しくする。


「やる気ね!」


「ええ。――レオ?」


「うむ、応戦じゃ」


 女冒険者たちは、武器を構える。


 竜の進路を変え、正面から狼の群れへと突っ込んだ。


 そして、


 ドシュッ


 鮮血が空中に舞った。


 お互いが交差するように駆け抜けると、狼の魔物の死体が2頭分、地面に倒れていた。


 残った群れの1頭は、前足が斬られている。


 グルル


 狼の魔物の群れは唸る。


 けど、3人が竜を反転させ、もう1度攻撃態勢を作ると、一斉に後方の茂みの方へと駆けだしていく。


(あ、逃げた)


 僕らも追わない。


 少女が、


「ふんっ! 相手を選べっての」


 と、悪態をつく。


 見れば、全員の武器の刃には、魔物の血がついていた。


(う~ん、強い)


 と、クレティーナさんと目が合う。


 彼女は微笑み、


「もう大丈夫ですよ」


「うん」


 僕も笑った。


 それから、再び移動開始する。


 生える草を蹴散らし、斜面を登り、倒木を跳び、浅い小川を水を散らして越えていく。


 やがて、綺麗な湖に出た。


 湖面に、空の景色が反射している。


 また、いくつかの巨岩が水面から生えていた。


 すると、


「よし、1度、休憩じゃ」


 と、レオナックさんが宣言した。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 僕らは、竜を降りる。


(ふぅ~)


 と、一息。


 結構、振動があったので、少しお尻が痛いや。


 ちょっと撫でちゃう。


 女冒険者たちは3頭の竜を水辺に連れて行き、水を飲ませている。


 3頭とも、夢中で飲む。


(よく走ったもんね)


 竜だけど、結構、可愛く感じる。


 また3人は荷物からスティック状の携帯食を取り出し、自分たちもエネルギー補給していた。


 僕も靴を脱ぎ、


 チャポッ


 素足で水に浸かる。


(ん……冷たくて、美味し~!)


 正直、葉っぱも出して『光合成』したい気分だよ。


 でも、我慢我慢。


 そうして水を食べていると、クレティーナさんが僕の方へと歩いてくる。


「あら、気持ち良さそうですね」


「あ、うん」


「ふふっ。――シーナ、これをどうぞ」


 と、携帯食を1本、渡してくれる。


 え、いいの?


 表情に出ていたのか、 


「予備に持ってきた物なので、遠慮なく」


 と、彼女は頷く。


 僕は「ありがとう」と素直に受け取る。


 パクッ


(ん、これも美味し~!)


 夢中で食べちゃう。


 クレティーナさんは優しい表情で、そんな僕を眺める。


 そして、靴を脱ぐと、


 チャポッ


 と、白い素足を水に浸し、隣に座った。


(お?)


 僕は目を丸くする。


「ん、冷たいですね」


「うん。でも、美味しいよね」


「え?」


「え?」


「美味しい、ですか?」


「あ……」


 僕の馬鹿~!


 慌てて、「あ、携帯食がね」と誤魔化す。


 彼女は少し不思議そうに、長く艶やかな髪を揺らしながら小首をかしげる。


 僕は「あはは~」と笑った。


 しばし、そんな僕を見つめ、


「そうですか」


 と、彼女も頷いた。


(セ、セ~フ!)


 僕は内心、安堵する。


 そんな僕に、


「シーナ」


「ん?」


「私は、貴方の味方です。それだけは覚えていてくださいね」


「…………。うん」


 キョトンとしつつ、僕は頷いた。


 彼女も穏やかに微笑む。


 それから、


「それと、今後の予定も少し話しておきましょう」


「予定?」


「はい。私たちは今、『王都フィーンドリア』を目指しています」


「あ、うん」


「ですが、王都は遠く、徒歩なら7日、狗竜くりゅうでも3日以上かかる距離にあります。本来なら、今日中には到着しません」


「へ~?」


 結構、遠いんだ?


 徒歩で1日30キロとして、


(もしかして、200キロぐらい離れてるのかな?)


 と、推測。


 お姉さんの話は続く。


「なので、私たちは今、『クォレンの街』に向かっています」


「クォレン?」


「森を出て比較的、近い場所にある街です。この地方で1番発展した都市で、半日もあれば到着しますね」


「へぇ~」


 その街に行く。


(つまり、経由していくのかな?)


 と思った。


 でも、違った


「そのクォレンには『転移の門』があります」


「転移の門?」


「ええ、遠い場所同士を一瞬で移動できる古代の魔法装置です。そして、王都フィーンドリアには対となる『門』があり、転移が可能です」


「!」


 僕は、青い目を丸くする。


 転移装置……前世の地球にもない超技術だ。


(異世界、凄い!)


 感動する僕に彼女は笑い、


「なので、今日明日には王都に着くでしょう」


「う、うん」


「本日の行程は、そんな感じになります。あと半日ほど狗竜での移動が続きますが、がんばりましょう」


「うん、がんばる!」


 僕も大きく頷く。


 お尻の痛みも忘れたよ。


(転移、楽しみだなぁ)


 そして、王都もどんな場所なのか、気になるよ。


 うん、ワクワクだ。


 僕の表情に、クレティーナさんも微笑んでいる。


 やがて、


「よし、休憩終了じゃ」


 と、赤毛の美女が告げる。


 僕らは再び竜に乗り、


「はっ」


 ドドッ


 森の中を駆けだした。


 道中、2度の休憩を挟みながら、移動を続ける。


 休憩中は、



(――光合成)



 パアッ


 用を足すフリして、木陰でお尻を治したりも。


 そうして半日後、丘を登ると、突然、森の木々が消え、草原の景色が現れる。


(あ……)


 眼下に広がる平原。


 その中に、円形の壁に囲まれた都市が見えた。


 僕は、目を瞠る。


 背後の美女が笑った。



「――見えましたね、シーナ。ええ、そうです。あれが『クォレンの街』ですよ」

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― 新着の感想 ―
>「私は、貴方の味方です。それだけは覚えていてくださいね」 これ、見方によっては「信じているから、いつかは本当の事を話してね」って意味合いも含めて言ってそう・・・全く疑って無い訳じゃないけれど、どちら…
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