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神樹の少年シーナ ~転生したら、頭に葉っぱが生えたんだけど?~  作者: 月ノ宮マクラ


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012・野営

 戦いは終わった。


 荒ぶる空気も落ち着くと、


(…………)


 僕らの視線は自然と、目の前にそびえる巨大な樹木へと集まってしまう。


 圧倒的存在感。


 でも、灰色の樹皮はひび割れ、生命力を感じさせない。


 僕は、呟く。


「……死んじゃったんだね」


 その声は、思ったより大きく場に響いた。


 現地民の3人は沈黙。


 やがて、クレティーナさんが頷く。


「そうですね」


「やっぱり、あのフードの奴のせい?」


「ええ、きっと」


「…………」


「奴の使役する竜は、『護国の神樹』の中から出てきました。恐らく、内側から毒を流されたのでしょう」


 と、推測する。


 少女が、灰色の大樹を見上げる。


「これから、フィーンレイドはどうなっちゃうのかしら?」


 ポツリと呟いた。


 大人2人は答えない。


 数秒して、ようやく、レオナックさんが口を開く。


「荒れるであろうの」


「…………」


「…………」


「…………」


「『護国の神樹』の加護が消えた以上、各地で魔物が暴れ出す。しばらくは大変な日々となろう」


 淡々と、けれど、重い声だ。


 言い換えれば、


(人が大勢死ぬ……ってことだよね?)


 少女もわかってる。


 だから、不安げな表情だ。


 クレティーナさんの美貌にも、静かな厳しさを感じる。


 僕は、大樹を見る。


 転生したばかりで、あまり実感はない。


 でも、


(大変なことになっちゃったな)


 と、思う。


 巨大な樹木。


 まるで神様みたいに、人々に慕われ、敬われてきたのだろう。


 それの、死。


 トクン


 ……何だろう?


 枯死した木を見ていると、凄く悲しい。


 夢で見た、光る大樹にそっくりだからかな?


 そして、あの神々しかった姿が、今、目の前では灰色に枯れ、その差異にショックを感じてるのかもしれない。


(…………)


 ああ、うん。


 お母さんが死んだ。


 そんな感じ?


 僕ではなく、僕の肉体がそう感じているみたいな……。


 トクン


 胸が、痛い。


 その時、


「シーナ?」


 クレティーナさんが驚いたように僕を呼ぶ。


(?)


 彼女は戸惑い気味に、


「泣いているのですか?」


「……え?」


 言われて、気づく。


 頬を触ると、指が冷たい。


 僕の目からは、ポロポロと涙が流れていた。


 他の2人も驚く。


 僕も、


(どうして……?)


 と、自分にびっくりした。


 緑色の髪をしたお姉さんは、痛ましげに僕を見つめ、すぐに優しく微笑む。


 ギュッ


 何も言わず、僕を抱き締めた。


(わ……)


 驚き、でも、温かい。


 冷えてしまった心を温められている感じ。


 ……うん。


 僕も、その腕の中でしばらくジッとしていたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



「今夜は、ここで野営する」


 と、レオナックさんが宣言した。


 僕らを見回し、


「日暮れも近い。現在のこの森は、夜の移動も危険じゃ。王都フィーンドリアへの帰還は明日とする。――皆、良いの?」


「はい、わかりました」


「ん、了解よ」


 美人の姉妹は、揃って頷く。


 僕も空を見る。


 太陽は傾き、空の半分が赤くなっていた。


(もう、夕方だ)


 あと、数時間で夜になるだろう。 


 ……ん、夜?


 夜とはつまり、太陽がない時間。


 そして、太陽がなければ、当然、『光合成』も行えない。


(あ)


 今更、気づく。



 ――夜の僕は(・・・・)、無力(・・)。



 あの異常な膂力も、超回復も、一切使えなくなってしまう。


 僕は3人に、


「う、うん、野営、賛成!」


 コクコク


 何度も頷く。


 3人は少し不思議そうな顔をしたけれど、深く追及はされなかった。


 僕は内心で、


(早く気づけて、よかった)


 と、安堵する。


 もし身を守る術がないのを知らず、この危険な森で夜を迎えていたら……うん、ゾッとする。


 でも、幸い、今は1人じゃない。


 僕は、3人の方を見る。


 その1人が、僕の視線に気づく。


「シーナ?」


 やはり、彼女。


 その顔を見つめ、



「――僕、クレティーナさんに出会えてよかった」



 と、正直な思いを口にした。


 彼女は「え?」と目を丸くして驚く。


 クレティーナさんと出会えたから、今、無力な僕は1人で夜を迎えずに済んでいる。


 改めて、


(このご縁、やっぱり大事にしなきゃ)


 と、思う。


 そんな僕のことを、彼女は少し赤くなった顔で見つめていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 野営の準備が始まる。


 赤毛の美女が懐から小笛を取り出し、


 ピィーッ


 と、高く鳴らすと、3頭の駝鳥みたいな竜が森の中から戻ってくる。


(おお、賢い)


 竜の鞍の左右には、大型の鞄が括られていた。


 ガサッ


 野営用の荷物が取り出される。


 軽量の布テント、寝具となる毛布、照明用のランタンなどなど。


 3人は、手際良く野営準備を行う。


 テントを張り、石の竈を作る。


 食材なども用意され、拾った薪で焚火を起こすと鍋でシチューを作ってくれた。


(ん~、いい匂い)


 30分ほどで完成。


 周囲は完全に、夜の景色だ。


 焚火の炎が眩しいぐらい。


 彼女たちは、お椀に出来立てのシチューをよそう。


 そして僕にも、


「はい、シーナ」


 木製のお椀の1つを渡してくれる。


 いいの?


「ありがとう」


 お礼を言って、受け取る


 クレティーナさんも優しく微笑み、頷く。


 と、見ていた妹が、


「あ~あ、誰かさんのせいで、貴重な食材、減っちゃったな~」


(う……)


 は、反論できない。


 少女は「うけけ」と笑う。


 でも、姉が「こら」と叱った。


「シーナは私と出会うまで、水しか口にしていなかったのですよ?」


「え……」


(え?)


 僕らは驚いた。


 赤毛の美女が「ふむ」と頷く。


 僕を見て、


「よく生き延びたの」


「ど、どうも」


 ペコッ


 思わず、会釈。


 いや、多分、3人が想像するほど大変な状況でもなかったと思うけどね。


(僕、水だけで生きられるみたいだし……)


 でも、少女は少しバツが悪そう。


 唇を尖らせ、


「ふ、ふんっ。少しぐらいなら、分けてやるわよ」


「あ、うん」


「感謝しなさいよね」


「うん、ありがとう、パルシュナ」


「っ……ふん!」


 と、癖のある紫色の髪を振り回し、そっぽを向く。


 う~ん?


(素直じゃないけど、悪い子じゃないんだよね)


 ……多分。


 その少女の姉は満足そうに頷き、リーダーの美女は苦笑している。


 そして、実食。


 木製のスプーンを、口に運ぶ。


 パクッ


(ん、美味しい!)


 煮込まれた肉と野菜がたっぷりの熱々シチューで、身体の芯から温まる。


 3人も食べる。


 うん、全員、満更でもない表情だ。


 モグモグ


 僕らは食事を続ける。


 食べながら、


(……贅沢な時間だなぁ)


 と、思った。


 人気のない静かな森のキャンプで、一緒にいるのは美女と美少女のみ。


 頭上には、美しい満天の星空が広がる。


(あ……月が2つある)


 紅と白、2色の月が寄り添うように夜空に浮かんでいた。


 そっかぁ。


 やはり、地球ではないらしい。


(……異世界、か)


 何だか、しみじみ実感する。


 そんな風に、夜空を眺めていると、


「ふぁ~」


 不意に、欠伸が出た。


(あら……)


 満腹になったからかな?


 気づけば、3人が全員、僕の方を見ていた。


(う……)


 見られてた?


 は、恥ずかしい~。


 赤面する僕に、少女は小馬鹿にするように「へ~、もうお眠ぅ?」とか笑う。


(うぐぐ)


 一方、大人の2人は、


「ふむ、緊張が解けたのかの」


「ですね」


 と、会話する。


 クレティーナさんが微笑み、


「シーナ、今日は色々あって疲れたのでしょう。毛布を貸すので、先に休んでください」


「いいの?」


「はい」


「うん。じゃあ、そうする」


 僕は素直に、厚意に甘えることにした。


 席を立ち、


「今日は、色々ありがとう。みんな、おやすみなさい」


 ペコッ


 3人に頭を下げる。


 大人2人は頷き、少女は「ふん」と横を向く。


 僕は1人で、テントの中へ。


 パサッ


 置かれた毛布を、1つ、拝借。


 身体を横にすると、


(う……?)


 床面は厚めの布が敷かれているけれど、地面の固さや小石などの凹凸を感じる。


 あと、微妙な傾斜もある。


(これ、寝れるかな?)


 と、少し心配になる。


 でも、仕方ない。


 毛布を羽織り、目を閉じた。


 ま、目を閉じてるだけでも、きっと身体は休まる……し……。


 …………。


 …………。


 ……ぐぅ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



(はっ?)


 目が覚めた。


 今、眠ってたのか。


 ま、まさか、一瞬で寝落ちするとは……僕、本当に疲れてたんだね。


(う~ん、自分にびっくり)


 少々呆然と、薄暗いテントの天井を見つめてしまう。


 周囲を見るけど、テント内には誰もおらず、布の向こうには焚火の灯りと3人の気配がした。


 ふむ?


 眠った時間はそんなに長くないのかな?


(ん、もう1度、寝よう)


 僕は目を閉じ、



「――アイツ、シーナだっけ? 絶対、怪しいわ」



 と、外から声がした。


 んん……?

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― 新着の感想 ―
無事に野営に移ったが、何やら不穏な空気が・・・状況的にシーナは疑われても仕方ないが、どう切り抜ける? 質問ですがメインの登場人物となるお姉さん3人の戦闘力(おっぱいの大きさ)はどんな感じですか?
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