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31話 最終決戦への降下

 急いで次元の狭間から外に抜けて、アビスゲートへ向かった私達はオスプレイに乗り込み、東京へ蜻蛉返りする事に。

 時刻は朝の6時。完全にファンタジアの手の上で遊ばれていた事に私達は悔しさを感じつつ、国会議事堂上空に到着した。

 眼下にはファンタジア所属と思われるウィザードが警備を固めていて、こちらに攻撃しようと戦機を構えている。


 

「おじさん! これ以上下に降りると危ないから、ここで降ろして」


「だが良いのか? 敵に視認されてる中での降下は、危険ってもんじゃないんだぞ?」

 


 パイロットの言う通り、降下は安全が確保された状態か、敵がこちらに気付いていない時のみ成功する。

 今の状況は、餌を待つ雛鳥のもとに虫が自ら入り込むようなものだ。

 だとしても私たちに残された時間は少ない。それはここまで来る道中で、スマホで見たニュースが物語っていた。

 全国各地でファンタジアを支持する声が上がり、もはや政権交代は時間の問題……。それよりも、武力で現政権を打破しようとする過激派までも台頭し始めている始末。

 故に――


 

「だとしても、行くしかないの」

 


 その決意ある言葉にパイロットは「分かった」と呟き、下降し始めた。

 


「なんで!? これ以上高度を降ろしたら――」


「そんな事は分かってるぜ? ただな。俺たちパイロットは、隊員を無事現場に送り届ける事が任務なんだ。敵地にポイと放り投げる真似なんざ出来るかって話だよ!」

 


 機体にウィザード達の攻撃が被弾する。矢や魔力弾、冷や水に雷などのエネルギーがぶつかる度にアラートが激しく鳴り響き、機体が揺られる。

「それでも!」とパイロットは限界ギリギリまで高度を降ろし――


 

「今だ! 行けぇ!」


「ありがと……。行こう! みんな」


「「「おお!」」」


 

 パラシュートも無し、私達はたった一つの戦機のみを握り、期待から飛び降りた。

 敵は待ちに待った敵だと、攻撃の勢いを増していく。

 ただ――この高さならと、私はライトニングスパローを握る腕をグルグルと回していく。それも――光速で!


 

「アリスに出来るなら、私だって――」


 

 ドラゴンブレスは高めた魔力の塊をぶつける大技――要は力の押し付けだ。手段は違えど、私も似た攻撃が一度だけできた事がある。それはアリスと初めて戦った決闘で見せた刺突、エアバーストだ。


 

「エア――バァァァストッ!!」

 


 腕を鞭のようにライトニングスパローで、眼下の地面を切り裂くように薙ぎ払った。

 すると解き放たれた空気の塊がパァァァンッ!と弾け、ソニックブームが地上をウィザード諸共、大きく斬り刻んだ。後に残ったのは、まるで竜の一薙ぎのようだ。

 その一撃でウィザード部隊は壊滅し、私達は無事地上に着地する事が出来たが――

 


「鈴! 腕は!?」


「痺れてるけど、問題なし!」

 


 お兄ちゃんが私の身を案じて駆け寄る。

 今の一撃を放つ為に右手に魔力を全開に込めた分、ジンジンと痺れている。今のをもう一度やれと言われても無理だろうという事だけは分かる。

 


『全身使ってやっと放てる大技を、片手で放ったんだ……しばらくは無理しない方がいいだろうね』


『そうね……そうする』


 

 少し張り切りすぎたと後悔してる。だけど、あの場で私たちが安全に着地するには最善でもあった事も確かだし、まあ仕方ないと割り切る事にする。

 そんな私達は国会議事堂の中へ入り込む。

 中にも敵ウィザードが大量に居たが、お兄ちゃんの氷鬼によって放たれた凍結の魔力に敵は足を滑らせたり、壁から伸びた氷に戦機を絡め取られる。

 遠距離攻撃にはアカリが先頭に立ち防御――そして私が電光石火の勢いで距離を詰めてライトニングスパローを振るい、制圧していく。

 


「敵が多くなってきたな」


「せやな。多分この先が終点……死塚と厳重院がおるんやろ……」

 


 お兄ちゃんとアカリが倒したウィザードを見渡しながら言った。確かに奥に進むごとに敵の数が増えている気がする。二人の言う通り、この先が終点だろう。

 私は痺れる右手を揉み込み、まだ回復までに時間を要しそうな感覚に顔を引き攣らせた。

 


「まだダメなの?」


 

 アリスが私の様子を見て、心配そうに声を掛けてきた。


 

「うん……戦えはするけど、5割ぐらいの力しか出せないかも――雑魚ならいけるけど、死塚相手だと……多分」


「そう……なら分かった。鈴が回復するまで、私たちがカバーするわ」


「ごめん……こんな時に限って、力になれなくて――」


「な〜に言ってんのよ! 大好きな鈴が困ってるんだから、力になるのは当然でしょ? それに私達は同じ部隊の仲間なんだし……気にしないでよね」

 


 お兄ちゃんとアカリ二人も、アリスの言う通りだと私に頷いた。そうだ……今の私には仲間がいる。信頼出来る友達がいるんだ。


 

『鈴芽ちゃんが疲れたら、俺が出るからね! 俺だって部隊の一員だし!』


 

 大樹もそう言ってくれた。私はみんなに「ありがとう」と呟き――


 

「私も今できる事を全力でやるわ。だから、みんな……行こう!」


「「「うん!」」」


 

 ライトニングスパローを握りしめ、奥を進み本会議場の扉の前に辿り着いた。

 その重たい扉をお兄ちゃんとアカリが押し開け、アリスと私が同時に突入する。


 

「そこまでよ!」

 


 目の前に広がる光景は、テレビでよく観た事がある討論の真っ最中だった。だが、知っている光景と少し違う点があるとすれば、静かだ。

 テレビではヤジが飛び交い、かなりうるさい物だったはずなのだが――

 


「早いな……。まさか、もうこの場にやって来ようとは。流石、特殊部隊と言ったところか……」

 


 壇上に立っていた男、厳重院昭弘が私たちを見るなりそう告げた。

 彼には余裕があり、私たちがこの場にたどり着く事を予想していたようだった。そんな彼は後ろに座る女性へ視線を移すと、女性――目を閉じていた死塚が椅子から立ち上がり、ニヤリと微笑む。


 

「いつ戦えるのかと、待ち侘びましたよ?」


 

 死塚は戦機を解放し、黒い霧状のモヤを手の上に漂わせ、私たちに向かってくるのだった。

 

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