27話 ぶちかませ! ドラグナート!
男への尋問はそこまで長引く事はなく、指を三本折った辺りで聞きたいことを全部聞き出すことができた。
曰く、この廃墟に【次元の狭間】が存在し、そこを男が守っていたと。
更にはその狭間内にファンタジア党員が根城にしていて、詳しくは知らないみたいだが、ここに運ばれた物資は全てゲート内に通していたらしい。
それも各地方のアビスから運ばれてきた【エリミネーター】の素材ばかりだ。
その話を聞いて、狭間の詳しい場所を聞き出し、一同は同じフロア内のトイレに入る。
個室を開けると、グルグルと空間を捻るような渦が妖異な光を放っていた。
「いよいよ最後の戦いや。準備ええな?」
「「「「はい!」」」」
「よっしゃッ! なら……突入開始ッ!」
茜さんの号令で私達は狭間の中に足を踏み入れた。
瞬間、周りの光景が歪み、吸い込まれるように中へ進んでいく。その感覚に、異世界への移動に成功した事が理解出来た。
果たしてロストハコダテの向こう側は……。
桜場アビスのように洞窟なのか、それとも別なのか。
そんな不安を抱えながら時空の歪んだ空間を抜けて目に入った場所は――
「これ……城!?」
城だ。それもファンタジー世界で見るような赤黒く、暗い空から雷鳴が轟く場所。離れた崖の上に出て、眼前に広がる魔王城と呼ぶのが正しいと思える圧巻な光景だった。
「クリアやな。ここはただの狭間の抜け道で、あそこまでまだ移動せなあかんみたいや」
「それは見たら分かりますけど先生? あの場所に生息する【エリミネーター】って、どないな奴やと思います?」
「悪魔型のトップ。なら魔王やろ……。まあ、ほんまに魔王かは分からんけど、悪魔型と言えばそう決めつける方が妥当やないか?」
城を目指しながら、茜さんとアカリがそう話している。
確かに魔王が居そうな雰囲気ではあるが、それだけじゃなく、元々の目標である死塚達もあの場にいるはず。
道中は【エリミネーター】と遭遇する事はなく、城前まで辿り着くことができた。
歩きながら侵入口を柳先生、八重さんが探りはしたものの、見つけることが出来なかった。
なら正面突破しかないと考えたのだが――
「中に敵の気配があるわね〜……それも一つや二つじゃない……かなりの数よ〜」
正門に耳を当てた来栖さんが小さくそう告げた。
【次元の狭間】は【エリミネーター】の巣窟だから、悪魔型が蔓延ってる可能性もある。もしかするとファンタジアの待ち伏せかも知れないが……。
そこで茜さんは……「なら」とアリスに目をやる。
「どっちから待ち構えとったとしても、ここを突っ切るほかあらへん。アリスちゃん……いけるか?」
「私に聞くって事は……そう言う事ですか。了解しました」
「ちょっと……何をするつもり――」
私の疑問に、言葉ではなく行動で応えるアリス。
戦機ドラグナートを掲げ、魔力を解放し始めた。
その燃えるような魔力の迸りが、周囲一帯を焼き尽くすかのような熱となって私達を晒すのだが――
これから何をおっ始めるのか、容易に想像出来た。
「あー……なるほどね……うん。分かった……分かってたわよ。待ち伏せに対して有効な手段、それは――」
不意打ちである。
戦闘は常に流れ――主導権をいかに握り続けるかにある。中の敵が外敵に備えているのであれば、侵入する私達がどう侵入しても後手に回る可能性がある。
死角からの奇襲、もしくは迎撃体制……中の様子が分からない分、不利だ。
だったら? そんな不利を強いられる私達が主導権を握る方法は、たった一つだろう。
『ぶっちかまっせ。イエェイ♩』
大樹は気付いているのか、歌を歌うように言った。
同時に、アリスのドラグナートの魔力の高まりが頂点に達し――
「ドラゴン……ブレェェェス――ッ!!」
ドゴオオオオオンッッッ!!
炎の特大魔力が城門を……城壁をぶち壊しながら、中の正体不明の敵諸共、爆発四散させていく。
「うわぁ……うわぁ……」
私はただただ、敵が可哀想だと思った。
いや敵だから同情する余地はないんだけど……折角待ち構えていたってのに、こんな無法な攻撃――。まぁいいや。
ドラゴンブレスの炎による破壊が収まると、目の前の全貌が目に入ってくる。
元はかなり豪華で整った内装だったのだろうが、見渡す限り焼け落ち、砕け、瓦礫まみれで焦げ臭い。
【エリミネーター】の可能性を考慮したが、床に倒れ伏していたのは、様々な武器を携えた女性達――ウィザードだ。
つまり、この場はとっくにファンタジアに攻略されていて、主だけは生かされた状態にあると言う事だが――。
何はともあれ、戦闘の主導権を握るどころか、イージー過ぎる状況を手にした私達は中へと進み、茜さんはアリスの肩に手を置き、
「ナイス! こないな滅茶苦茶な手段取れるのは、莫大な魔力を持つアリスちゃんだけや」
と労っていた。
アリスは「ま、まあね。ありがとうございます」と照れながら、ドラグナートを通常形態に戻した。
辺りを見渡し、茜さんはパンッと手を叩き、今度は私に目を向けた。
「よっしゃ! 流れは掴んだ! やけど、これでウチらが来たっちゅう事は、敵さんにも知られたわけや! こっからはスピード勝負! 鈴芽ちゃん……頼むで?」
「わ、私?」
「せや。スピードといえば鈴芽ちゃんやろ? なら――」
そこから指示された内容は滅茶苦茶で、作戦と呼ぶには酷いものだった――
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