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26話 ムーブムーブ

 2階フロアには結局なにも無かった。あったと言えば、パソコンの残骸と、アビスに侵食される前に経営されていた時期の資料が散らばっているぐらいしかない。

 不気味と言えば不気味だ。当時、侵食された時期から時が止まっているかのような、そんな不気味さだ。


 

 『廃墟マニアは、そこが良いって言う奴もいるらしいよ?』


 

 そんなの知らないし、心底今はどうでも良い。

 そんな大樹の解説を流しつつ、私達は上層へ。一つ一つしらみつぶしに捜索していては、時間だけが無駄に過ぎると茜さんが考え、プロの斥候・柳先生が持ち込んだツールを使い、床や壁などを調べる。すると――


 

「見つけましたよ。見て下さい」

 


 そう言った柳先生は、3階から4階へ繋がる非常階段入口のドアノブにライトを向けていた。

 どうやらそのライトは特殊な光を放つらしく、照らされたノブにびっしりと指紋が付着していた。


 

「この指紋は、ここ最近ついたもののようです。つまりこの先、階段に何物かの足跡があるはずです」


「さっすが柳さんね! それじゃあ」


「せやな! 各員、装備の確認!」


 

 茜さんの命令に、一同戦機に小物ツールを確認した。

 私が持ってる物は、ライトニングスパローに閃光弾3個。非常食のチョコレートバー5本にライトぐらいだ。

 準備よし!と皆が合図を茜さんに向けると、柳先生が先頭に立ち、扉を開く。

 そしてすぐに足跡を見つけ、辿る事、上層8階へ。

 到着してすぐ、異変に柳先生が気付いた。


 

「しっ!」


 

 そう指を立て、手を倒して私達を止めた。

 ライトを床に照らすと、とんでもない数の靴跡があった。

 どうやら何者かは、このフロアに居るらしいと見て、各員武器を構える。

 柳先生が扉に手を掛け――


 

「ゴーッ!」


 

 茜さんの号令と同時に、中へ2列で侵入する。

 左右を両隣の隊員同士で確認しながら「クリア!」と告げ、先を進む。

 そのまま足跡を辿っていると――

 


「何者だッ!」


 

 ライトの光に気付いた人物が声を上げ、こちらに拳銃を向けてきた。だが、私達ウィザードに銃弾は無意味だ。

 そんな人物の銃口にお構い無しに距離を詰め――


 

「止まれッ! 止まらないと――」


「八重ッ!」


「了解ッ!」


 

 発砲しようとした人物の銃を、八重さんが弓で穿った。

 奴の手から拳銃が弾き飛ばされ、一気に距離を詰めた来栖さんが棒術で制圧し、床に押さえ付けて布を口に巻いた。


 

「カバーッ!」


「クリアッ!」

 


 残りの私達は茜さんの指示で辺りを確認し、異常がないことを告げる。

 なんと手際の良いこと……。【エリミネーター】相手だけじゃなく、対人でもここまで鮮やかなんて――


 

 『さすがプロだよねぇ』


 『そんなプロの一員に、私たちも入ってるんだけどね』


 

 だからこそ、油断なんてしちゃいけない。もし気でも緩んだら……丹色さんのように犠牲者を出す可能性だってある。

 だからこそ、慎重に、且つ急いで、来栖さん達みたいな洗練された動きができるようにならなきゃ。


 

「さぁて……お話タイムや……。ほれ、おっさん。ここが何で、何をしとる場所か吐きぃ」


 

 口から布を外し、茜さんが見下しながら聞いた。

 だが男は、そんな質問に対して唾を吐き捨てた。


 

「だ、誰が吐くもんかッ! お前ら……アレだろ? 自衛隊所属のウィザード部隊……」


「せや。おっさんの言う通り、ウチらはウィザード部隊や。これ以上隠しても無駄やで? すでにここは包囲されとるさかい」


 

 嘘だ。茜さんは、この男に真実を吐かせるためにハッタリを言った。

 男がこっちの顔色を窺ってくる。下手に顔に出しては勘付かれる。そう思い、似合わない訝しげな顔で睨み返してやった。

 


 『ちょっと、これあんたのほうが得意でしょ? 変わってよ』


 『ダメダメ! 俺は今回、頭脳役でメインは鈴芽ちゃんでしょ? 今朝そう決めたじゃん』


 『でも、でも〜』


 『諦めて? ほら、集中!』


 

 私は諦めて男を睨み続けた。

 そんな私たちの顔を見て、ハッタリを信じたのか――


 

「ちっ……分かった。話すよ……」


 

 口を割り始めた。これには茜さんもニッコリだ。

 だが来栖さんの拘束は、解くどころか、より強く男を締め上げる。

 


「ぐっ!? な、なにすんだ!」


「ん〜? おっちゃん。ウチらは、あんたと優雅にお話ししに来た淑女やないねん。分かる?」


「なんだよ! ババア!」


 

 上手い!と思ったが、押し殺した。

 茜さんの取り憑いた体、沙織さんも、来栖さんも30代前半から後半。故に淑女ではなく、熟女一歩手前だ。

 だが、男の発言は来栖さんにとって地雷だったようで――

 


「い、いでででででッ!!?」


 

 かなり強く締め上げられ、背中の骨が折れて『くの字』になりそうだ。おっかない……。

 


「言葉には気をつけや? ウチらは淑女やねん。アンタがどない言おうがな?」


「わ、分かった! 分かったから、やめてくれ」


「やめて欲しいなら、早よ吐けや……ほれ、少しでも黙ると――」


 

 茜さんは来栖さんに「やれ」と目で指示を出し、男の小指を逆関節にへし折った。

 


「ん、ンンンンッ!!?」


 

 痙攣するように悶絶。男の口に、茜さんが布を押し当て、叫びを消した。

 もはやこれは拷問だ。


 

「はよ答えんと、こうなるからな。さあて……おっちゃんは、骨何本まで耐えられるやろなぁ……」


「ん!? ンンンン!!」


 

 そんな地獄のような拷問が開始され、男は一切迷うことなく、ペラペラと全てを話し始めた。

 男は平和な国で生まれ、平和に生きた、ただの男だった。

 それ故に、仲間を売る事に躊躇いはなかった。仲間より自分の命だ。

 そう、それは当たり前の発想であった。

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