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25話 ロストハコダテ

 ロストハコダテ――桜場アビスとは違い、雪のように白い何かが積もったゴーストタウンといった風貌だ。

 そんな【エリミネーター】が蔓延るこの大地にゲートを潜り入り込んだ私達は、目的の施設を目指して行軍していた。

 道中襲ってくる悪魔型と呼ばれる【エリミネーター】は、本で見たようなガーゴイル、吸血鬼、ミノタウルスにゴーレムと、なかなかにファンタジーなラインナップだった。

 桜場の虫型と違って、こっちはまだ馴染みがある見た目な分、不快感はそこまで感じ取れなかった。その代わり、怖さは割り増しなのだが……。

 


「目標のポイントまでもうすぐよ〜」

 


 来栖さんが戦闘を歩き、しんがりに茜さん、挟まれるように私達残りの隊員の陣形。

 そんな戦闘の来栖さんが振り返りながらそう話すと、各自すでに解放してある戦機を握り締めた。

 私もライトニングスパローの調子を確かめるが、まあ魔力で生んだ武器なのだから、異常もなにも無い。

 そんな私にアリスが隣まで足を進めてきた。

 


「ここまで連中とかち合うことがなかったわね」


「そうね。てっきり九条家騒動の時みたいに、ゲートに入った途端襲われたりするんじゃ無いかって思ったんだけどね」

 


 そう、襲われるどころか人っ子一人見つからないのだ。まあ、出会わない事に越したことはないんだけど。

 こうも動きがないと、逆に不安に感じるのは人間として当然だろう。


 

「きっと施設の中で守りを固めてるのよ」


「本当にそう思う?」


「た、多分……」

 


 そう言われても困る。私はファンタジアの一員でもないんだし……。

 そんな話をしていると、お兄ちゃんが後ろから声をかけてきた。

 


「おい二人とも集中! ここはもう敵地なんだから、気を緩めるんじゃないぞ」


「「は〜い」」


 

 そうこうしてる内に――

 


「見えてきたで。あれが目的の施設なんですか?」


 

 坂をアカリが登り切ると、目的のポイントを示す場所、数ある廃墟の中に混ざるように一つの大きなビルが見えた。

 一見ただの廃墟にしか見えないのだが、作戦行動用のスマホを見るに、あそこが目的地で間違いないらしい。


 

「そうみたいね〜。見た感じ外に動きはないみたいだけど、中がどうなってることやら〜」


「深夜やから、みんな寝とんとちゃいます? もう夜中の2時やし」


「ん〜。ないわね〜。いいアカリちゃん。こういった悪党はね〜、夜中に大体何かしでかす物なのよ〜。ドラマとか漫画でもよくあるでしょ〜」


「いや、これ現実やし……」

 


 本の世界らしいんだけどね。とは、来栖さんとアカリの会話に混じって言うわけにはいかない。

 とは言え、来栖さんの話に同感だ。

 親愛製薬であんなブラック労働を強いていたぐらいなのだし、あの場でも同じか、それ以上のことが行われているのは間違いないだろう。

 


「まあ、なんにせよ。これからあそこに入り込み、目標の拘束。もしくは殲滅に移りますよ〜。殲滅はあくまで最終手段。可能な限り身柄の拘束をお願いします。そのための装備は、皆さんいつでも構えられるようにしておいてくださいね〜」


 

 事前に渡された装備、拳銃型の身体拘束具。トリガーを引けば、強力なバンドが射出されて体を縛り上げることができる代物だ。

 拘束以外にも使い道があると茜さんに言われ、使用用途はオスプレイの中で聞いたが……


 

 『まあ、実践してみないと分かんないよねぇ』


 

 そう言う事。

 その拘束銃をホルダーに仕舞い、私達はそのビルの侵入経路を探る為、双眼鏡で探り、一つ窓の大きく割れた地上2階フロアに向かう事になった。


――――――――――――――――――――――――


 ビルの中、2階からエントランスを見下ろせる場所にやってきた私達。外から見た時はボロく廃墟のように見えていたのだが、中はゲートの外、ひいては親愛製薬と変わらないほどに、綺麗に整えられた内装だった。

 なにより電気が付いている。おかしい。外から見た時は明るく見えなかったはずなのに……。

 


「これは……なかなかにファンタジーやなぁ」

 


 茜さんが背後から周りを見渡しながらそう告げた。

「あれ見てみぃ」と指差した方向には石像がある。それも、なんとも悪趣味な、鳥の頭で狼のような爪、足は人間のもので、背中から大きな蝙蝠の羽を生やしたというデザイン。

 


「あれってもしかして……」


「ええ。間違いなく……動くわよね」


 

 その石像を訝しげに見ていた八重さんとアリスがそう言った。まあ、私たちも大体はそうだと思ってはいるのだが……。

 その石像は窓のほうをじっと見つめていて、どうやらこの石像が、外から見えるビルの様子をただの廃墟に見せかけているらしい。なんとなくだけど、そう思う。


 

「にしても、ウチらがここまで入り込んでも動かんっちゅうことは、あれは【エリミネーター】やないんか?」


「ん〜。どうだろうね〜。柳さんはどう思う?」


 

 ここまで黙って行動していた柳先生が口を開いた。


 

「そうですね。あれは間違いなく悪魔型に属する物であるはずですが、敵意を一切感じませんし、おそらく襲ってくることはないかと」


「あくまでカモフラージュ用ってことね〜。斥候のプロがそう言うのだから、間違いないんでしょうけど……」


「ええ。警戒するに越したことはないでしょうね」


 

 警戒。まあ当たり前よね。

 にしても【エリミネーター】をそういう目的で運用できるって事は――


 

 『催眠の効果が強くなってる、もしくは九条桜の研究が、こんなところで生かされてるかのどっちかだろうね』


 『だよね。もしかしたら、ケリー達の催眠って【エリミネーター】を従わせるための試作段階だったのかもね』


 

 そう考えつつ警戒しつつ、私達は2階フロアから捜索を開始することになった。

 

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