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21話 脱出

「お兄ちゃんアリス達が動いたわよ!」



 私はアカリの胸に取り付けたカメラの映像から目の前にいる研究員の持つ資料を回収しようと決めたようだが、死塚を前に可能なのか疑問だ。

 一応いつでも動けるようににいちゃんに一言だけ伝えようとしたのだが――



「鈴。こっちも動きありだぜ」


「えっ!? 嘘でしょ!」



 こんな同じタイミングで。そう思いしばし画面から離れてお兄ちゃんの隣へ。

 双眼鏡を渡されてお兄ちゃんが指差す方向へ視線を向けると一台の高級車が親愛製薬本社の前に停車した。

 その中には、テレビで連日報道されていて見間違うはずのない人物ファンタジア当主――厳重院昭弘げんじゅういんあきひろが乗っていた。



「ちょっとなんであいつが!」


「そりゃ決まってるだろ? ここがあいつらにとって重要な施設だってことだよ!」



 とはいえこのタイミングで?

 お兄ちゃんは急ぎ、来栖さん達に一報入れる。

 厳重院昭弘が社内に入っていくのを見届けて私は急いでモニターの前へ戻る。

 そこにはアリスが研究員を呼び寄せて――



 『すみません。この研究ってどう言ったものなんでしょうか? 今回のように新人を連れてくる際、毎回持ち上げながらは面倒なので、如何に素晴らしい研究をする部署か刷り込ませながら自分からやる気を出して連れて来たいので少しでいいから教えていただけるとありがたいのですが……』



 と聞いた。一歩間違えれば速攻でアウトな発言だ。もし警備員にも詳しい話をしていたらこの質問は成立しない。

 だが――



 『ふむ。確かにそうですね。 さっきの男の誘導にもかなりの時間を要したようですし。いいでしょう。では1から説明してあげましょうこれはですね――』



 どうやら、詳しい説明はされていないらしく、研究員の男も得意げに説明し始めた。

 自尊心が高い男なのだろう。自分たちの成果を誰かに認められたいのか聞いてもないことまでペラペラと話し始めた。

 その話はだんだん熱を帯びていき、身振りが大きくなっていき、机の上に資料を置いた。

 これにはしめた! とアカリが死塚と研究員の見てない好きに机に近づいていく。

 そして資料を手に取った。

 それをチラリと確認したアリスが「なるほど。そういう内容だったのですね」とキリのいいところで話を終わらせて部屋から出ようとするが……。


 

 『待ちなさい』



 死塚の声が静かな部屋に響く。

 流石にバレたか!? そう思われモニター越しに見ていた私はお兄ちゃんに言った。



「二人が動いた! でも脱出が難しそうだからちょっと援護に行ってくる!」


「お、おい! 向こうには死塚がいたんだろ? 一人で援護って無理な話なんじゃ……」


「大丈夫。なにも正面切って戦うわけじゃないわ。地下から地上フロアまでは距離があるし移動するにもあのエレベーターを使う必要がある。一瞬だけ。一瞬だけ死塚の気を逸らすことができればきっと二人ならなんとか脱出してくれるはず」



 そう言って私は離れた微雨の屋上で魔力を込め始める。そして手を前に突き出して――



「戦機解放!」



 ライトニングスパローを召喚し引き抜く。

 恐らくこれで死塚に私の魔力を感知されたはず。だけどまだ足りない。



「お、おい!」


「お兄ちゃんはすぐにここから退避してて! たぶんだけど死塚のやつ私の魔力を感知してここを目指して飛んでくるはず!」



 そう言い残して、映像データの記録されたUSBメモリをお兄ちゃんに投げ渡す。



「本当に大丈夫なんだな?」

 

「もちろんよ。それにこれは私にしかできない打ってつけの仕事なんだから!」


「分かった。じゃあまた基地で!」



 お兄ちゃんもこの場から走り出した。

 私は離れた場所にある親愛製薬のビル屋上を目指してビルに飛び移るように飛んで移動する。

 わざと魔力を振り撒いて、敵が来たと錯覚させるように。

 そしてあっという間に目的地に到着した時、私は――



「いくわよっ!!」



 全力でビルの屋上から下層に向かってレイピアを穿つ。

 すると屋上のコンクリートが砕け中までフロアの全貌が露わになる。

 ウゥゥゥゥゥゥン!!

 予想通りサイレンが鳴り響く。

 こんな如何にも怪しげな研究をしてる会社だ。侵入者が入り込めば何かしらの反応はあると考えてはいた。

 さて。私の役目はおしまいだけど。死塚の反応はどうかしら?


――――――――――――――――――――――――


「な、なんですか!? なんなんですかこれ!」



 ドシンと一際大きな衝撃の後にサイレンが鳴り響く。

 研究員が頭を護ように抑えて叫んでいたが、死塚が天井を見上げてニヤリと笑みをこぼした。



「どうやら侵入者が現れたみたいですね。ふふ。それにこの魔力はアルカトラズで出会った物と同じ……」



 他人の魔力を感知している!?

 そうアリスとアカリは驚いたが、この状況は恐らく鈴芽か幸成による陽動だろう。

 そう思い二人は奪い取った装備の中からあるものを一つ握りしめる。



「侵入者ですか!? は、早くなんとかしなければ!」


「安心なさい。侵入者はどうやら屋上から入り込んだみたいです。まぁ……一人とは限りませんが」


「えっ!?」



 やはり気付かれた!

 警備員に変装していたアリスとアカリに死塚が細めた目を向ける。

 その手には黒い泥水のような魔力体が胎動し始め攻撃しようとしていた。



「行くわよ!」


「分かっとるって!」



 こうなればと思いアカリは閃光弾を死塚目掛けて投げ捨てた。それは一際激しく輝きを放ちこの部屋を照らした。



「あああああ!! 目がっ! 目がァァ!!」



 研究員の叫び、それを皮切りに二人は部屋を出てエレベーターまで走る。

 だが――



「この程度、来ると分かっていれば対処も容易!」



 腕で目を守り完全に視界を奪うことはできなかった。死塚は二人を追うように部屋を出たのだが――



「そう来ると思ってたわよっ! ドラゴンブレス!!」



 その一瞬でアリスは戦機を引き抜いていた。

 死塚は予想外の反撃に面白いと思った。

 反撃するなら腰に構えたライフルもしくはグレネードでやってくると思ったからだ。

 だが現実にとられた手段は過剰とすら言えるほどのもの。

 アリスは大剣から莫大な魔力を放出して、白い通路の壁をガリガリと削りながら薙ぎ払う。



「考えましたねっ!」



 死塚は足を止める。

 反撃し、撃退することは容易い。だけど守らなければいけなかった。この場にはイヴリースの研究施設や資源、有能な人材が集められていた。

 だからこそ護衛でここに配置されていたからこそ、そう動かざるを得ない。

 死塚は黒い魔力体を盾に形を変えてドラゴンブレスの魔力出力を防御する!

 その膨大な魔力は死塚の防御ごと振り抜いた!



「ふっとべぇぇぇ!!!」



 まるでボールをバットで打ち払うように死塚を切り飛ばした。

 フロアもドラゴンブレスの攻撃を受けて砕けて通路に瓦礫が落ちてくる。



「アリス! 早よ来んかい!」



 奥ではアカリがエレベーターを開いて待機していた。

 普通この状況ならエレベーターは停止するはずだが、このフロアから地上に出る唯一の連絡路故に稼働していた。

 死塚の姿が離れていることを確認してアリスは駆け出しエレベーターに乗り込み二人は地上へ。

 そんな様子を瓦礫から抜け出した死塚は見ていた。



「一本取られましたね」



 舐めていたと言えば舐めていた。

 どんな手段で敵がやって来たとしても実力で押し切るつもりでいた。

 だが子供だけで、あんな馬鹿らしい侵入で、変装までしてくるとは考えてもいなかった。



「ひ、ひえぇぇぇ」



 この場ですぐに追って始末するのも簡単だが、この研究員たちを発哺ていくことだけは出来ない。アルカトラズから脱獄させたファンタジアからは何があっても命令には従ってもらうと指示されていたからだ。

 別に聞き入れる必要もないのだが、その方が後々強者と愛見える機会も増えそうだと呑んでやった。

 まあおかげで今回のような失敗に繋がったのだけど。



「なんて説明しましょうか。ふふふ」



 死塚は面白くなってきたと。そう思い扉がしまったエレベータを眺めていた。

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