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19話 証拠集め

 警備隊から奪ったライフルを構えて本物のように装いながらも部屋の中の音に集中していたが、どうやら中ではイヴリース実験を行うための設備が揃っていることが死塚と研究員らしい男の話し声から捉えることができ、録音することにも成功した。

 


 とはいえ、この音声を証拠として提出するには不十分とも言える。今のご時世、声なんてAIでいくらでも捏造できるからだ。

 こうなると他にも証拠、映像か写真……。それと何か物的証拠が欲しいところ。


 

『どないする? このままじゃジリ貧やで』

 


 アカリがハンドサインでアリスに聞いてきた。

 確かにこのままここでじっとしていても事態は好転しない。だけど無策に飛び込むのは自殺行為だ。

 相手はあの殺人鬼であり最強のウィザードなのだから……。


 

『だとしてもここは慎重に動く必要があるわ。なにか手を考えないと……』


 

 ハンドサインでそう返事していると離れた場所――部屋の一室の扉が開いて中から警備員とあの連れて行かれたはずの先輩社員がこっちに向かってくるのが見えた。

 アリス達は急ぎ扉の前、両端に立ってここを警備している風を装う。

 目の前に先輩社員と警備員がやって来て、二人は「お疲れ様です!」と声をできる限り低くして挨拶した。


 

「お疲れ様。異常は?」


「「特にありません!」」


 

 胸を張ってそう答える二人。

 警備に気づかれないように目だけを先輩社員の方へ向ける。そこには力無く落ち込んだ様子の先輩の姿が。

 何かされた? そう思ったが服装も体も整っていて綺麗な状態だ。

 恐らく向こうの部屋で何か嫌な話を聞かされたに違いない。

 善良な社員を闇の世界に引き摺り込もうとするなんて……許せない奴ら。

 


「ん? こいつが気になるのか?」


「い、いえ!?」


 

 ジロジロ見すぎていたのか、警備がアリスの様子に気づいて顔を覗き込むように聞いてきた。

 あ、あまり覗かないでー。バレちゃう……バレちゃうから〜。

 ススス〜っとさりげなく首を動かして警備と目を合わせないようにしたアリス。

 隣のアカリは直立状態であったが、アリスの状況に心境穏やかではなく冷や汗がツーッと垂れてしまう。


 

「ん〜。まあいい。お前達にも紹介しよう。こちら今日からここに勤めることになった来宮千歳君だ」


 

 先輩はそんな名前だったんだ。

 初めて会った時に自分たちの自己紹介のみで先輩の紹介を聞き逃してたからこうして知ったのは複雑だ。


 

「ほらお前も挨拶したらどうだ来宮」


 

 ドンと警備が来宮先輩を肘で小突いた。先輩はその衝撃を受けるまま体勢を崩して床に倒れ込む。


 

「おいおい。なにをそう落ち込んでるんだ……ほら。立て」


 

 呆れたように警備が先輩の脇から手を通して立たせようとした。先輩はされるがままに立ち上がり、小さく……消えてしまいそうなほどか細い声で「よろしく……」と挨拶してくれた。

 上の階で会った時の笑顔はそこにはない。昇進をあんなに明るく話してたっていうのにこんな暗い顔を……。

 アリスはその様子からこの会社に対して怒りが込み上げてきた。

 だがここでその怒りをぶつける訳にはいかない。

 我慢し飲み込み今できることに集中する。


 

「その人はここでなにを?」


「ん? こことは……ああ! 担当か。詳しくは聞かされていないが来宮君はこの実験棟での強化薬の増産を担当することになったんだ」


 

 聞いてみるとすんなり答えてくれるものね〜。

 そう思いながらアリスはできるだけ怪しまれない範囲で質問しようと考えた。


 

「強化薬ですか。それは確か話で少し聞いただけですがあの?」


 

 あのとは言ったがどれのことだか分からない。鎌かけだ。知ってる風を装って情報を聞き出す。まあこの警備が知ってる時点で他の奴らも知ってる情報だろう。そう考えて、確認を外して聞き出すことにしてみたのだが果たして――


 

「ああ。ファンタジアに届けるための薬だな。聞いて驚け? どうやら以前の九条家の開発した試験薬よりも効果は上昇。それに精神維持も安定させた代物がもうすぐ完成するんだぞ〜」


「へ〜。凄いですね〜」


 

 こいつ聞けばなんでもペラペラ話すじゃないか。警備としてそれはどうなの? と思うが今の自分たちにとってはとてもありがたいザルさだ。


 

「でもそんな偉大な成果を上げる手前、なんで来宮さんはそこまで元気がないので?」


「んん?」


 

 おっと。これは流石に勘付かれたか?

 警備の疑うような声に冷え上がるがアリスは毅然として姿勢を正してみせた。


 

「ん〜。どうやらお前もここに長く勤めたせいで感覚が狂ってしまったようだな。家族を人質に取られてるんだ。こうなるのも仕方ないだろう? こうして働いている間にも愛する妻と娘を監視されてるって考えてもみろ。心境穏やかじゃなく今すぐ発狂しそうになるだろ? 今のこいつはそれだ」

 


 鈴芽が言ってた通りの内容ね。アリスはチラリとアカリの方へ目線を向けると、アカリは胸を指でトントンと叩きながら小さく頷いた。

 “録音はバッチリできた”

 そう言いたげな感じね。

 となるとあとは当初の目的、部屋の中の様子の写真か映像、それと物的証拠だ。

 どうにかして中に入りたいのだけど……何か良い手は――


 

「ほらシャキッとせんか」


「う……うぅ……」


 

 警備の男が来宮先輩を抱え上げようとするが脱力しまた床に沈み込んでいく。よっぽど怖い思いをしたのだろう……。いや待って。これだ!

 


「お手伝いしましょうか?」


「お。頼めるか?」


 

 そうだ。来宮先輩には悪いけど、こうして持ち上げて一緒に部屋に入れば怪されることはないはず。

 アリスの言葉を聞いたアカリもその意図を汲み取り――


 

「自分も手伝います〜」


「おっ。助かった。三人いればこんな男簡単に持ち上げることが出来るだろうよ」

 


 そうしてアリス達は脱力した来宮先輩の体を持ち上げ、抱えて共に部屋の中へ足を踏み入れることになった。

 そうして中に入って真っ先に目に入ったのは――

 

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