17話 隠しフロア
エレベーターに乗り込んだアリスとアカリの二人。
アカリがパネルインカムから聞こえる鈴芽の指示通りに操作すると――
「うお! ほんまに動き出したで」
エレベーターは下へ向かって稼働し始めた。
今いる場所は1階。そこから下に向かうということは――
「この会社。フロアマップに載ってない地下があったってことね」
「みたいやな〜」
それにただ一階分下降するにはあまりにも長い。
恐らく深くに隠されたフロアがあるってことだろう。
「目的の場所まではまだ掛かりそうね」
「せやな〜。まあこれで隠してる秘密に近づく事ができたっちゅうわけやし結果オーライやな」
「ええ。でも――」
それはここから降りたら完全に敵地であることを証明している。
もしこのエレベーターの稼働が相手側に知られていたりでもしたら?
そう思うとこの扉が開いた瞬間に戦闘になる可能性も0ではない。
それはアカリも分かっていたようで。
「いつでも動けるように心の準備はしとったほうがええやんな」
「そうね。っと着いたみたい」
ポーン。
そう音が鳴り響くと同時、いよいよと扉が開いていく。
開いた先、ごくりと息を飲みながら二人は見つめるが――
「ほっ。敵さん。どうやらウチらの侵入に気付いてないみたいや」
そこには敵の姿どころか人の姿すらなかった。
地下という割には綺麗な白を基調とした通路が真っ直ぐ伸びていた。
余計なフロアは必要ないのか奥に見える小さな扉が一つだけ。
エレベーターからその扉までかなりの距離があるが……。
「遠いわね」
「これってあれちゃう? 映画でよくあるあの……」
「ごめん。私日本の映画あまり見ないから……」
「いやいや。洋画でよくあるやん。スパイ物のさ? 通路の奥からレーザーが迫ってきて体を切断するってアレやん」
「あー。それなら私も見たことあるわ。って流石に映画の見過ぎよ。そんなのこんな場所にあるわけが――」
と言ってアリスは通路の天井に目を向けると、小さな機械が稼働もせず静かに佇んでいるのが見えた。
今アカリが話したことはあながち外れてもいないかもしれない。
間違いなく何かはある。そう思わせた。
「こっからはより慎重に動いたほうが良さげやな」
「違いないわね。行きましょう」
とは言っても真っ直ぐ進むだけ。エレベーターから新手が降りてきても、目の前の部屋から誰かが出てきても一巻の終わり。
そう、隠れるスペースすらないのだから慎重も何もない。
ただ迅速に向こう側に辿り着く必要があるぐらいだ。
アリス達はそそくさと通路を進んで扉の前へ辿り着く。
途中敵が姿を現すと警戒していたがそんなことはなくかなり安心できた。
そして鉄の扉に二人は耳を当てて中の音を探るのだが――
「まあ分かっとったことやけど」
「聞こえないわねぇ」
薄い扉とはわけが違うらしい。見たまんまだが、かなりの分厚さ。
どうやって開けるのかドアノブも何もない。あるのは指紋認証のパネルのみ。
「はい詰んだ。詰んでもた。ウチらこっから先に進めんやんけ」
「まあ待ちなさいよ。鈴? 私たちの状況見えてる?」
『うん。見えてるわよ? バッチしね』
インカムに手を当てると鈴芽の声が響いた。どうやら地下という割に電波は外にも届いているようだ。
「ここから先に行くためにはこの指紋認証を越えなきゃダメみたいなんだけど」
『カメラをそのパネルに向けてくれる?』
「おっけー」
アリスがアカリを促してパネルをカメラに収めるように言った。
アカリはパネルの前に立ちカメラをパネルに向ける。
「どや? なんか分かったか?」
『待ってね。う〜ん……』
カメラに映されたパネルを見てもやはり指紋認証タイプの機械だとしか分からない。
こうなると中に入るためにはパネルをハッキングするか、関係者に開けてもらうかしかない。
ハッキング――私は苦手だけど。
『あんたはどう?』
ビルの上で機材に表示された映像を見ながら私は大樹に聞いてみる事にした。
『ごめん。流石に映画での知識はあるけどガチスパイ知識はないよ? 俺。ただの会社員だったわけだしね』
だけど、なんとも頼りない大樹だこと。っと大樹のことを言っても私だって同じだ。
ハッキング知識? あるわけないでしょ。
「どうした、何か困りごとか?」
悩んでいたところにお兄ちゃんがやって来た。
どうやら見張りをしても大した動きがないからこっちにやって来て手伝う事にしたようだ。
そんなお兄ちゃんは画面に表示された指紋認証パネルを見て――
「あー。これは無理だね。俺たちの専門外だ」
「だよねー。ならこっからどうすれば――」
「あらごとになる可能性はあるけど手段がないってわけでもないぜ?」
マジっすか。お兄ちゃんはどうやらこの場において最適な策を持ってるらしい。
「それってどんな?」
「簡単さ〜。開けて貰えばいいんだよ」
「開けてもらうって……それってアリス達が見つかってしまう事が前提ってことじゃない!?」
その案には絶対乗れない。そう強く反対しようとしたが、お兄ちゃんは「まあ待てよ」と私の否定をいさめて、その秘策を話し始めるのだが――
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