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5話 緩んだ空気の中で引き締まる話

「私達が掴んだ情報ですと、今のファンタジアはまだ万全とは言えず行動に移せないようなんです」


「それはどういうことです?」


 

 自衛隊の情報部がファンタジアの動きを掴んだのは事実らしく。まだ万全じゃないっていうことに私たちは首を傾げた。最悪の囚人の確保、全国に向けての宣戦布告。

 半ば洗脳のような党員の増員。ここまでやっておいてまだ万全じゃないって? 十分整ってるっぽいけど。


 

「あなた方の疑問もよくわかりますよ。ここまで前準備が整っていながらもまだ十分でない理由。それは実績です」


「実績っていうと、アビス解放したってぐらいの?」


「アリスさんの言う通りそうです。現政権はアビス解放政策。その実績は私とアカリさん。そして最近ではタスクフォース0によるものも含めて今年だけで2件も実績を上げています。対してファンタジアは大口を叩いただけでこれといった成果を上げているわけではありません」


「せやなぁ。アビスと共生するっちゅう意味での実績はこれと言ってないしな〜」


 

 確かにアカリの言う通りね。奴らがその実績を出してたのなら、戦闘学生である私たちも知っていてもおかしくはないはず。にも関わらず教科書にも先生達からの話にもそれらしい物は一切出てこなかった。

 


「ってことはですよ? 今のファンタジアが行動を起こすためにはまず実績を作る必要がある状態ってことなんですよね?」


「早い話がその通りです。皆さんはイヴリース計画をご存知ですよね?」


「それってお婆様が研究してたあの?」


 

 忘れるはずもない桜場アビス内で九条桜が秘密裏に研究してた人体実験。そういえばケリーが言ってたわね。

 九条家の研究に資金を提供してたって。


 

「そのイヴリース計画ですが、どうやら九条家だけでなく真愛製薬会社にもファンタジアからの多額の資金提供が認められましてね。恐らく、同時並行で研究を行なっていたみたいなんですよ」


「マジかいな。真愛製薬って言ったらこの国でもめっちゃ有名な会社やないか。CMもバンバン出てる――」


「あーあの会社ね? 医療品だけじゃなくて美容アイテムも展開してるあの!」


 

 どうやらアリスでも知ってるぐらい有名な会社らしい。

 私もその会社の商品を買った事はある。頭痛薬に風邪薬……。とりあえずあの会社の物を買っておけば良いかってぐらいCM出てるもんね。

 


「でもそれが実績作りとなんの関係が? ただ実験してるだけですよね?」


「ウチらにバレてるわけやけどな」


 

 それはそうなんだけどね。でもあの会社が営業停止を受けたとか何かしらのニュースが流れてなかったはず。

 


「確かにその情報を掴んだのですぐにでも向かうべきなんでしょうが、事は国家に関わる問題です。慎重に当たらなければいけません」


「そのとおりね。魅力的な餌場を見つけたのに一回で終わらせるのは勿体無いもの。つまり泳がせておいて奴らの尻尾を掴むって事でしょう?」


「流石アリスさんその通りです。私たちの調査で知った事ですが、イヴリース計画とは薬を介して男性でも魔力を付与させたり、元から魔力が備わっているウィザードを強化するみたいですね」


「はっは〜ん。ウチでも分かってきたで? 実績っちゅうんは、そんな夢みたいなお薬を開発して世間に公表するっちゅうこっちゃな?」


 

 はい。と頷く沙織さん。全人類が魔力を持つ。確かに魅力的な事だとは思う。

 普通は女性が魔力を持って男性は持たないのが当たり前。だからこそどうしても女性優位になっちゃってる時代でもあるし、いくら怪しいと分かっている政党だとしてもそんな実績を作られたら一定数の評価は得られちゃうわよね。

 


 だとしても私たちはあのアビス内で見た実験を正しいものとは考えたくはない。

 【エリミネーター】の肉体を素材にしてコアとの融合。

 それとは別の製造方法だとしても【エリミネーター】に関係してるのは間違いないはず。

 アビスとの共生……。奴らの目指す世界はアビスから湧いて出るそんな化け物を資源として運用する世界ってことね。

 


「ですので、私たちに与えられた任務は然るべきタイミングでの真愛製薬への潜入、そして現場を抑える事です」


「そのタイミングってつまり――」


「鈴芽さんの予想通りだと思いますよ?」


「なるほど……。奏凍死塚が現場に現れるタイミングって事ですね」

 


 コクリと沙織さんが頷いたのを最後にこの話は区切りとなった。こんな話をこんな猫カフェというのほほんとした場所で聞く事になるとは思わなかった。

 でもここに客はおろか、店員も猫好きの客と談笑するぐらいには興味は猫に向いているし、今の話を誰も聞いていないはず。

 逆に内緒話をするにはもってこいの場所だった?

 もしかしたら沙織さんと茜さんはそれを見越してここに!? だったらここに来る予定じゃなかったとしても私たちは先生からここに呼びつけられる所だったのかも――


 

「シャャアアアアアッ!!」


「そ、そんなに怒らないでぇぇ……。うぅ……。どうして私は動物に懐かれないのでしょう……」


 

 あ……。多分違うわね。単にここに来たいから来たんだわきっと。

 


『悲しいかな茜と違って沙織さんは猫には嫌われる体質――いや動物って言ってるあたり犬にも嫌われてるみたいだね〜』

 


 あっ沙織さん。猫に引っ掻かれた。

 涙目で手を抑えて威嚇する猫を見てる先生が可哀想になってきたわよ。

 対してアリスとアカリの方は――


 

「お〜。よしよし! ここがええんか〜? ええのんか〜?」


「猫……いいにお〜い」

 


 腹をガッシガシと撫でるアカリと、丸まった猫の背中に顔を埋めて吸っているアリス。

 明らか嫌われるような行動をしてるってのに猫は満足そうに2人の奇行を受け入れてるんだけど。

 沙織さんはあんな事してないってのに……。猫、本当に気まぐれだわ……。

 


 かくいう私の膝の上にも二匹の猫が横になっていたが、先生からはテーブルの陰になっていて見えなくて良かった。これ以上先生に追い討ちをかけるのは申し訳ないものね。

 


『鈴芽ちゃん! 鈴芽ちゃん! 話が終わったんでしょ! なら俺! 俺と変わって! 猫と触れ合わせて!』


『はいはい。分かったからそう焦らないの』


 

 さっきまでの緊迫した話から一気に空気が変わったことに呆れながらも、私は急かす大樹と肉体を変わってあげた。

 結局、最後まで沙織さんのところに猫が来ることはなく。威嚇され続けるのみだったのは本当に可哀想だった。

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