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再召喚された三人は、世界を救わない  作者: 藤山理想
群雄割拠編

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5#因縁?

俺たちは一週間とちょっとの時間をかけて、イトューヒ大陸とルーンメルカトーレ大陸を繋ぐ架け橋へと辿り着いた。


道中、人通りの少なそうな場所を見つけては魔力圧に耐える特訓を重ね、移動中もちょこちょこと手を繋ぎ魔力操作の感覚を研ぎ澄ませていた。


そのため、やはりイトューヒ王国へ向かった時よりは随分と時間がかかってしまった。


ただ、毎日野営ばかりだと俺たちのビール欲が爆発してしまうため、一日野営したら次の日は街の宿に泊まるという交互のペースを守っていたのも、到着が遅れた大きな原因かもしれない。


魔力圧への耐性訓練の方はまだまだ先が長そうだったが、魔力操作のコントロールに関してはやはり筋が良かった。


ただ繋いだ手とは違い、大剣へと魔力を流し込んで溜める作業には難航していた。


貰ったばかりの新しい大剣だということもあるだろうが、自分の手とは感覚が違いすぎ、なかなか思うようにいかないようだ。


「そんなに落ち込むことないぞ?というか、上達のスピードとしてはかなり早い方だ」


馬車の手綱を握りながら、俺は荷台で大剣を固く握りしめ、ガックリと肩を落としているロゼに向かって声をかけた。


「……おっさんの手なら、もうちょい上手くいくんだけどな……」


そうポツリと呟きながらも、ロゼは大剣に魔力を込める感覚を掴もうと、何度も何度も一人で愚直に訓練を繰り返していた。


俺は架け橋の手前に設置された検問所で馬車を停めた。


御者台から荷台を振り返ると、相変わらずブツブツと何やら呟きながら大剣の柄を握りしめているロゼの姿が見える。


特訓の邪魔をしちゃ悪いなと思い、ロゼには声を掛けず馬車を降りることにした。


対応に出てきた感じのいい衛兵へ、出発の際にリアから持たされていた、なにやらよく分からない金のプレートを提示してみる。


すると、プレートを確認した衛兵の顔つきが一変した。


「ト、トール様ですね!ミリアーナ王女殿下から話は伺っております!通行料は入りませんお通り下さい!」


衛兵は急にビシッと美しい姿勢で敬礼を掲げてきた。


……凄いな、このプレートの効果。


俺は衛兵の急激な変わりように内心少し引きつつも、軽くお辞儀を返してから御者台へと乗り込んだ。


ゆっくりと馬車を走らせ、架け橋へと進んでいく。


ここを通るのは二回目になるが、視界いっぱいに広がる広大な海は、何度見ても息をのむほどの絶景だった。


「ロゼー……海綺麗だぞー……」


俺はちらりと後ろを振り返ってみたものの、ロゼは相変わらず真剣な眼差しで大剣とにらめっこを続けている。


ちょっと根を詰めすぎているかもしれないな……


俺は再び前を向き直し、海の上に伸びる一本道をのんびりと走らせた。


少し走らせると、俺は異変に気がついた。


「……おっさん」


荷台からロゼがひょっこりと顔を覗かせた。


どうやらロゼも同じ違和感を察知したようだ。


「……橋の向こう……メルカトーレ大陸になにかいる」


「なんだろうな……」


向こう側から、かすかに漂ってくる魔力。


まだ距離がありすぎて、魔力を発している本体の姿は見えない。


俺たちが違和感を感じているのは、かすかな魔力量からではなかった。


魔力探知を張り巡らせていれば、少し遠くても微かな魔力くらいはわかる。


魔力探知をし(・)て(・)い(・)な(・)い(・)のに、遠くからでも肌に触れる魔力。


それが既に異常なのだ。


「まじでなんだこれ……人間か?」


「ロゼ……特訓で疲れてるかもしれないが、いつでも戦えるよう構えておけ」


「わかった」


ロゼは荷台から御者台へと身軽に乗り移ると、背負っていた大剣の柄に手を伸ばし、鋭い眼差しで橋の先をじっと見据えた。


ルーンメルカトーレ大陸に接近するにつれて、その魔力はより一層鮮明になっていった。


検問所が目前に迫る頃には、その膨大な魔力がピリピリと肌を刺すような重圧となって押し寄せてくる。


検問所で馬車を停め、俺は再びリアから渡されていた金のプレートを衛兵に示して通過の許可を得た。


この異様な重圧は、検問所の衛兵たちが発しているものではない。


もう少し先。


おそらく、この街道沿いのすぐ近くにその圧倒的な魔力を放っている何者かが佇んでいる。


俺は警戒を最大級に引き上げながら、静かに馬車を前進させた。


周囲を覆う魔力量は、進むごとにどんどん高くなっていく。


隣に座るロゼが固く握りしめる大剣の柄から、ギチ…と軋む音が聞こえてきた。


街道の真ん中に、男が一人ぽつんと立っていた。


肩まで届く長髪にパーマをかけ、肌は浅黒い。その背中には、大きな体躯をしても隠しきれないほど巨大なハンマーを抱えている。


間違いなく、あいつがこの異様な魔力量を全身から放ち続けている張本人だ。


「止まれや!」


男の低く威圧的な声が、街道に重々しく響き渡った。


俺はゆっくりと馬車を停め、御者台から地に降り立った。


ロゼも同じように馬車から降り、俺のすぐ後ろに控える。


男はチラリと俺の腰に差した二振りの刀に目をやると、不敵な笑みを口元に浮かべた。


「……その刀。お前がトールだな」


「そうだが……お前、誰だ?」


俺が問いかけると、男の全身から発せられる魔力圧がさらに一段と跳ね上がった。


「俺はトドロキ・ゴウ!……じゃない、ゴウ・トドロキだ!悪いが、ちょっと相手してくれや」


ゴウと名乗った男は、背中に背負っていた巨大なハンマーを、まるで小枝でも扱うかのように軽々と片手で前方へと振りかざした。


「……別に俺には、お前と戦う理由が無いんだがな」


「俺には二つある」


「二つ?」


「お前、過去に魔王倒してんだろ?」


……この男、俺のことを知っているのか。


「お前を余裕で倒せりゃ、今の魔王も余裕で倒せるってことだろ?まぁ、予行練習ってとこだ」


「なるほど……もう一個はなんだ?」


「名前が気に入らねぇ!」


男が怒鳴ると同時に、その全身からバチバチッと激しい雷光のような魔力が溢れ出した。


「……いや、意味が分からん」


「北欧神話のトールってよ……雷……そしてハンマー……!」


男は手にした巨大なハンマーを思い切り振り上げると、勢いよく地面へと叩き付けた。


ズドンと凄まじい衝撃が走り、足元の地面が大きく揺れる。


まるで小さな地震でも起こったかのように。


「それなら俺の方がトールだろ!!」


隣に立つロゼは、心の底から訳が分からないといった不思議そうな顔で俺に耳打ちしてきた。


「……こいつ、いったいなんの話してんだ?」


「……お前、もしかして……」


俺は目の前で憤慨するゴウをじっと見据え、言葉を漏らした。


「俺と同じ召喚者か?」


「どうでもいいだろ!今から俺にブチのめされるんだからよ!」


ゴウは巨大なハンマーを構え直した。その全身から立ち上る魔力が、さらに密度を増していく。


「……おっさん……私も戦う」


ロゼは背中の大剣を引き抜くと、前傾姿勢をとって構えた。


「いや、ロゼ、ちょっと待ってくれ」


「なんだよ」


「たぶんあいつ、俺よりも魔力量が多い」


ロゼは大剣を構えたまま、黙って俺の言葉に耳を傾けている。


「自分より多い魔力量を持った奴との戦い方……そして、天魔無碍(てんまむげ)流の戦い方を見せる」


「……天魔無碍(てんまむげ)流の戦い方?」


「そこから強くなるヒントを掴んでくれ」


「……わかった……」


「お喋りは終わったか?二人まとめてくるのか?」


ゴウはハンマーを低く構え、いつでも飛び出せる姿勢を取る。


「悪いな、待たせた。俺一人で戦う。お前程度ならそれで十分だろ」


俺は全身の魔力を解放した。


大気中で、ゴウの撒き散らす雷の魔力と、俺の解き放った聖と魔の魔力が激しくぶつかり合い、バチバチと火花を散らすように輝く。


「……そんなもんか?悪いけど、手加減はしねぇからな」


ゴウはそう言い放つと、全身から溢れ出る雷光と魔力をさらに高めていった。


「全力で来いよ。後で言い訳されると癪だ」


俺は腰の「シルラ」と「カルラ」を滑らかに抜き放ち、静かに二刀を構えた。


「魔王戦のウォーミングアップだ」

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