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再召喚された三人は、世界を救わない  作者: 藤山理想
再起動編

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36/89

36#飛龍

リアから飛龍の巣があるという場所を聞き出し、俺とロゼッタは二人でその目的地へと向かっていた。


教えられた場所は街道から少し逸れた先にある峡谷だ。


歩いて1時間ほどの距離だというので、馬車は街の宿に預けてきた。

もし飛龍に襲われでもすれば、馬が食われて終わりだ。


問題はリアをどうするかという問題だった。


戦闘能力の低い彼女を連れていけば足手まといになり、戦いに集中できない。


かといって、見知らぬ街で一人にするのは護衛の任務放棄に等しい。


イトューヒ王国へ救援を求めようにも、馬車を飛ばして丸一日以上かかる距離では現実的ではない。


結局、俺たちはリアを宿の部屋に待機させるという苦渋の決断を下した。


「もし、明日になっても俺たちが戻らなかったら……申し訳ないが、この街の冒険者ギルドで別の護衛を雇ってくれ」


そう告げると、リアは唇を噛み締め、何かをこらえるように辛そうな顔をした。


それでも最後には静かに「……分かりました」と頷き、部屋へと入っていく。


彼女の後ろ姿を見届け、そして今俺達は峡谷へも向かっていた。


「飛龍って、どんなやつなんだ?」


俺の問いに、ロゼッタは顎に手を当てて思案顔になった。


「んー……私も実際に討伐したことはないし、噂で聞く程度だが……」


彼女は一つ息を吐くと、記憶を整理するように語り始めた。


「空を飛び回るから、とにかく捕らえにくい。さらに厄介なのはブレスだな。動きは素早く、鱗は鋼のように硬い……端的に言えば、弱点らしい弱点なんて存在しない、ってのが定説だ」


「なるほど。さすがはSランク相当というわけか」


俺は眉をひそめた。


空を飛ばれ、上空からブレスを連発されれば、手出しができなくなる。

防戦一方でこちらが疲弊するのは目に見えていた。


「ちなみに、おっさんは……龍と戦ったことあるのか?」


ロゼッタが茶化すような響きを一切含まず、真っ直ぐな視線で聞いてくる。


「あるぞ」


「……その時は、どうやって倒したんだ?」


「あまり飛ばないタイプだったし、トドメを刺したのは俺の仲間だ。あまり参考にはならないな……」


俺たちが歩む峡谷への道は、徐々に険しさを増していく。


それきり会話は途切れた。

峡谷に二人の足音だけが響く。


「……その龍には、おっさんの刀は効いたのか?」


「効いたが……鱗が硬いせいでな。一撃で首を落とすまではいかなかった。同じくらいの硬さの鱗だとしたら、おそらく三撃は必要だろう」


俺の答えを聞いたロゼッタは、深く頷きながら険しい岩肌を見上げた。


「俺の刀で切り刻むより、ロゼッタの剣で確実に致命傷を叩き込む方が勝算はありそうだ」


俺の言葉に、ロゼッタは苦笑して肩をすくめた。


「素早い飛龍相手に、私がそんな都合よく一撃をねじ込めるか……まあ、なかなか難易度の高い仕事になりそうだな」


「なんとか俺が隙を作る。ロゼッタは、その一瞬にすべてを賭けてくれ」


「……分かった」


彼女は短く答え、緊張からかゴクリと喉を鳴らした。


普段の豪快さとは違う、張り詰めた空気が彼女を包んでいた。


そうこうしているうちに、目的地の峡谷が姿を現した。


眼下に広がるのは、見上げるほど大きく切り立った岩壁が連なる広大な地形で、まさに飛龍が巣を張るにはうってつけの場所だった。


俺は足を止め、隣に並ぶロゼッタに問い掛ける。


「さて……準備はいいか?」


「おっさんこそ。勝手に死ぬなよ」


ロゼッタは大剣の柄を握り直し、鋭い眼光を峡谷へ向けた。


俺は呼吸を整え、魔力を抑えるのを止めた。


周囲に俺の魔力が充満していく。


飛龍の気質は定かではないが、龍という種は基本的に傲慢なほどプライドが高い。


己のテリトリーにこれほどの魔力を放つ者が踏み込めば、無視できるはずがないと確信していた。


案の定、わずかな待機時間の後、遥か上空に黒い影が差した。


影はみるみるうちにその輪郭を鮮明にし、翼を羽ばたかせる風音と共に急降下してくる。


ズシン、と大地を揺らす重量を伴い、四足歩行の飛龍が俺たちの正面に降り立った。


「……こいつがこちらを格下と思っているうちに、勝負を決められればいいんだがな」


俺は腰の『シルラ』の柄に手をかける。


隣ではロゼッタが、握りしめた大剣の柄が軋むほどに力を込めていた。


飛龍の黄金色の瞳が、獲物である俺たちを値踏みするように細められる。

漆黒の鱗がギラついている。


空気を震わせる唸り声が峡谷に響き渡った。

戦いの火蓋は、今まさに切られようとしていた。

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