表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再召喚された三人は、世界を救わない  作者: 藤山理想
再起動編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/33

24#捜索

俺は日が昇ると同時に宿を出た。


朝の通りは、昼間の活気とは少し違った、仕入れや開店準備に追われる独特の忙しなさを見せている。


昨夜は早めに寝てしまったせいで、目が覚めるのも自然と早かった。


生活費の観点から考えると、今日も連休にしてしまうのは避けたいところだ。

俺は足早にギルドへと向かった。


ギルドの重厚なドアを押し開ける。


朝の静けさが残るギルド内に、話し声が漏れ聞こえてくる。

カウンターに目を向けると、そこにはロゼッタとミラ、そしてもう一人、見慣れない顔の女性がいた。


依頼の相談しているのかとも思ったが、三人の表情は硬い。


ロゼッタの眉間に深い皺が刻まれ、ミラもどこか困惑したような険しい顔をしている。


見慣れない女性は、さらに深刻そうな面持ちで何かを語りかけていた。


「何かあったのか?」


俺は控えめに声をかけながらカウンターに近づく。


三人は同時にこちらを向き、一瞬だけ視線が交差した。


ただならぬ空気に、俺の背筋に少しだけ緊張が走る。


「トール様……こちら、アレンの母親のマーサです」


ミラが沈痛な面持ちで紹介してくれた。


「あなたが……アレンから話はお聞きしています」


マーサはそう言うと、震える手で深く礼をした。


アレンが普段、俺のことを話していたのだろうか。俺も反射的に、真摯な面持ちで頭を下げて礼を返した。


「……なにかあったんですか?」


俺は三人の顔を一人ずつ伺う。誰の表情にも隠しようのない焦燥が浮かんでいた。


「昨日から……アレンが家に帰ってきていないんです……」


マーサはハンカチを握りしめ、涙を堪えるように声を絞り出した。


「なるほどな。昨日はなにか依頼を受けていたのか?」


俺は努めて落ち着いた声で問いかける。

事態の重さは理解したが、ここで俺まで取り乱してはならない。


「昨日はテッサム君と依頼を一緒に受けておりました」


「依頼の内容はなんだ?」


「薬草採取です」


ミラが、今にも泣き出しそうなマーサに代わって淡々と告げた。


薬草採取か。

そう危険な任務ではない。


だが、帰宅していないとなれば話は別だ。事故か、あるいは突発的なトラブルに巻き込まれたのか。


俺はロゼッタの方を見た。

彼女も昨日、楽しげに笑っていた顔とは別人かのような、鋭い冒険者の表情をしている。


「……俺たちが探しに行く」


俺は簡潔にそう告げ、冒険者としての視線をミラに向けた。


「あ、ありがとうございます!」


マーサはすがるような思いで、再び深々と頭を下げた。

その姿を見ていると、自然と拳に力がこもる。


「ちなみに、彼らが具体的にどの区画へ向かったか、確実な情報は残っているか?」


俺の問いかけに、ミラは少し目を伏せ、苦悶の表情を浮かべた。


「いえ……申し訳ないですが、依頼自体は広域の採取でしたので、正確な足取りまでは把握できていません」


ミラがそう答えると、ロゼッタが口を開いた。


「けど、彼らのランクと昨日の天候、そして以前おっさんと行った場所を考えれば、アレンなら……」


「南の草原、その付近の森か」


俺はロゼッタの言葉を継いだ。


アレンと薬草採取を共にした時の記憶が蘇る。あの場所なら彼らにとっても馴染みがあり、無理をしてでも足を延ばしそうな場所だ。


「まずはそこに向かってみる」


俺は短く告げると、腰の二本の刀に手をかけ、気持ちを切り替えた。

今ここで立ち止まっていても時間は過ぎるだけだ。


「ロゼッタ、準備はいいか?」


「聞くまでもないだろ!おっさんこそ、さっさと行くぞ!」


ロゼッタは青い鎧の留め金を指で弾き、戦闘態勢を整える。

その目には頼もしい冒険者の闘志が宿っていた。


俺はマーサに向かって、短く力強く頷いた。


「必ず見つけ出して連れ帰る。だから、ここで待っていてくれ」


俺たちはギルドの出口へと駆け出した。


南門へと向かう道すがら、俺たちは駆け足で街を抜けた。

早朝の冷えた空気が、肺の奥まで入り込んでくる。


「悪かったな。ロゼッタの意見も聞かずに、こんなことに付き合わせて」


「バカ!それを言うならこっちのセリフだ。ほっとけるわけねーだろ!」


ロゼッタは前を見据えたまま、食い気味に言い返した。


「見つかるといいがな……」


俺の呟きに対し、彼女からの返事はなかった。


代わりに、足音が一段と速くなる。


門を抜け、目的地である南の草原へと踏み出す。


朝日を浴びた草原はどこまでも平穏に見えるが、その向こうにある森は、深い緑に飲み込まれて陰鬱な影を落としていた。


「ロゼッタ、あの森に生息している魔物の種類はわかるか?」


「色々いるけど……正直、進んで深い森に入ったのだとしたら、見つけるのは絶望的かもしれない」


ロゼッタの声が、先ほどよりも一層沈んだ。


森の入り口が視界に入ってくる。


木々の間から漂ってくるのは、清々しい空気ではなく、魔物が残したであろう微かな獣の臭い。


もし彼らが何らかのトラブルに巻き込まれ、深い森の奥へと連れ込まれてしまったのだとしたら……


「……諦めるのはまだ早い。アレンたちの痕跡を探すぞ。足跡、折れた枝、何でもいい。少しの違和感も見逃すな」


俺は刀の柄に手をかけ、森の深淵を鋭く見据えた。


森の入り口に続く道の端に何かが落ちているのに気付いた。


二人は駆け寄る。


「おっさん……これは……」


そこにはギルドから薬草採取の際に、支給される革の袋がポツンと取り残されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ