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再召喚された三人は、世界を救わない  作者: 藤山理想
再起動編

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22/31

22#連休

昼時だというのに、ギルド内は珍しく閑散としていた。

普段なら依頼を求める冒険者たちでごった返しているはずだが、今日は妙に静かだ。


「今日はEランクの依頼はありませんね……」


受付嬢のミラは帳簿をパラパラと捲りながら、申し訳なさそうに肩をすくめた。


「まぁそんな日もあるか……」


予定外の休日か。

連休という響きは悪くないが、特にやりたいことがあるわけでもない。


さて、この空いた時間をどうしたものか。

ふと、俺の中に引っかかっていた疑問が鎌首(かまくび)をもたげた。


「そういえば、魔王退治の依頼とか無いのか?」


俺が思い出したように尋ねると、ミラはきょとんとした表情で一瞬固まった。


「……冗談……でないのであれば、そんな依頼はきてませんね……」


彼女は帳簿を見るまでもなく即答した。


まぁ、こっちの世界に来てからというもの、魔王の「ま」の字すら聞いたことがない。


そうなると、俺が再召喚された際に告げられた「魔王復活」という情報は、一体何だったのだろうか。


そんなことを考えていると、ギルドの重厚なドアが開き、若々しい活気ある声が店内に響き渡った。


「ほら!今日こそ魔物討伐いくぞ!」


「あ、明日にしない? 今日はやめとこうよ……」


声のする方へ視線を向けると、以前、薬草採取の依頼を共にしたアレンの姿があった。


彼は俺の顔を認めると、パッと表情を明るくして近寄ってくる。


「あ!トールさん!」


「久しぶりだなアレン。元気にしてたか?」


「はい!トールさんこそ、お変わりないようで」


相変わらずの大人びた丁寧な口調に、俺は微笑ましく目を細める。


「誰?アレンの知り合い?」


アレンと一緒に入ってきたもう一人の少年が、怪訝そうに俺を見つめながらアレンに尋ねた。


冒険者になりたてのような装備の男の子だ。


「俺はトールだ。よろしくな」


「おう。俺はテッサム。おっさんもよろしくな!」


差し出された手と握手を交わしながら、俺はかつての知人であるリュウに似た活発さをその少年に感じていた。


わんぱくそうなその眼差しは、冒険への期待に満ちている。


「アレンの友達か?」


「友達というか……仕事仲間なんです。テッサム君はEランクの冒険者だから、色々教えてもらっています」


アレンが少し背伸びをしたような口調で説明する。


「そうか。仲間が増えたんだな。良かったじゃないか」


俺がそう言って微笑むと、アレンは少し気恥ずかしそうに頬を掻いて笑った。


「ほら!さっさと依頼探しに行こうぜ!」


「ちょ、ちょっと待ってよテッサム君!」


テッサムは待ちきれないとばかりにアレンの手を引き、ギルドボードの方へと駆けていく。


二人は肩を並べ、どれが自分たちにこなせる依頼かを真剣な表情で吟味し始めた。


「……俺も早くEランクにならないとな」


ふと、自分がまだ駆け出しの冒険者であるという現実に意識が戻り、小さく溜息をつく。


「トール様なら大丈夫ですよ。お強いのは知っていますので」


受付カウンターの向こうで、ミラがニコニコと笑いながら俺を励ましてくれる。


「期待に応えられるよう頑張るよ」


さて、本格的に今日一日何をすべきか考えなくてはな……。


「ミラさんなら、急な休みにどんなことをする?」


「私ですか?そうですね……本でも読みますけど……」


なるほど、本か。


俺はこの世界の文字があまり読めない。


これを機に本格的に勉強してみるのもいいかもしれないな。


「ありがとう。参考にするよ」


「お休みの日くらい何も考えずにゆっくり過ごすのも、お休みの醍醐味ですよ」


ミラはそう言って、にこりと微笑んで小さく礼をした。


カウンターから離れ、俺は眩しい陽光が降り注ぐ表通りへと足を踏み出す。


本屋に行けば、この世界の文字で書かれた難解な書物が並んでいるだけだろう。


日本語で書かれた丁寧な教科書など、この世界に存在するはずもない。


ある程度、指導してくれるような人間を探すべきか。


ふとロゼッタの顔が脳裏をよぎったが、彼女も冒険者として多忙な身だ。


文字の練習に付き合わせるのも気が引ける。


「……まぁ、まずは独学でなんとかするか」


看板の文字をぼんやりと眺めながら、自分に言い聞かせる。


俺は歩きながら、いつの間にか行き先を決定していた。


向かった先は、昨日も行った「肉汁酒場」。


昼間から酒場に行く――

今の俺にとっては、これこそが理想の休日だった。


空はまだ明るく、太陽も高く昇っている。


「休みの日は日も沈まぬうちに呑んで、寝るに限る」


自分にそう言い訳をしつつ、酒場の扉に手をかける。


中から漂ってくる挽肉の焼ける匂いに、俺は小さく息を吐いて期待に胸を膨らませた。


酒場の扉を押し開け、店内へ一歩足を踏み入れる。


俺の姿に気付いたキャンディスが出迎えてくれた。


「あら。今日はトールさんおひとりですか?」


「あぁ。急な休みになってな」


「そうでしたか。カウンターの方へどうぞ」


キャンディスの出迎えを受けて俺はカウンターまで向かった。

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