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再召喚された三人は、世界を救わない  作者: 藤山理想
再起動編

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19/25

19#休日

薬草採取の依頼から一週間が経った。


この一週間、俺はEランクの依頼を毎日一つずつ着実にこなしていた。


弱い魔物の討伐、近隣農地の警備、あるいは小規模な護衛任務。


特筆すべき面白みはない日々の繰り返しだったが、銀貨2、3枚という報酬は薬草採取の時よりはずっと生活の足しになった。


その間、ロゼッタとも一度だけ洞窟の魔物討伐に出向いた。


住み着いていたのは、巨大なトカゲのような姿をした《サランドラ》という魔物だった。


単体ではそこまで脅威ではないが、何よりその数が多くて厄介だった。


依頼そのものが高額だったため、ロゼッタと折半しても報酬は金貨二枚になった。


これに思わず胸を撫で下ろした。

ようやく当面の生活基盤が見えてきた。


宿の主人にも纏まった金を前払いし、無口だった彼ともようやく言葉を交わせる程度の関係にはなれた。


ただ、生活上の新たな悩みも浮上している。洗濯と、何より風呂の問題だ。


洗濯は各家庭で行うのが通例らしく、店に頼むとそれなりの出費になる。


これは仕方ないと割り切れるが、銭湯の値段がとにかく割高なのが痛い。


この世界では風呂に浸かるという習慣が定着しておらず、行水や身体を拭き上げる程度で済ませるのが一般的らしいのだ。


俺にとって、風呂は一日の疲れを癒す聖域だ。

現代で20年間毎日浸かってきた習慣は、そう簡単に捨てられるものではない。


結局、妥協点として2日に1回は銭湯に通うというラインで落ち着くことにした。


銀貨百枚分に相当する金貨一枚。

それを二枚も持っている今は、 懐だけでなく心にも確かな余裕が生まれていた。


明日は依頼を受けず、この都市を探索してみるか。


面白そうな店でも探してみよう――そう考えながら、肉汁酒場で偶然居合わせたロゼッタと晩酌を楽しんでいた時だった。


「明日鎧買いに行きたいんだ!おっさん付き合ってくれよ!」


「いいぞ」


依頼を受ける予定もなかった俺は、二つ返事で快諾した。


それからロゼッタは、あんな鎧が欲しい、魔力装甲ならこういう強化がいい――と、目を輝かせながら熱く語り続けていた。


俺はその横顔を眺め、ビールを楽しみながら彼女の武具に対する情熱を聞いていた。


それが昨日のことだ。


約束は、ギルド近くの噴水でお昼に待ち合わせ。


俺は少し早めに到着し、噴水の縁に腰を下ろして彼女を待っていた。


今日はただの買い物だ。

戦闘に出るわけではないが、かといって愛刀を宿に置いてくる気にはなれず、腰にはいつもの二本が静かに収まっている。


水の弾ける音と、行き交う人々の喧騒。


街の活気を肌で感じながら、ぼんやりと街並みを眺める。


こうして腰に刀を感じていると、不思議と落ち着くものだ。


「待たせたか?」


「今日は鎧じゃないんだな」


見上げると、いつもの重装備ではなく、白いシャツに紺色のズボン、そして動きやすそうな革のブーツを履いたロゼッタが、爽やかに微笑んでいた。


髪は後ろに纏めておらず、いつもより無造作におろされている。


少し赤みがかった色の髪が肩に流れ、鎧姿とはまた違った印象を与えていた。


「鎧を買いに行くのに鎧を着ていくと、試着の時にめんどくさいだろ?」


「確かに、そうだな」


言われてみればもっともだ。

俺は噴水の縁からゆっくりと立ち上がり、埃を払った。


「ほら!早く行こうぜ!」


ロゼッタは俺の返事を待たずに、逸る気持ちを抑えきれない様子で目的地へと歩き出した。


少し大股で、楽しそうに街並みを見渡しながら先を行く彼女の背中を見ていると、自然と顔が緩む。


目を輝かせながら店へと向かうその姿は、新しいおもちゃを買ってもらえる時の子供のようだった。


戦闘中の鋭い眼光とは違う、こういった一面を見ると、やはり彼女も年相応の女の子なのだと再確認させられる。


俺はその後ろ姿を追いかけるように、軽やかな足取りで雑踏の中へと混ざっていった。


目的の店は、これまで俺が通ったことのない一角にあった。


道中、香ばしい匂いを漂わせる食べ物屋の屋台が多く並んでおり、ふと「いつか食べに来てみるか」という考えが頭をよぎる。


店のドアの上に掲げられた、鎧をモチーフにした看板を見上げ、俺はロゼッタの後を追って店内へと足を踏み入れた。


「おぉ! やっぱり新しい鎧はテンション上がるな……!」


ロゼッタは入った瞬間に目を輝かせ、並べられた鎧から鎧へと、まるで宝探しでもするかのように次々と視線を移していく。


楽しそうに品定めをする彼女を見ていると、俺までつられて頬が緩む。


普段の冒険者としての張り詰めた表情とは違う、年相応の無邪気な横顔。


彼女のそんな一面を眺めているだけで、なんとなくこちらまで楽しい気分になってくるものだ。


「じっくり選べよ。気に入ったものが見つかるといいな」


俺は店内に広がる武具独特の鉄の匂いを感じながら、楽しそうにはしゃぐ彼女を見守ることにした。


「なぁなぁ!ミスリルの魔力装甲のやつはあるか?」


ロゼッタは店員に遠慮なく問いかける。


店員は彼女の熱量に押されつつも、奥の棚からいくつかの鎧を引っ張り出し、その機能や素材の特性を丁寧に説明し始めた。


専門的な用語が飛び交う会話を聞いていると、さっぱり話についていけない。


……どうやら当分、俺の出番はなさそうだ。


俺は店内の壁際に身を寄せ、邪魔にならないようにそのやり取りを眺めていた。

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