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再召喚された三人は、世界を救わない  作者: 藤山理想
再起動編

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10/17

10#牡丹

「これは……」


受け付け嬢は水晶をジッと見詰めている。


「魔力量はBランク程度ですね。ただ性質が……」


受け付け嬢は言いにくそうに口ごもる。ロゼッタも水晶をジロジロ見ている。


「聖と魔。二極の属性ですね」


「……対極者か。気の毒だなおっさん」


ロゼッタはさも残念そうな顔で俺の肩に手を置いた。


「まぁ、仕方ないさ」


俺は呟いた。


この世界の魔力性質は7大属性で分けられる。


火、水、風、雷、土、聖、魔。


ある程度複数属性を扱える者は才覚があるとされる。


だが聖と魔だけは別だ。


対極の力は互いを打ち消し合い、中途半端な力しか発揮できない。


だから対極者はハズレと呼ばれる。


こういう反応も懐かしいな、とトールは心の中で苦笑した。


サラサラと音を立てて最後の記帳を終えると、受け付け嬢は表情を改め、笑みを浮かべた。


「では、登録は以上となります。ギルド証は明日にでも発行しますので、また明日の朝、こちらへお越しください」


「今日は依頼を受けられないのか?」


トールが問うと、受け付け嬢は困ったような笑みを浮かべた。


「ギルド証が発行されるまでは、正式な冒険者としてのお仕事は受けられない決まりなんです。ですが、明日になれば冒険者として登録されたものとして、Fランクの依頼から受注可能です。Eランクの依頼までなら、今すぐでも紹介できますよ」


その言葉に、トールはふと懸念を口にする。


「Eランク……例えば、ワイバーン退治くらいならどれくらいのランクになる?」


「そうですね……個体数や被害状況にもよりますが、Cランクは堅いでしょう。高いとBランクになることもあります」


あまりロクな依頼を受けられそうにないと、トールは小さく息を吐いた。


それよりも問題なのは、今日の宿代や飯代すら無いという現状だ。


「おっさんさえ良ければ私が依頼受けて、稼ぎは折半するか?」


隣で聞いていたロゼッタが、悪戯っぽく笑いながら提案してくる。


「いいのか? それなら助かるが……」


「おっさんがどんな戦いするのか見てみたいからな」


ロゼッタはニカッと笑った。


「ロゼッタさんはBランク冒険者ですので、今すぐ受けられる依頼となると……」


受け付け嬢は、カウンターの奥から分厚い帳簿を引き寄せると、パラパラと慣れた手つきでページをめくり始めた。


「ザッカスの村に出現したボア退治がありますね。Cランクですがどうされますか?」


「いいね、おっさん。ボアならいけるか?」


ロゼッタにそう問われ、トールは眉を寄せた。


「ボアってなんだ?」


その瞬間、ギルド内の空気がピタリと止まった。受付嬢が呆気にとられたように口を半開きにし、ロゼッタは「はあ?」と耳を疑うような顔でトールを見つめている。


「……あの、トール様。ボアというのはですね」


受付嬢が気を取り直すようにして、丁寧な口調で説明を始めた。


「とても大きなイノシシのような魔物です。基本は森の中で群れで暮らしているのですが、たまに農村地帯付近に住み着くはぐれ個体が現れるんですよ。突進の威力は凄まじく、Cランクの討伐対象としては一般的です」


説明を聞きながら、トールは深く記憶の底を辿った。


『巨大なイノシシ』という言葉が、脳裏の断片的な戦闘記録を呼び起こす。


「あー……昔、似たようなのは斬ったことがあるな」


トールは、かつて山脈を越える際に幾度となく刃を交えた、巨大な獣の姿を思い出していた。


「おっさん……無理すんなよ」


「強がってるわけじゃないからな!」


しまった。つい素でツッコミを入れてしまった。


「まぁ最悪私一人でもなんとかなるから、おっさんは気負わなくてもいいぞ」


「頼りにしてるよ」


「では、ロゼッタさんで受託しておきますね」


受付嬢が手早く書類を仕上げる。


「さて、おっさんいくよ」


ロゼッタは俺の反応などお構いなしに、軽やかな足取りで出口へと向かっていく。


俺は呆れ半分、苦笑い半分で、その後ろ姿を追いかけた。

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