表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

第二話 上篝閃①

「開いちゃった……」


一つ目の扉が開いた。

半信半疑であったのだが、本当に開いた。

扉にはオーロラに近い虹色のゆらめきの膜のようなものがあり、中の様子を伺うことは出来ない。


「ふふん、私の推理は合ってたみたいだね!!」


発案者の上篝さんは得意げに笑う。


「他の要因かもしれないでしょう。……開いたのは事実だけれど」


雨久さんが口を尖らせる。

だが、扉が開いたのは事実。

少しだけ、可能性としてはあり得ると思ったようだった。


「では、行こうか!!」

「えっ……!?」


上篝さんが雨久さんの手を引いた。

えっ、と声を上げた雨久さんを連れて、オーロラの膜の中に足を踏み入れた。


「あっ!!行っちゃった!!」


思わず大きな声が出た。

まさかなんの確認もせずに突っ込むとは思わなかった。

しかも恐らく同じように考えていた雨久さんも連れて行ってしまった。


「これは……追いかけるしかなさそうだね」


秋冬さんの言葉にはい、と肯定する。


「一応確認だけしますね」


オーロラの膜に耳を近づける。

音は奇妙なほどにしない。

匂いも無い。


「音が一切聞こえないので中の様子が分かりません。警戒はした方が良さそうです」

「ありがとう、分かった。私たちも行こうか」


秋冬さんに手を引かれ、オーロラの膜へ足を踏み入れる。

オーロラの膜はまるでそこに存在しないかのようで、違和感も何もなく通り抜けることが出来た。


「ヤアヤア、来たね」


オーロラの膜をくぐり抜けるとすぐ近くに上篝さんと雨久さんが立っていた。

私達を待っていてくれたのだろうか。


「二人が来てくれてよかった……」


同意なく突然上篝さんに連れて来られてしまった雨久さんは少し泣きそうだ。

私も同じ目にあったらびっくりしてパニックに陥るだろう。


「上篝さん!!雨久さんまで連れて行ってびっくりしましたよ!!」

「すまないね。善は急げ、だよ」


会話が微妙に噛み合わない。


「いやはや、あの扉は謎が多いね」


上篝さんが嬉しそうに周りを見渡す。


「まず、どこなんだね。ここは」


自分で何の準備もせずに飛び込んでおいてこの言い種だ。

そんなことはこちらが聞きたい。


「分からず飛び込んだんですか……」


思わず私の口から言葉が溢れた。

上篝さんに対して雨久さんが達観していた理由がこれでもか、と言うくらいに分からされていく。


「話してても仕方あるまい。調べて周ろうじゃあないか」


まるで今までの会話が無かったかのように上篝さんが提案した。


「それは……そうした方がいいかもね」


私達は今、日本では無さそうな、少なくとも私には見覚えのない街に佇んでいる。

周りに人影はなく、犬や猫などの動物どころか虫の姿も見えない。

また周りの建物の外観は日本のものではなく西洋建築のように見受けられる。


「実際ここはどこなんでしょう?日本なんですかね……?」

「違うと思う。花が違うもの」


私の疑問に雨久さんが答えた。


「日本にもネモフィラとか……青い花自体はあるけど、こんな絵の具みたいな青い花は見たことないもの」


雨久さんが近くの家の花壇にある花を示した。

見た目はポピーのような花だが、雨久さんの言ったように色が凄まじい。

まさに青の油絵の具をそのまま固めたようなビビットな色をしている。

他の家の花壇を見ると青はもちろんのこと、同じ花の赤や黄色のものもある。


「日本以外にならあるのか、って言われると分からないのだけれど……」


雨久さんが困ったように小首を傾げながら言う。

首を傾げた仕草が人形のようで愛らしい。


「ふむ。家の外観も西洋風だしね。日本じゃない可能性は高そうだ」


人差し指で自分の髪をくるくるといじりながら上篝さんがそう言った。


「住人に尋ねてみるか。昼間だしノックをしても失礼にはなるまい」


そう言うや否や一番近くの赤い屋根の家のドアをノックする。

返事はない。

耳を澄ましても音がしないことから、居留守では無さそうだ。


「いないみたいですね。物音もしませんから」

「うむ。次行ってみるか」


すぐに隣の家をノックした。

またしても返事はない。

こちらもやはり物音がしない。


「そもそも人いるのかな?気配が全然ない気がする」


周りを見渡しながら秋冬さんが言う。


「確かに……あまりに物音とか匂いがしないですね」


私も補足する。

人が外に出ていないにしろ、家の中にいるのであれば物音やご飯の匂いはあっておかしくないだろう。


「つまり、この街は忽然と人が消えた街!!さながらゴーストタウンということかな!!」


上篝さんが大きな声でそう言った。

ゴーストタウンはちょっと意味が違う気もする。


「勝手に悪いけど家に上がらせてもらいましょう。本当に人がいないか中を確認したいの」


不安そうな雨久さんがそう提案する。


「もう一度強くノックして呼びかけてみよう。それでダメなら入らせてもらおうか」


意外とまともな提案をして、上篝さんがそのままドンドンと扉を叩く。


「すまない!!誰かいないかね!?」


元々大きい声を更に張って呼びかけるも返事はない。

そしてそのままドアノブを捻る。

鍵はかかっていなかったようで、扉はすんなり開いた。


「失礼するよ!!誰かいるなら返事をしてくれ!!」


扉から一歩踏み込み、更に呼びかける。

それでも返事はない。


「靴は脱いだ方がいいのだろうか?」


急に常識的な疑問を抱いたのだろうか。

上篝さんが困ったようにこちらを振り返る。


「家の人には悪いけど土足で上がらせてもらおう。何かあった時にすぐ逃げられるように」


秋冬さんの提案にそれもそうかと納得した様子の上篝さんがそのまま土足で上がった。


「おっと、本当に誰もいないようだな」


私も玄関を入ってすぐ右手にある部屋を覗き込んだ。

キッチンやダイニングテーブルなどがあることからこの部屋はリビングなのだろう。

反対側の左手側の部屋も覗く。

そちらは洗面台と浴槽がある。

他に部屋は無く、二階や地下も無さそうだ。


改めてリビングに入り、部屋全体を見る。

キッチンに違和感を感じるもののそれが何か分からない。


「このキッチン、なにか変……じゃないですか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ