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プロローグ②

「秋冬さん、行きましょう」

「そうだね。とりあえずさっき来た方の突き当たりまで行ってみよう」


改めて廊下を見ると非常にシンプルな作りになっている。

廊下は一本道になっており、迷子になることは無さそうだ。

廊下に沿う形で六つの扉がある。

そのうち左から二番目の扉が私達が中庭に出た時、最後に出た扉だったはずだ。

当時は慌てていたため、自分の記憶にいまいち自信が持てないが恐らく合っていると思う。


そのまま一番左の扉の前に歩み寄る。

扉の前で耳をそばだてる。

大きくはないが、違和感を覚える風のような音がする。


「なにか風のような……変な音がします」


秋冬さんにそのまま伝える。


「一度開けてみよう。風の音ならさっきのやつの可能性が高いと思う」


秋冬さんが少し思案し提案した。


「私が開けるよ。さっきのやつは炎が苦手みたいだから、私がいれば大丈夫のはず」


秋冬さんがドアノブに手を掛けた。

ドアノブを握る手の反対の手は私を助けてくれた時のように橙色の美しい炎を纏っている。


「開けるね」


そう言ってドアノブを捻り、扉を開けた。


「当たり、みたいですね……」


私を助けてくれた時と同じように気配が炎を避けるように引いていくのが分かる。

周りに風の音は残っているが、かなり距離が離れたようだ。


「良かった。私から離れないでね、白」


秋冬さんがこちらに振り向きそう言った。

私は頷き、再び秋冬さんの前に出る。


「このまま進みましょう」

「そうだね」


この部屋はやたらと広い。

当てもないため、とりあえず真っ直ぐ進んでみる。

少し歩みを進めると視界に違和感を感じた。

ふと床を見ると何かが描かれている。


「この床……」


秋冬さんも床を覗き込む。


「魔法陣、みたいだね」


私が思ったことと同じことを言う。

私達の足下には赤黒い魔法陣のようなものがあった。


「私は魔法使えないですけど……なんか違和感があります。嫌な感じがします……」

「うん。私もなんか変な気がするけれど……何かな……」


秋冬さんも首をひねる。


「私が使える魔法はこの炎とか簡単な戦闘技能系だけなの。でも、これは明らかにそういう系列の魔法陣ではないね」


秋冬さんが険しい表情でしゃがみ込み、真下の魔法陣に軽く触れた。


「詳しくないから恐らくだけど……悪いものを呼び出すものだと思う。この魔法陣は使用済みだから、今ここで飛び出してくるとかはないね」


少し安心した。

ここで強力な魔法陣が発動したら秋冬さんはともかく私は木っ端微塵になる可能性がある。

魔法陣は本来魔法陣の内側は安全圏になるようにバリアとして使うものだったらしいが、現代では完全に触媒として使われており、魔法陣の内側に魔法や召喚物が出るシステムになっている。

そのため、魔法陣をうっかり踏むと魔法が炸裂するようになる地雷のような使われ方をすることもあるらしい。


「ここから出たやつはどこに行ったのかな。さっきのやつを呼び出すにしては大仰すぎるような気がする」

「他にも……さっきのとは違う化物がいる可能性もあるってことですよね」

「あくまで可能性、だけどね。警戒はした方がいいね」


その時、私たちが目指していた方向からバン!と大きな扉の音がした。


「白、下がって!」


秋冬さんが私の前に躍り出る。

大きな音は扉が開いた音では無く、扉ごと人が吹き飛ばされた音だった。

扉の木片と部屋の埃で粉塵が立ち込めている。

その中から人と思われる影がすくっと立ち上がった。


「いったーい!!もう許さないよ!!次はボクのターンね!!」


影は立ち上がると同時に自身の背後に煌めく魔法陣を展開した。

間髪あけず魔法陣からカラフルで煌びやかな魔法弾が大量に射出される。


「アイドルを壁に叩きつけるのは禁止行為だよ!!キミ、さすがに出禁ね!!」


煙が晴れ、影の後ろ姿がはっきり見えるようになった。

ピンク色の三つ編みの髪が魔法弾の反動で少し弾む。

セーラー服を着ていることから私と同じくらいの年齢の子のようだ。


「分かってくれて嬉しいよ〜!!それじゃ、おやここっと〜!!」


大量の魔法弾でボコボコにされたと思しき何かは動くなったのか彼女が元気よく勝鬨を上げた。


「わたくしがいるのに打たないでくださいまし!!」


奥から怒り心頭の様子で女性が飛び出してきた。

今にもピンク髪の子に掴みかかる勢いだ。


「ごめんごめん。ボクの可愛さに免じて許して?」


後ろからでもきゅるっとした雰囲気が見て取れる。


「煽ってるんですの!?って、あら?」


奥から現れた女性がこちらに気がついた。

ちょうどいい、こちらから話しかけよう。


「あの、大丈夫ですか?」


ピンク髪の子と奥から現れた金髪の女性を交互に見やる。


「ええ、わたくしこれでも防御陣が使えますの。そう簡単に攻撃は通らなくてよ」


奥から現れた女性が金髪のツインテールを揺らしながら胸を張る。

ラベンダーの色が瞳が自信ありげに細められている。


「ボクは壁、っていうかドア?に叩きつけられたから体が痛い!!けど打ち身以外は大丈夫そうかな?」


ピンク髪の子も答える。

打ち身は後から痛みが来ることもあるから心配ではあるが、直ちに手当が必要という性質のものでは無さそうで一安心だ。


「良かった。私は春晩夏秋冬。残ってる人を助けに来たつもりだったんだけど、心配いらなかったみたいだね」

「私は寧崎白です。お二人とも無事で良かったです」


秋冬さんが名乗ったのに続いて、私も名乗る。

二人が化物と思しきものをノックアウトしてくれているので、多少ここで話しても問題ないと判断した。

現に今は周辺に音や視界、嗅覚に異常や違和感は感じられない。


「まあ、そうでしたの。それにしてもわたくし達以外にも人がいたんですのね」


金髪ツインテールの子がそう言った。


「そうだよ!!ボクたちしかいないのかと思って頑張っちゃったよ〜」


ピンク髪の子が口を尖らせる。

二人とも化物を見ても精神的に磨耗もせず、冷静に対処をしたようだ。

慌てに慌ててパニックに陥った挙句動けず何もできなかった私とは大違いだ。


「まだ名乗っていませんでしたわね。わたくしは宝条美々三(ホウジョウミミミ)ですわ」

「ボクは最川九斗(サイカワココット)。ココットって呼んでね⭐︎」


二人が名乗る。

こちらも軽く会釈をした。

悪い人では無さそうだが、何やら癖の強そうな人達だ……。

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