52 対峙
これで勝った。
王都の郊外の野にカルホース軍2万が現れたとき、ガルディーはわが野望はこれで成る! と確信した。
フェール公爵側も自領内とはいえ、2万の兵を王都の近くに集結させている。
ガルディーも2万5千の兵を領境あたりに集結させていたが、一応境は越えさせていない。この先ガルディーがやろうとしているのは、武力を背景にした宮廷闘争である。
いざとなれば王都郊外での戦さになるであろうが、できれば無傷で王家を手に入れたい。
カルホースの軍は、いわばその見せ金のようなものであった。
娘のナルツィセを王太子と妻合わせ、現王を退位させてガルディーが王の上に立つ。
それがガルディーの野望であり、カルホースが動いた以上はそれはもう実現したようなものであった。
「遠路ご苦労に存ずる。早速であるが、兵2千ばかりを引き連れて王都に入られよ。今宵は我が邸で宴を催しますゆえ、諸将の方々も旅の疲れをお癒しあれ」
ガルディーは郊外のカルホース卿に使いを送ってそう言わしめた。
諸侯に見せつけるためにもレグルス卿を招待し、この世の贅を尽くしたようなもてなしをして紐帯の深さを見せる必要がある。
使者を送っただけではなく、ガルディー自身が郊外まで出向いてカルホース卿を出迎えようとした。
ここで機嫌を損ねられては計算が狂う。
まだ100メートルも離れているうちからガルディーは馬を降り、莞爾とした笑顔で大人の風をもってゆっくりとカルホース卿に近づいた。
そこで初めてガルディーは旗がおかしいことに気がついた。
あれは‥‥?
わがアノスタコビッチの旗ではないか?
どういうことだ?
わが家に降るとでもいう意味か?
面妖しいのはそれだけではない。
カルホース卿と並んで、その旗の傍の馬にみすぼらしい少年兵のような者が乗っている。
なんだ、あれは?
このわしが馬から降りておるというのに、カルホースもその少年兵も降りようともしない。
いくら田舎者でも、無礼にも程があろう。
叱るべきか、気にせぬ大度を示すべきか、ガルディーが一瞬迷ったとき——。
その少年兵が粗末な兜を脱いだ。
はらりとひろがった亜麻色の髪。
その顔は‥‥‥
「アナスタシア?」
ガルディーが馬鹿みたいな顔で口を開けた。
「おまえ‥‥そんなところで何をやっているんだ?」




