20 アリシアの夢
どうしよう?
ものすごく恥ずかしい。
お嬢様はなぜ、わたしにこんなに親切にしてくださるのだろう?
わたしはただの護衛。アナスタシアお嬢様とはまるで身分が違うのに。
こんなことは、教習所では全く教わらなかった‥‥。
アリシアはアナスタシアがかけてくれた毛布に顔の半分までくるまって、頬が上気していくのを抑えられなかった。
恥ずかしいからなのか、他の感情があるのか‥‥アリシア自身よくわからない。
毛布は、アナスタシアお嬢様の匂いがする。
草原の若草のような香り‥‥。
野に咲く花のような香り‥‥。
どうしよう? こんなんで、寝られるわけがない。
アナスタシアお嬢様は、体を休めろと言うけれど‥‥。
顔をほてらせて困っていると、アリシアのすぐ傍に、体をくっつけるようにしてアナスタシアお嬢様が床に座るのがわかった。
お嬢様の体温がアリシアの腰のあたりに伝わってきて、アリシアの体全体が温かくなる。
ここでご本を読まれるおつもりだろうか‥‥?
胸がドキドキしてくる。
これでは寝られない。これでは護衛になっていない。
アリシアは起き上がって護衛の態勢に入らなければ——とも思うが、ずっとこのままでいたいという思いも強くなって身動きができない。
これじゃ護衛失格だ。わたし‥‥。
かちゃかちゃという音が聞こえて、アリシアは目を開ける。
え? わたし、眠ってた?
「あ、目が覚めたようです。」
ポットからティーカップにお茶を注いでいたシンシアが、にっこり笑ってアナスタシアに語りかける。
「よく休まった?」
アナスタシアが優しい目でアリシアに話しかけた。テーブルの椅子に座って、手元には何かの本がある。
では‥‥あれは、夢?
なんて夢を見てたんだろう、わたし‥‥。むっちゃ恥ずかしい!
アリシアは、がばっと跳ね起きる。
あ‥‥毛布‥‥。
きちんとたたんで立ち上がらなくては‥‥。
「そのままでいいから、こっちに来て。3人でお茶しましょ?」
アナスタシアがアリシアを手招きする。
「シンシア。この手紙をエイドリアン様に届けるように手配してくださいな。」
お嬢様が、紋章の入った白い封筒をシンシアに手渡した。
その手紙は、アリシアが眠っていた間にお嬢様が書かれたものだろう。‥‥テーブルで。
ということは、あれはやっぱりわたしの夢だったんだ。
なんて夢を見てたんだ、わたし。
友達のように体を寄せ合っているなんて‥‥不敬な夢を見てしまった‥‥。夢の中のこととはいえ‥‥。
アリシアはカップに口をつけながら、また頬が上気しているんじゃないかと心配になった。
お茶のあと、シンシアがカップを片付けている間に毛布を片付けようとそちらに行くと、アナスタシアがすっとアリシアの前に出た。
「わたしにやらせて。あなたは侍従じゃなくて、護衛でしょ?」
アリシアは戸惑っている。
いくら秘密を共有する仲間だとおっしゃっていても‥‥、なぜお嬢様はこんなにもわたしに親切なんだろう?
毛布をベッドに広げなおす前に、アナスタシアお嬢様がそれを顔の前に持っていったように見えたのは‥‥。
アリシアの錯覚だっただろうか。
ぎり大丈夫だよな? ‥‥これ。(^◇^;)




