17 転生者を探す
翌朝、意外に近い小鳥の声で目が覚めた。
イヴァーシナ家では小鳥が近くで鳴くんだな。
そんなことを思いながらふと横を見ると、アリシアの黒髪の頭が見えた。ベッドにもたれかかった姿勢のまま、すー、すー、と小さな寝息をたてている。
わたしはアリシアを起こさないように、そぉうっと起き上がった。
起き上がって静かにベッドに腰かけてアリシアの顔を覗き込む。
やっぱり疲れてたんだな。
アリシアは気づかずに、規則正しい小さな寝息をたてている。
横顔が、かわいい。
アリシアって、こんなかわいい顔してたんだ。護衛の任務についてるときは、いつもきりっとした表情してるから。
寝てるとけっこうあどけないんだ——。(この身体も他人のこと言えた年じゃないけど)
わたしはさらに大胆になって、そぉうっとベッドから下りてアリシアの隣に同じように座ってみる。
ふふ‥‥‥
そこでアリシアは気がついたようだった。
毛布を跳ね除け、剣を掴んで——。それから初めて隣にいるのがわたしだと気がつくと、真っ赤になった。
「も‥‥申し訳ありません! 護衛たるもの‥‥」
「いいの、いいの。たまにはちゃんと寝て、休まなきゃ。ここはイヴァーシナ家。うちのと合わせていつもの倍の護衛がいるんだから、怪しい者は入ってこられないって——。」
わたしはアリシアの黒髪をそっと撫でる。
アリシアは目も鼻もわからないくらい、さらに赤くなった。
13歳の少女が年上の15歳の頭をポンポンしている図って変かもしれないけど。こんなふうにわたしに対して隙を見せてくれたことが、むしろわたしには嬉しい。
なんだか距離がぐっと近づいた感じがする。
アットホームなイヴァーシナ家の朝食をいただいて、丁寧にお礼を言って馬車に乗っての帰り道。わたしはずっと英人くんの探し方を考えていた。
麻耶にはああ言ったものの、一体何を手がかりに探せばいいのか。
英人くんがどこの誰に転生しているのか? こちらでは何歳なのか?
わたしだって13歳、麻耶なんか12歳だった。もしかしたらまだ小さな子だったり、それこそ赤ちゃんだったりするかもしれない。
どうやって探せば‥‥?
いや、そもそも英人くんもわたしたちと同じように死んだ——と決めつけてるけど、ひょっとしたら彼は助かってるかもしれないじゃない?
それはそれでいいことだけど‥‥でも、麻耶にとってはもう二度と会えないってことで‥‥
ちゃんと死んでてください、英人くん。
‥‥‥‥いや、これはこれでヘンか‥‥?
麻耶は英人くんが麻耶を庇って‥‥と言ってたけど、どんなふうに死んだのかは結局泣いてただけでよくわからなかった。
ちゃんと聞いてきたらよかったかな‥‥。でも、聞けるタイミングなかったしな‥‥。聞いたら、今どこにいるかわかるわけじゃないしな‥‥。
別の方向から考えてみよう。
麻耶の場合は「麻耶」と「マイア」で音が似てたことも手がかりになった。
もしかしたら——と思えたのだ。
マイア・イヴァーシナ。
勇魚 麻耶。 → マヤ・イサナ‥‥。
あ! 苗字まで入れても音の響きが似ている。
わたしは?
柏木 杏奈。 → アンナ・カシワギ。
アナスタシアの小さい頃の愛称は「アナ」だったから、これはほぼ響きが近い。
しかし‥‥。なんで苗字はタコでビッチだ? (わたしだけ‥‥)
あ‥‥‥
もしかして。
母方の旧姓は「カシャーグ」。
うん! 近い! これだ!
そして、アナスタシアとマイアの関係も前世の杏奈と麻耶の関係と極めて近い。
この法則が適用されているとしたら、英人くん=刈穂 英人もそれに近い音の響きの名前に転生してるはず。
さらに、わたしと麻耶の状況を考えれば、同じ学校や同じ貴族社会の中に彼はいるはず——ということになる。
この条件でアリシアに情報を集めてもらおう。
わたしは馬車の窓から脇を歩いているアリシアを呼ぼうとして、あることに気がついて言葉を止めた。
刈穂 英人。
エイト・カリホ。
↓
エイドリアン・カルホース。
その名前は‥‥
カルホース伯爵家のお世継ぎにて、わたしより3歳年上の幼年学校の上級生。
そして‥‥
このアナスタシアの婚約者!




