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3 遺跡の探索

 街の大きさは、思ったよりも巨大だった。ヤーガイの旧都よりも一回り大きいだろうか。大きな建物はまだ残っている。道路は健在で、蔦や木を払えば未だに使えるほど立派だった。大通りは広く、半円形の街で港を起点に道路が放射状に延びている。雑多に作られたわけではなく初めからきちんと計算されて作られた街だった。

「凄い立派な都市だったんだな。何故人がいなくなったのだ? いくら文明が衰退したとしても、国が残っていても良いような物だが」

「他の場所に遷都したのでは無いか? ヤーガイのように」

「そうか、でも何処へ行ったのだ?」

 海から見えた範囲には街らしき物は無かった。

「さあ、これほど大きな大陸だ。何処へでも行けるさ」

 森の深い場所に、かなりしっかりした建物があった。

  街の建物とは違い未だ綺麗に残されている。

「ここは王宮とは違うようだが、随分立派な建物だな。7階建てか?」

 恐る恐る中へ入ってみると、光がぱっと着いた。皆、驚いて警戒し始めた。

「何だ! 勝手に明かりが付いたぞ。誰か居るのか!」

「多分これは人感知照明の魔道具だろう」

 レオンが一人落ち着いて明かりを詳しく見始めた。

明かりは暫く付いていたが、やがて点滅し始めて消えて仕舞った。

「魔力切れだな。この屋敷にはたくさんの魔道具がありそうだ。みんな、片っ端から集めて持ってきてくれ」

 レオンが言うには、この建物には状態保存の魔法が最近まで掛かっていたのではないかと言うことだった。

――そうか。だからこんなに良い状態で残っていたのだな。

 他の建物はしっかり建っているようでも、中の物は殆どが朽ちてしまっている。本であった物でも持ち上げるとボロボロと崩れ落ちてしまうのだ。魔道具も同じだった。触れた場所から、割れてしまったり少しの振動で崩れてしまっていた。

 暫く待っていると、地下の方からクルーが現れた。

「済みません、どうしても持ち出せないようなので、来てくれませんか?」

 彼の誘導に従い大きな部屋へ行って見ると、部屋の真ん中に四角い二メートルほどの魔道具があった。

 魔道具の上には金色の枝が五本刺さっていた。

「これは! 闇の収斂の魔道具ではないか?」


 レオンは闇の収斂をそこでして見せた。いつの間に出来る様になったのだ? 親和性がないとできない魔法ではなかったか? だが、確かに魔宝石が魔道具にぶら下がっている。

「これは凄い。魔女の家の魔道具よりも効率よく魔力を吸っている。レベルが低い僕でも出来てしまった」

一度吸収しただけなのに魔宝石が十個ほど出来上がってしまった。

「サラがやれば100個は出来上がるのではないか?」

 ゴードンは見たことはないが、魔の森の魔女の家にある魔道具には、木の枝が一本だけだそうだ。その一本に二十個出来ると言う。この魔道具には木の枝が五本付いているのだ。単純計算で、100個は出来上がるだろう。

 魔宝石が出来上がると共に今まで消えていた照明が一斉に点き始めた。

 ゴードンとレオンは、ここには魔女がいたのではないかと考えた。

「この建物で魔女が、若しくは闇の使い手が闇の収斂をして、魔宝石を作っていたのだろう。この魔道具で屋敷の維持もしているようだな」

「これだけの設備があって、魔力を吸収出来ていたのに。何故文明は衰退した?」

「周りには魔力が満ちているのに、どうしてだろうか?」

 いくら考えても分からなかった。

 街の周りは巨大な森と、奥には高い山が聳えている。山からも濃い魔力が流れ出してきているのだ。

「僕は計算してみたんだが、人口は少なくとも百万人はいたはずだ。この街を支えて行くには、この大きな魔道具で毎月闇の吸収をしなければ、維持出来なかっただろう。だとすれば、魔力が枯渇して仕舞って、住めなくなったのではないだろうか」

 魔法や、魔道具がなければ、生活できないくらいに魔法文明が発達してしまい、生活が出来なくなって街を捨てたと言うことだろうか。

「多分、魔力を吸いすぎて、地力も無くなり作物も取れなくなったのではないだろうか。そうなれば魔宝石がなければ、食糧も仕入れることが出来なくなる。悪循環に陥って、総てが魔宝石で廻っていた。そして、遂に臨界点に達したと言うことか?」

「そうだ。今ここがやっと回復してきたと言うことでは無いかと思う。多分六百年は経っているだろう。ゴードン、この大陸にはまだ人がいる国か街が残っているはずだ。探して、伝承が残っていないか調べてみないか?」

「良いが、レオンはこれから帰るのか?」

「ああ、二,三日だけという約束だったから。でも、また時間が出来たらこっちへ来る。食糧の補充をしに、ね」

 確かに、食糧は補充が必要だ。ここの近くには農地などないし、森には殆ど食べられる物が無いのだ。

 魔獣はいるが、毒を多く含んでいて、ゴードンと違い、クルーには食べる事は出来ないだろう。まるで、以前のヤーガイ国のようだった。

 レオンは書庫にあった書物を片っ端から持ち出して、ヤーガイ国へ転移していった。


 それからは魔女の建物を拠点として森の中を探索していった。森には、魔力が充満している。当然魔獣は強く危険だ。

「火で燃やしても、森が消してしまうな。ここは魔の森と同じだ。明日からはあの山まで行って見るか」

 クルーには残ってもらい、ゴードンの騎士、ボッサムと一緒に山を目指す。

 四日ほどで山の麓に着いた。

 闇の結界のレベルが上がって、途中からは楽になった。魔獣を倒しながら、レベルを上げ今では一日中結界を張っても苦にならない。闇を属性に加えて本当に良かったと、ゴードンは改めて思った。

 ボッサムの属性は水だ。彼のお陰で水には苦労しない。彼は水しか属性がないが、レベルは高い。氷の槍を作り出したり、温水を出したり出来るので、助かっている。

「ゴードン様、ここに温泉が湧いているようですが、入ってみますか?」

「まて、火山には危険な成分の温泉が湧くと聞いたことがある。然もこんな処で風呂には入らないぞ」

「そうですね。しかし、ここは凄い魔力が濃いです。私でも直ぐに魔力が補充していきます」

 確かにそうだ。魔の森よりも濃い。魔力が無い人間には毒にもなる。余りにも濃い魔力に当てられて気を失ってしまうだろう。

「若しかすると、魔女はこの環境にはなくてはならない存在だったのではないのか?」

「と、申しますと?」

「ほどよく魔力を吸ってくれて住みよい環境を作っていたのではないかと言うことだ。ヤーガイ国でもそうだったでは無いか。お前には話して聞かせただろう?」

「そうですね。確かに魔の森を維持してくれていたと聞きました。でも、ここにも、謎の魔女がいたというのは本当の事でしょうか」

「レオンが言うには、魔女はここから、ヤーガイへ逃れてきたのではないかと言うことだ。山にはこんなに魔力があるのに何故だろうな」

「迫害されたのではないでしょうか? 力が有る者は往々にして権力者に煙たがられます。ゴードン様もかつて元王様に同じ目に遭わされておりました」

「……そんなことは無い。私は好きで、魔物を倒していたのだ」

 二人で火山を下りようとしたとき、大きな影が過った。

足下ばかり見ていた二人は同時に振り仰ぎ、そこで固まった。目の前には巨大な金竜がぎろりとした目で、睨め付けてていたのだ。

「き、金竜!」

「グルルグルルルッ!」

 身の丈二十メートルはあろうかという金竜だった。サラのキンちゃんよりも大きい。

 ゴードンの肩に乗ったトカゲがその声に反応した。そしてゴードンの懐に入ってしまった。

「グルッ!」

 ――会話でもしているのか? トカゲと?

 金竜は、今度はゴードンが指にしている指輪をじっと見ている。

 ――ああ、確か金竜は魔宝石を食べていた。トカゲを見て食べようとしていたのか!

 ゴードンは、指輪を食べられては溜まらないと、レオンが作った魔宝石を金竜に与えてみた。

 金竜は、魔宝石を美味しそうに食べ、そしてその場からゆっくりと去って行った。


 森の中の建物に帰ってきた二人は、

「そう言えばここには魔獣が来なくなったな」

「レオン様が魔宝石を作ってからです。魔獣が寄りつかなくなったのは」

 結界を張る事も出来る魔道具だったとは。どれほど凄い魔法文明なのだ。魔の森の魔女の家と同じだ。やはりここには魔女がいたのだ。魔女は何処へ行ってしまったのだ? まさかヤーガイ国へ来た魔女だけだったとは考えられない。

 この魔道具があるのなら、こちらを持ってきたはずだ。魔女の家にあった魔道具よりも性能は格段に良いのだから。

 やはり疑問が湧いてくる。レオンが言ったように伝承として残っていることを期待しよう。

 六百年とは微妙な年数だ。古過ぎはしないが、かと言って新しいとも言えない。人間にしてみれば途方もなく長い年月だ。しかし、魔女の日記にあったように魔女は長生きの亜人だという事だった。まだ、生きていても可笑しくはないだろう。

 ゴードン達が大陸を廻って人の住む場所を探す航海に再び出ようと話し合っているところにクルーが飛び込んで来た。

「船長、ゴードンさん! 人、人がいます!」

 それを聞いて、ゴードン達は建物から飛び出していくと、 三人の年老いた男達が立っていた。

「初めまして、あなた方はこの街の住人ですか?」

「わし等は、アノ山向こうにスンでオル」

 不思議な抑揚のある言葉だったが、通じる。火山を越えたところに遷都したのだろうか?

「この国は何という名前ですか? あ、私達は北の大陸から船でやってきました」

 老人達はゴソゴソと話合い、ゴードン達を自分の国へ招待したいと言った。

 彼等の国は、「ウェダル国」という名だそうだ。

「貴方と、貴方、それに君たち二人。ソレダケヲツレテイク。アトは、連れて行くことはデキナイ」

 彼等が選んだのはゴードンと騎士のボッサム。それにクルーの内の若い二人だけだった。

「ゴードンさん。怪しすぎます。辞めておきましょう」

船長がコッソリとゴードンに耳打ちをするが、ゴードンは、

「いや、こうして居ても情報が掴めない。君たちはここで暫く待っていてくれ。このトカゲを置いていく。これがあれば、レオンが食料を持ってきてくれる」

 トカゲに魔力を与えておくように支持して、ゴードン達は老人達について行くことにした。


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