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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
6.黒い気配(え、次は私が紹介? ええと、よろしくね)
97/193

一介の魔法騎士。だからこそ

 ――機械都市シービス・大通り――

 

 

 

 シャルルがアルカディア学園に来て以来、この街に訪れるのは今回で二度目になる。

 1回目は電波塔に緊急任務で訪れた時。そして二回目が今回。

 

 

「相変わらずこの街は賑やかですわね」

 

「賑やかなのはいいけど……。正直いくらなんでも早すぎやしないかい?」

 

「何故ですの?」

 

「いやだって、向こうが戦いを始めるのは午前十時くらい。で、今は八時を回ったばかりだよ。アルカディアラインに位置情報はとっくに入ってるし、後は向こうが動きを見せるまでやる事が何もないというか」

 

「あら、シャルルはこのワタクシと単純に街を散策するのは『嫌』なんですの?」

 

「な――」

 

 

 思わずシャルルは絶句してしまう。プリスは何を言っているのか、突然過ぎて頭が追い付かない。どういう意図でそんな事を言ってるのか、ただのおふさけなのか、それとも――?

 

 

「ふふ。シャルルでもそんな面白い顔をするのですね。愛いですわ」

 

「君はここに何しに来たんだい!?」

 

「決まってるじゃないですの。デートですわよ」

 

「な、デ――っ!?」

 

「あら冗談ですのに。そんな仕草も愛いくて、ますます好きになりましたわ」

 

 

 恋愛感情――。そんなのはシャルルは生まれてこの方、持った事など無い。何故なら、自分は合理的な生き物。その上でその感情は、最も必要無いとすら思っていた真に取るに足らない余計なモノだと、そう強く認識していたから。否定しているのでは無く、拒絶しているのでも無く、あくまで無意識に除外していたのだ。

 


(そんなモノは――――)



 だからこそ、彼女のストレートな感情はその心に良く刺さる。

 

 

「時間があるのは本当ですのよ? 敵情視察と思えば安いモノではありませんか」

 

「少し前まではあんなに息巻いてたのに……?」

 

「よくよく考えたら、別にワタクシ達がその気になれば一捻りでしょう? なら真面目になり過ぎるのも宜しくないと思ったんです」

 

「その結果が『コレ』という訳かい?」

 

「いけませんの?」


「いやダメではないけども……」

 

「ほらほら、行きますわよ。丁度外出用の新しい服がほしかったんですもの!」

 

「君は仮にも神様なんだからそんな事を考えなくてもいいのではぁ!?」

 

 

 ずるずると腕を組んで歩くプリス。終始発狂しているシャルルとは裏腹に、彼女の顔は晴々とした笑顔が咲き誇っていた。

 かつて自分を打ち負かした者の背中を追って外界に降り立ち、より高みを目指す為に新たな舞台で磨きをかけ、来たる日に向けて努力も手段も惜しまなかったつもりだった。

 そして実際に再び戦った時『途中までは』確かな力の差は感じていた。

 

 

「――――あの日、ワタクシは【王女】として総てを賭してもなお敗れました。だから、今ここに居るワタクシは一介の魔法騎士に過ぎません」

 

「……だから?」

 

「この際愉しむ事にしましたのよ。さ、今日はワタクシを存分に楽しませてくださいませっ。アナタだって学園に来てから碌に休暇も取っていないんでしょう?」


「いや僕は別に……、いやだからそんな事よりもだね!」


「羽根を伸ばすのも時には必要ですのよ」

 

「だから本来の目的はぁっ!?」

 

「あっほらシャルル、向こうに何か露店が見えますわよ! 早速行きましょう!」

 

 

 様々な店や物品が並ぶ商店街を前に、目を輝かせて喜々と踊りながら眺めるプリス。その後も服や装飾品を取り揃えた店では隅から隅まで見渡し、何か気に入った服があれば試着してシャルルに見せつけ、機能性よりもデザインを重視した魔法アクセサリーにも注視して、ファッションの拘り方にも余念が無い。

 

 

「あら? このマナアロマ、治癒効果が高い割に香りもいいですし、何よりデザインがお洒落ですのね! シャルルもそう思いません?」

 

「え? あ、ああ……そうかもね……」

 

 

 突然振られるも、シャルルにはデザインの良し悪しや香りそのものを楽しむという概念がまるで無い。はっきり言って全てが理解不能だった。

 

 

(こういうのなんて言うんだっけ……。女子力……?)

 

「さ、次行きますわよ」

 

「ええ? まだ寄るのかい? これで4件目くらいじゃないのか?」

 

「何言ってるんですの。こういう時でも無ければまともにショッピングする機会も御座いませんのよ。アナタは三軍にいるから時間が有り余ってて楽でしょうけれども、ずっと序列一位に居続けているワタクシは仕事が溜まりに溜まってそりゃもう大変ですのよ?」

 

「なら一位の座なんて降りて適当に誰かに明け渡せばいいのでは?」

 

「そんな事は【王女】たるワタクシのプライドが許しませんわ!」

 

「うーむ面倒くさい……」

 

「何か言いまして?」

 

「いえ、何でもないです……」

 

 

 結局彼女もまた普通の感情を持つ、一人の女の子に過ぎなかった。誰にも喜怒哀楽の感情があるからこそ、そこに種族の違いや生きている年数に意味は無い。傷つけられれば怒るし、面白い事があれば豊かに笑う。それだけの事なのだ――と、シャルルは思う事にして割り切った。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] つまりシャルルはこのあとプリティちゃんの気分を盛り上がるだけ盛り上がらせた状態でお膳立てに従っていちばんカッコいいとこ存分に見せつけるんだけど本人に「その気」は全くないと(笑)
2020/06/03 19:22 退会済み
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