表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
6.黒い気配(え、次は私が紹介? ええと、よろしくね)
PR
98/193

変わっていく心

「それはそれとして、アナタにはこういった趣味はございませんの?」

 

「僕は……ほとんど無いかな。合理的に生きられればそれでいいかなって」

 

「ルルナもそんな感じですの?」

 

「あれは僕よりは全然マシだよ。一度興味津々になればどっぷりハマるし、何より僕と違って博愛的な心を持ってるからね」

 

「ふーん。なんだか変に自虐的ですのね?」

 

「本当だよ。君やルルナを見てると、僕なんかよりよっぽど広い視野を持ってるとつくづく痛感させられる」

 

「……今度は皮肉でして? 本当、殿方はこんな時くらいもっと情緒ある言葉を投げ掛けて貰いたいものですわね」

 

「そこはなんとか許して貰いたいかな。それまで僕はずっと独特な生活をしてたから、さ」

 

「……アナタは腕よりも口の方が特に達者だと、中々に感じる時がありますわね。まあ、いいですわ。じゃ次は『アレ』です」



 プリスがぶっきらぼうに指差した場所にあったのは、一つの建物だった。機械で造られた遊具や電子画面の向こう側に作られた世界で遊ぶ為の筐体がずらりと並び、シービス都市に住む子供達ならばその存在を知らない筈はない。



「今度はなんだい?」


「ゲームセンターも知らないんですの? アルカディアの生徒達も結構遊びに来てたりしてそれなりに有名なのに」


「外の世界を何も知らないんだから仕方ないさ」


「ふふん。だからこそ、ですわよ。別に今日ここに来たのは別にただ遊びに来たのではありません。あれを御覧なさいな」



 ゲームセンターの中に入ると、プリスが指差したのは複数の人なら一度に入れそうな機械である。――が、外から見ただけではパッと見で何なのかはいまいち分からない。



「なんだろう……。正直言って悪い予感しかしないんだけども……」


「いいからさっさと入りなさい」


「えっ? 僕はまだ何も――のわぁ!?」



 強引に腕を引っ張られて中に入れられると、シャルルは画面越しに自分の顔が写っているのにすぐ気が付いた。



「これはここで撮った画像を写真としてプリントアウトして、それを持ち帰るんですのよ。フォトプリなんて学生達の間では呼ばれていると聞きましたわ」


「名前とか言われてもそんなのに僕は微塵も興味が無いんだけども!?」


「いいじゃないですの。ほら記念に一枚」


「僕はこんなの嫌だぞ! もうここから――」



 向こうが強引に来るならこちらも強引に出てやろうと、機械の中から飛び出そうとした時――。



「え――」



 シャルルは無造作に手を掴まれた。そして引っ張られたその手は、彼女の胸にねじ込まれてしまう。



「――っ!?」


「……何なのでしょうね。この気持ちは。アナタにもこの鼓動が聞こえていますか?」



 シャルルの眼前に映ったのは、頬を赤らめて伏し目がちなプリスティアの姿。



「ワタクシも地上界に降り立って過ごしている内に、すっかり人間らしくなってしまったのですわね。ほらこんなにも胸が高鳴って……。ワタクシの内にあるマナが暴走してしまわないかと心配で溜まりませんのよ」


「……プリス。君はさっきから何を言ってるんだ」


「以前お母様の前で外の大陸から女の子を連れて来た時、不可抗力とは言えアナタは平身低頭、心から謝罪していました」


「それが何だと?」


「正直な話、以前戦った時ワタクシは貴方達を本気で殺す気でいました。それが聖域を侵した者に対する【王女】たる使命だと思ったからです」



 プリスの心情はずっと変わらないでいた。今までもこれからも、その筈だった。



「――だけれど、ワタクシの力を易々と上回ったアナタ方は、何処までも人間らしくありました。その時、自分の器の矮小さを心底味わいました。教えて下さい、どうしてシャルルはそこまで人間でいようとするのです?」

 

「……なんでだろうね。そう言われると、僕もどうしてあそこまでしたのかは分からない。ただそれでも敢えて言葉に表すなら……」



 シャルルは何かを考える仕草をした後、淡々と答えた。



「僕の中にある『勇者』としての血が、そうさせてるのかも」



 プリスティアの瞳を真剣に見つめて言い放った言葉には、寸分の濁りさえも無く彼自身心底思っていなければ言えない力があった。そして、そこまで言われてしまった後には、彼女はもう笑うしかなかったのだ。



「おかしいですわ。本当、アナタは一見捻くれてそうで、実は何処までも真っすぐですわよね。愚直なくらいに――――」



 その時、プリスは筐体の『撮影』ボタンを押していた。その動作はあまりにもさりげな過ぎて、シャルルが「あっ」と声を上げた時にはもう遅い。



「ふふっ。丁度シャルルもカメラ目線になっていますし、これはいいブツが撮れましたわねぇ。今後の取引材料にでもすると致しましょう」


「なっ!? そ、そんな事をしたら最悪どんな手を使ってでも僕は消去手段を用いるぞ!」


「別にそんなの勝手にやればいいではありませんか。傍からしたら二人で撮った折角の写真を理由も無く捨てられたという信じがたいスキャンダルが残るだけですけどね。片や『序列一位の発言』と、片や『序列最下位クラスの発言』。果たしてアルカディアの生徒はどちらを多く信じるでしょうね?」


「ぐっ」


「ふふっ。さしものシャルルも、女心を突かれてはどうにもなりませんのねっ。さて、ここでの目的は果たした事ですし次の場所にでも――――ん?」

 

 

 確実な『勝利』に酔いしれる中で次の遊ぶ所へ歩きだそうとした時、ふと二人の腕に装着されているアルカディアラインから通信が入る。通信主はミュリアからだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] プリティちゃんイケメン…シャルルが心の普段殺してる部分が観音開きにされていってる…
2020/06/06 05:48 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ