特異魔力点
――アルカディア学園・双子の部屋――
学園に帰って来て夜が明けた。無事にスイの目的も達成して、特に誰が何を言うでもない空気の中で、最初に口を開いたのはアムだった。
「昨日はなんだか妙にあっさりしてたな。なあルルナ」
「ルルとしてはよかったけどねー。もうプリティ達と行動しないといけないし、そしたらラグナロクもすぐ始まっちゃうもんね」
「本当にやれやれって感じだけども……。今度こそプリスに引っ掻き回されるかと思うと僕は正直吐き気が……」
「いーじゃんシャル最近そんな働いてないし」
「僕は日頃の三軍日課をいつもやってるからね!? 仕方ないよね!?」
珍しくシャルルが語気を荒げて反論する。勝手知った仲のギルドのメンバーは忘れかけているが、双子はやはり三軍で、本来やらねばならぬ事が大量にあるのだ。――そんな中でスイは皆を軽く見回すと、ぺこりと頭を下げる。
「皆さん、昨日は本当にありがとうございました。何から何までお助け頂いて、なんとお礼を言ったらいいの分かりません」
「んもーまたそれ言ってる。今日はもっと忙しくなるからスイっちにも頑張ってもらうかんねー」
「はい……! 私に何か手伝える事があれば、全身全霊力の限りを尽くします。水神様から心の欠片を無事に分け与えて頂いて、ようやく温かな光が灯った気がします」
全ての準備は整った。後は、「明朝この部屋で待っているように」とプリスティアの最側近であるミュリアから言伝を預かり、それに従って待ち続けている『グローリィ』である。
「7時半まで後3分だけど誰も来ないね。ねーシャルちょっと様子見てきたらー?」
「うーむ」
「ハッ。どーせトップクラスのギルドだからって王様感覚でいるんじゃねーの? 10分や20分の遅刻なんて大した問題じゃないとか思ってそうだぜ。なあリアン?」
「いくらなんでもそんな事はしないと思うけど……。しかもそれってアムの個人的な願望も入ってたりしない?」
「そ、そんな事ねーよ! つったって見ろよホラ。現にもう――」
約束の時間はもう一分を切っている。部屋に飾り付けられた時計の秒針が少しずつ迫り、一同を不安に駆り立たせる。シャルルまでもが、『まさかこのまま本当に来ないのでは――』などという考えが芽生え始めた、そんな頃に――。
『お生憎様。ワタクシに限ってそんなミスをするワケ無いですのよ』
声が聞こえてきたのは、ここではない別の場所からだった。ガチャりとドアノブを回す音をたてて突然姿を現したのはアルカディアの制服に身を包んだ二人の女性だ。
「あれれ!? プリティちゃんどっから入ってきてんのぉ!?」
「その呼び方はお止めなさいと言ってますでしょうにッ! まあいいですわ……、空間転移です。ワタクシ達が正面から堂々とこんな辺鄙な場所に来たら、周りが騒ぎになります事よ?」
相変わらずの引っかかる言い方だったがこの場にいる誰もが、それには特に触れずに早速作戦の準備をしようとプリスはリビングのテーブルを中心に人を集める。
「ミュリア。説明を頼みますわよ」
「承知致しました。さて皆様、存じてるとは思いますけれど、今日は雌雄を決するのが目的ではありません。あくまで本命は情報収集です――」
続いてミュリアは「こちらをご覧下さい」と、テーブルに一つの投影地図を映し出した。当然それを目にしたシャルルは質問をぶつける。
「これは?」
「こちらは当アルカディア学園を中心に映したセントルース大陸の地図です。……が、勿論ただの地図ではありません」
「なんかあちこちに赤い点がチラチラあるねー」
「マーテル様が特別に用意して下さった【特異魔力点分布図】と呼ばれるもので、文字通り特異の魔力だけを補足し、かつ捉える為の特殊な地図です」




