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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
幕間ってヤツ?
83/193

ま、何を話してるかは大体――

「は――?」

 

「え、ちょ……お母様!?」

 

 

 シャルルが想像したのとは随分斜め上の回答だった。

 

 

「その事を知ってる人は他にいるの?」

 

「いえ。リアンとアムだけです」

 

「じゃ外部には全く漏れてないって事でいいのね?」

 

「そうですね。それは断言できます」

 

「じゃあえーとね。他に身寄りは?」

 

「多分無いんじゃないかと。……あの人の言い方から推測するに、ですが」

 

「……あの人? その人とその保護した子の名前を聞いてもいいかしら?」

 

「ロベルティと名乗っていました。保護した女性の名前はレイシア」

 

 

 ――それを聞いた瞬間、シャルルにはマーテルの表情が少しだけ引き締まったような気がした。そしてそのまま背を向け歩き出し、執務用のデスクに座ると、素早くかつ器用にコンソールをタッチし始めるのだった。

 

 

「マーテルさん? 一体何を?」

 

「それをわざわざ言いに来たって事は……でしょ?」



 シャルルの方からはマーテルの顔がモニターによって隠れてしまい、その時の表情を窺い知る事は出来ない。



「そこからはおおよその予想がつくわ。だから早めに『準備』をしとこうと思ってね」

  

「はあ……参りましたね」

 

 

 流石は、伊達にこれだけの強者を揃えた学園の長をしていないな、とシャルルは思わざるを得なかった。

 

 

「じゃあ『ここへの編入試験』を……?」

 

「ふふっよかったわね。二日後に試験があるから、内容と実力次第じゃ最速のラグナロク参戦も可能になってくるわね。おめでとうシャルルちゃんっ」

 

「何がおめでたいのか全く以ってよく分かりませんがね……。どんな罰を受けるのかと今回ばかりは肝が冷えましたよ……」


「……ワタクシには話が全然見えて来ませんわね」

 

 

 自分達の力が規格外なのは十二分に理解していた。――とて、今相対しているのはそれらを更に凌駕する存在。まともに歯向かえば絶対にタダでは済まない。この世界に現存する、正真正銘にして絶対無二の神たる存在なのを思い出したのは、学園に帰って来てからの事だったのだ。

 

 

「じゃ決まりね。後は私に任せて、シャルルちゃんは早くその子の所に行ってあげなさい。こっちに帰って来てからまだまともにお話をしてないんでしょ?」

 

「……そうですね。ではお言葉に甘えて」

 

「ちょっとお待ちなさい! 私との約束はどうするんですの!」

 

「勿論分かっている。その上で、これからプリスにはちょっと僕と行動をしてほしいんだ」

 

「アナタとですの?」

 

「まず前提として時間があまりない。そして連中の目的も意図もまるで見えてこない。――となれば、今確実にほしいのは奴等が【カースドウェポン】を使ったという明確な『証』だ」

 

「それは勿論そうですわね。……それで?」

 

「レイシアはリアンとアムに同行してもらって編入試験の手続きとかはあの二人に任せる。実力に関しては問題ないだろうし、さして苦労はないと思う。どちらかと言えば、問題は僕等の方だ」

 

 

 シャルルは手を動かしているマーテルに視線を送ると、眼を合わせずにそれに反応する。

 

 

「続けて頂戴。話は聞いてるわ」

 

「この作戦の鍵となるのは僕とルルナとプリスと、後はミュリアにもちょっと協力がいるかな……。それと……『マーテル』さんです。忙しいのは重々承知でお聞きしますが、明後日、お時間はありますか?」

 

「んーそうねー。10時半から11時の間なら比較的空くけど、その時間で足りるのかしら?」

 

「それだけあればいけるでしょう。では、詳細はこうです――」

 

 

 シャルルが提案したのは、三視点を用いての【カースドウェポン】の使用と、その魔力の供給源が結びついているのを明確にさせる事だった。

 

 

 まずプリスの最側近であるミュリアが、ギルド『インテグレイト』に模擬試合と称して接触を図る。その際、なるべく手練れの相手と戦いたいと交渉し、かつ【カースドウェポン】を使用してくれるように追い詰める。その陰でルルナは密かに戦いの行方を見届け、それを使う瞬間を見極める。

 

 一方でシャルルはプリスと同行して、魔力の供給源となっているポイントにまで直接赴き、ルルナが使った時のタイミングと完全に同期しているかを直接確認する。この時シャルルだけでなく、プリスを同行させるのは学園の確かな主要人物が確認したとという事実が欲しかったからである。

 

 そして念には念を。その二つが確実に結ばれているかをマーテルが理事長室でも確認し、完全に証拠を押さえる事が今回の目的だった。

 

 

「以上です。マーテルさんはこれでよろしいでしょうか?」

 

「そうねー。特に問題はなさそうだし、私も理事長室から出る必要もなさそうだから、それでいいんじゃないかしら?」


「んもう、お母様ったら……」

 


 相変わらず最後まで投げ槍――――というよりは他人任せな感が否めない『理事長』であると思わざるを得ないシャルルとプリスだった。

 

 

「でも仕方ありませんわね……。お母様はここでは理事長ですし、【母】として出過ぎた真似はできませんものね」

 

「ああ、所でさプリス」

 

「な、なんですの改まって……」

 

「今回の作戦。恐らくだけど今まででも、結構気を抜けないものになると思うから『注意』してほしい」

 

 

 その言葉にはいつもプリスが聞くような皮肉めいた含みがまるで無く、珍しく芯の通った『彼の本心』からの言葉だった。

 

 

「……それはこの学園での私として注意すればいいんですの? それとも――」

 

「間違いなく後者だね」

 

「――分かりましたわ」


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