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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
5.二軍試験開始(この章は不本意ながら僕が紹介する事に)
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酷く淀んだマナ

 レイシアはツインマナリアブレードを掲げ、慌てて障壁を張ったルルナの頭上に力任せに叩き付けるように斬り裂いた。

 

 ガラスかはたまた金属が強く弾けたような甲高い音が周囲に轟き、この状態では流石のルルナもこれは不味いか――、とシャルルは疑う。

 

 

「へ……へへーん」

 

 

 そこにあったのは、魔法障壁には無数にひびが入りながらも寸前の所で耐えているルルナの姿。冷や汗を垂らしながらも持ち堪えていた。

 

 

「ルルを倒すには、後一歩足りなかったみたいだねっ!」

 

 

 必殺にするつもりだったレイシアの一撃を凌げたのは、双子にとっても幸運だった。

 

 とあれば、この隙を逃さない手はない。一番最初に動いたのはシャルルだ。

 

 

「待たせたね――【抵抗魔法レジスティ】ッ!」


「おほー生き返るぅ」

 

 

 シャルルの行動はそれだけに留まらなかった。レイシアの背中を追いかける形となった状況は、ルルナをサポートするだけでなく大きな一撃を叩き込むチャンスでもあった。

 

 最も背後から襲うのは不本意でもあるが、四の五の言ってられる戦況ではない。目の前の勝利を掴まなければ戦いに生きる者たちに明日は無いのは、アルカディアに入ってから嫌と言うだけ見て来たからだ。

 

 

「悪く思わないでね。これも勝負だ!」

 

 

 素早く接近して、オリハルコンダガーが後少しでその背中に届き、決着が着く。



 

「『マナリミッター解除』。――【ダズル・スペル】発動」

 

 


 ――かと思ったその時、レイシアはロベルティの指示を初めて仰がず、一つの緊急判断を自ら下した。

 

  

(敵が複数!? いや違うこれは……!)

 

 

 目と鼻の先にあったレイシアの肉体は、突如『複数に』分かれた。

 

 だがそれは本当に複数になったのではなく、機械と魔法による複合技術であり、一つの技。超高速移動を左右に繰り返した影響によってシャルルの目に『残像』を映し出させ、それを【幻惑魔法】と重ねてより一つ一つの影を強く強調させる。



(くそ――どれだ!)



 狙いが定まらなくなったシャルルはがむしゃらに刃を振るうが、やはり当たりはしない。


 

「――回避完了、ターゲットを引き続き固定」

 


 虚しく空を切った結果、今度は双子達に大きな隙を生じさせ――――、



「ルルナ! 急いで離脱を――」 

「遅い。目標捕捉、ダークマナエナジー、マルチフィルアップ」

 

 

 残像を映すだけの速さを持ったレイシアが、何の準備もせずに飛び出した所で逃げ切れるなど、『到底不可能』。

 

 

「――【闇刃】」

 

 

 気づいた時には時既に遅い。レイシアの持つ二対の刃が、ルルナの身体を容赦なく斬り裂いた。

 

 

「ルルナッ!」

 

 

 溜め込んだ【闇】の力がルルナの肉体で紫色に爆発する。そして威力でより強く弾き飛ばし、周囲の瓦礫をも薙いでいくと、最終的に彼女の姿は一瞬でそれらによって埋め尽くされてしまった。

 

 


「……ふむ。終わったようだな」

 

 

 

 息を呑む光景の後、最初に口を開いたのはロベルティだった。

 

 

「レイシア、目標の反応は?」

 

「ありません。瓦礫の奥から微弱なマナ反応は検知できますが、対象は完全に沈黙したようです」

 

「くくっ、そうか」

 

 

 勝利という甘美な響きに包まれたロベルティは、ただ一人残されたシャルルに向かって両手を広げながら見下した。

 

 

「どうかね。これが機械と魔法、そして魔界の力をも結集した究極の生命体だ。君達もそれなりに強いようだが、例え相手が誰であろうと今のレイシアを止められる者は誰もいない!」

 

 

 ロベルティの言葉に後押しされるかのようにレイシアはシャルルに無表情のまま歩み寄ると、静かに告げる。

 

 

「これで終わりです――」

 

 

 片手で軽々と両刃の剣を振り回し、目の前の敵を必殺すべく構える。そこには、かつて『巫女』と呼ばれていた少女の姿などとうに無く、機械によって白兵戦術をインプットされた一つの機械生命体がそこにあるだけだった。

 

 

「――? 何故抵抗しないのです?」

 

 

 が、レイシアは最後のあがきをしてくると思ったシャルルに対し、いつまで経っても戦う素振りを見せないでいるのを純粋に疑問に思った。

 

 

「いや別にね」

 

「……?」

 

「『本当に』ルルナがやられてしまったのなら、確かに次は僕の番なんだろうけども、ね?」

 

「先程から一体何を――――!?」

 

 

 場にいた全員がその瞬間に感じたのは、純粋なる『強い気配』。それだけだった。

 ――たったそれだけでレイシア、ロベルティが『とある方向』に目を向けざるを得なかったのだ。

 

 

「……全く。やっと起きたようだね」

 

 

 呆れた果てた声でシャルルが語り掛けるのは当然、一人しかいない。

 

 そんな声に呼応するかのように、周囲の空気が震え、地面も揺れる。

 

 ――風も吹いていないし、地震も起きていないのに。

 

 これは周囲に存在する風、水、地など全てマナの粒子そのものが、何処からか放たれるマナと共鳴し合っているのだ。

 

 しかしこの現象は余程強く夥しい質量のマナを放たなければ、そもそもマナ自体が反応せず、何も起きない。

 

 

 ならば誰がこの現象を起こしているのか?

 

 

 ――ルティーヌではない。

 

 ――ロベルティでもない。レイシアでも。

 

 残された者は、シャルル。だが彼は今も平然と立っているだけで、特別何もしてはいない。

 

 となれば、残るのはただ一人――、

 

  

「ルルナ、もうそろそろいいんじゃないの? それっぽい演出はその辺にして、さっさと出て来なよ」


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