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僕は無双が出来ない。  作者: 朝夜
5.二軍試験開始(この章は不本意ながら僕が紹介する事に)
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僕とした事が

 レイシアの全身に、紫めいた妖光の粒子が集いだす。



「ちょ……ねえシャル! これって……!」



 それは深淵に満ちた、とても黒い場所から呼び寄せた『淀んだマナ』。圧倒的な負の力で構成された、本来のそれとは一線を画す、異端なるマナだった。

 

 

「……懐かしくもあり、あまり思い出したくはない『あのマナにも似た』、とても禍々しいマナだ」

 

 

 レイシアから流れ出る淀んだ力に双子が思わず脳裏に浮かべたのは、アルカディアで生活してからまだ一度も再会していない『母の面影』だった。

 

 

「まあでも……ママに比べたら何十倍もマシだけどねッ!」


「何十倍で済めばいいけど」

 

 

 勿論そんな事などロベルティが知る由もなく、高笑いをしたまま双子を見下す。

 

 

「これは凄まじい魔力だ! あの男に言われた時は半信半疑だったが、まさか『魔界の力』がこれほどとはな! さあ行け! ここまでの力を持つ今のレイシアに敵などいない事を見せてやれッ!!」

 

「はい。――『生成』、ツインマナリアルブレード」

 

 

 レイシアは一度両手にそれぞれ持った武器をリセットすると、今の状態に最も適した装備を瞬時に『生成』。そして勢いは決して停滞させず、流れのままに突っ込む。

 

 

「……仕方ないね。――転送・【オリハルコンダガー】」

 

「お、そんな武器使うなんて珍しく真面目」

 

「ルルナ、バフサポート」

 

「はいはい」

 

 

 ルルナが茶化してきてもそんな事に構っていられないとばかりの無視っぷり。まるで最初から存在していないかのように、シャルルは『アルカディアの学園にある自室から』持ち前の伝説の武器を迷わず転送する。

 

 

「しかしとんだ戦闘技術だね……。一体この肉体にどれだけの白兵データが詰まってるのか……今日戦ったマナロイドでは群を抜いた強さだ」

 

 

 少女らしい見た目とは裏腹に歴戦の兵士顔負けでごりごり近接戦を仕掛けるレイシアだが、何も武器を持って戦うだけが彼女の特権ではない。それはシャルルがレイシアの隙を突いて、一気に懐に飛び込んだ瞬間に、なんの前触れもなく『もう一つの力』を見せつける。

 

 

「――――風属性マナ・集約」

 

 

(『具現魔法』だって……!?)

 

 

 まさか機械体が直接――――などと気付いた時には、既に遅い。

 

 

「発動――【ウィンド・ハイプレス】」

 

 

 レイシアは手の平に集約させたマナを惜しげもなく解放させ、シャルルに至近距離から魔法を浴びせた。威力はそれほど強くない魔法でも、既に攻勢に移っていたシャルルにとっては、単純に風圧の塊が向かい風となって全身に押し付けてくる感覚は流石に耐え難い。

 

 

(威これは一旦下がらざるを得ないか……!)

 

 

 そしてシャルルが体勢を立て直そうと後ろに下がった『その隙』を、レイシアは見逃さなかった。

 

 レイシアは手を軽く握ると胸にかざし、瞳を閉じる。周りから見れば何かを念じているようにも見て取れるその仕草は――、


 

「やばいよシャル! あの子また『魔法』を――!」


「またか! 機械にしてはちょっと早すぎやしないかい!?」

 

 

『闇と魔の霧雨――【アシッド・ミスティレイン】』

 

 

 

 空に雨雲がかかるでもなく、レイシアがその魔法を唱えた瞬間――その『雨』は双子に容赦なく降り注いだ。

 闇のマナを含んだその雨は当然ただの雨である筈がなく、すぐにその効果は双子に表れ始める。

 

 

「この雨は不味いね……」


「ちょっとぉ! これじゃルル達ずっと【衰弱】状態に……!」


「そんなの分かってる。また来るよ!」

 

「攻撃再開」



(正面から来た……それにしては視線が僕に向いてない……―‐‐‐いや違う!?)



「ターゲット・『切替スイッチ』」

 

 

(やられた――僕じゃないのか!)


 

 自分がいる場所を通り越して、その先に控えているルルナを狙うだなんて、自分をすり抜けていかなければならないリスクが伴う上、よしんば成功したとしても挟み撃ちになる格好は避けられなくなる。


 だがそれは、れっきとした機械ならではの精密な状況分析から来るもので、決して個人の感情で狙った悪手ではなかったのだ。



「――行きます」

 

「えっ、マジで!?」

 

(『疾い』! いや違う僕等が『鈍く』なった所為か!)

 

 

 レイシアの動きを目で追おうとしたり、直接妨害しようとしたり、あるいはルルナに救援しようとしたり、果てはそれの一連の流れをシミュレートしようとするその『頭の回転』すらも、シャルルは通常通り行う事が出来なかったのだ。



「僕とした事が――【レジスト】ッ!」


 

 まずはシャルルが単独で【衰弱】効果を解除した。が、気付けばレイシアは既に通り過ぎ、ルルナを捉えようとしている。

 故に次の手をどうするか、シャルルは迷った。ルルナにも掛けられた【アシッド・ミスティレイン】の効果による【衰弱】状態から脱却させるのが先か、それとも直接ルルナに救いの手を差し伸べるのが先か。二つに一つの末に、シャルルが出した答えは――――、

 

 

「持ち堪えといてルルナ!」


「ちょっとおおおッ!?」

 

「ルルナに【光の加護】を――!」



 虚を突かれたレイシアの攻撃を直接阻む手立ては厳しいと判断したシャルルは、ルルナに直接【防護魔法】を付与した。その魔法でルルナがどれだけ耐えられるのかは不明だし、焼け石に水かも知れない。

 

 

「目標を――――殲滅します」


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