これが感じていた悪寒?
そんなロベルティの胸中は、全てが的を射抜かれてしまい、隠す事など出来なかったのだろう。動揺を隠せないままに、レイシアに『指令』する。
「――レイシア! 二人を、その未知の生命体を一刻も早く抹消しろッ!!」
「最優先指令受信――――。把握しました」
手加減をする必要などなかった。そう直感したロベルティは今度こそ迷わずレイシアに命を与え、それに呼応した彼女も脇目もふらずシャルルに特攻した。
(いきなりか――――。中々の疾さだ)
正面から振り下ろして来たミスリルハンマーに対し、シャルルも真っ向から魔導障壁で受け止めた。ハンマー自体の質量も相当に伴っていたためか、踏ん張った反動のままに後方へと押し流される。
「くっ……やるねッ!」
力勝負では少々分が悪い。そう悟ったシャルルは受け止めていたハンマーから瞬時に離れると、レイシアは負担が突然無くなった勢いで前のめりになり、シャルルはその隙を逃さず背後に回る。当然、その時のスピードは常人のそれを遥かに凌ぐ。
腰に携えていた二対のダガーを取り出すと、シャルルはがら空きになった背中に狙いを定める。
「どうしても戦うというなら、少しだけ痛い目にあって貰うよ!」
例え見た目が自分達を同じくらいの少女でも、ここまでに至る経緯や今の状況を鑑みるに、目の前の相手がこの機械軍のリーダー格であるのは最早間違いない。シャルルは手早く戦闘不能にさせようと、逆手に持ったダガーで迷わず斬り裂く。
「――『反転』」
「な――!」
後少しで刃が届く。その瞬間、レイシアは物理法則を無視したとばかりに突如ぐるりと振り向き、真正面で相対する形になったのだ。
「――敵性反応、行動遅延確認。――『反撃』」
瞬間、一点攻勢に移ったレイシアは、ミスリルハンマーを握る右手とは逆の左手を突き出して来た。その手に握られていたのは、『瞬速で自己生成』した鋭く、細長い剣。
(これはちょっと、不味い……?)
そして突き出した剣の切っ先は――シャルルの喉元を捕えた。
「シャルッ!?」
それは後ろで見ていたルルナからは丁度突き刺さったように見え、思わず心から叫んでしまっていた。
「――っと。なんとか大丈夫だよ……」
「手応え……無し」
レイシアの無念そうな声とシャルルのほっとしたような声が、全てを物語っていた。残りほんの僅かの距離だった剣は、辛うじてシャルルの横を通り過ぎ、結果として双方とも無傷のまま。
「んもう! 余裕出し過ぎ! ルルも行くからねっ!」
「後方から増援警戒――マナバーニア発動」
そしてルルナが加勢に入ったタイミングで、二対一の分の悪さを考慮してか、機械の力を最大活用した加速機能で一気に後方へと引き下がる。
「ちょっと無茶してない?」
「何ともないよ。むしろ久しぶりに冷たい空気を味わえて、心地良いくらいだった」
さっきの一瞬を見てて、正直ひやりとしていたルルナだったが、特段手傷を負っている様子も無く至って普通のシャルルだった。
その一方でロベルティも双子の謎めいた強さを今のやり取りで直感したのか、今までになく険しい表情をする。
「マスター。この二人は強敵です。【ソロモンズゲート】の解放の許可を」
「……それ程までに、この二人は強いとでも言うのか」
「手加減をして勝てる相手ではありません。マスターの命を遂行する為にも、今の私には『更なる力が』必要です」
ピシャリとレイシアは言い放った。それを見て、ロベルティは少しだけ迷い、眼を閉じる。
「ちッ……。『あの男の力』をみすみす利用するのは癪だが……」
それでもすぐに決断し、レイシアに命じた。
「仕方あるまい。【管理者による第一権限】により、許可する! 今こそ魔界に眠りし【七十二の悪魔の力】を解放せよ!」
「承知しました」
ルルナからしてみれば、レイシアとロベルティのやり取りは『精々小細工を企んでいる程度』にしか思わなかっただろう。
「作戦会議は終わったのかなー? じゃあ次はこっちから――」
だが、すぐに双子は思い知る事になる。
「……待つんだルルナ! この力……!」
この少女はやはり侮ってはいけない相手だという事を――――。
「【ソロモンズゲート・第七十位悪魔・リベレート】。魔より出でし【闇】により更なるマナの増加を図り、戦闘能力を著しく向上させました」




