何者って聞かれると……
「なに……?」
結果としてルティーヌは健在だった。確かに対象を潰した筈だったレイシアのミスリルハンマーはルティーヌではなく、その『真横』を打ち付けている。どうしてそうなったのかとロベルティは原因を探るまでもなく、すぐに判明する。
「ふうよかった。上手く腕に当たって狙いが外れたみたいだね」
「ちぇ。シャルったら女の子になったら妙に張り切るんだから」
「なんだかとっても誤解を生むような物言いだね……?」
「別にいーじゃない。実際シャルってほぼハーレム状態なんだし」
「いや、なんかいきなりとんでもない光景を見ちゃったから、つい条件反射で助けてしまっただけの話であって……」
そう言われてしまうと『それはそれで事実』なので、シャルルとしては他に言い返す術がなくなってしまう。が、今はそれを話してる場合でもないので、シャルルにとってはこの状況はある意味不幸中の幸い……だったのかも知れない。
(なんだ……? 子供だと……?)
一方でロベルティは、目の前の獲物を奪われた怒りで凄んだ眼で睨む――――所を寸前でどうにか堪え、努めて温和な態度で双子に接した。
「ここは君達のような幼い子が来ていい場所ではないぞ。さあ、危ない目に会う前に早く去りなさい」
「うーん、そうしたいのは僕等も山々なんですが……ね?」
ロベルティは始めこそ優しく語りかけるが、双子はその場から去るどころか距離をどんどん縮めていく。
「……『去れ』と言っているのが聴こえないのかね? これは遊びではないのだッ!」
「マスター・ロベルティ。目の前に新たな敵性反応です。警戒レベル『S』と断定しました」
「馬鹿な……一体」
思いもよらないレイシアの言葉に、ロベルティは思わず聞き返す。一見ただの少年少女の何処に一体そんな力が潜んでいるのか――と。
「ルティーヌに対する警戒度はAだったな?」
「はい」
「分かった。レイシア――『最終警告』だ」
「――承知しました」
レイシアは主の命ずるがままに双子の下へ歩み寄り、そして静かに口を開く。最初にルティーヌと相対した時と同じように。
「マスター・ロベルティからの命です。大人しく退かないならば、今から貴方達を撃破しなければなりません」
手に持ったミスリルハンマーを威嚇する様に地面へ叩き付け、これ以上の猶予は与えないと最も近くにいたルルナを見つめながら警告する。
「ふーん」
――しかし、そんな事で止まる彼女であるはずもなく、
「だってさ。どーするのさシャル」
あくまで、ルルナはルルナだった。どんなに現実離れしたレイシアを眼前にしたとて、態度は何も変わらない。
「今の僕達はアルカディア学園の双子じゃない。であれば、『こんな状況』を見過ごすのは『勇者としての血が許さない』――――のかもね、多分」
「ほぇー。こんな時にそんなカッコつけ方するぅ?」
「別にルルナが相手してもいいんだよ? 僕だって極力面倒事は避けたいし」
「ルルだって『倒れてるあの子』を助けたいだけだもん。だから本当なら戦いたくなんてないのっ!」
「ふーん。まあ一理ある……かもね」
今度はシャルルが前に乗り出し、ロベルティに対して問い掛ける。
「このユートゥルナ城を包囲している機械の兵隊を指揮しているのは。貴方で間違いないようですね」
「……子供と話す舌は持たぬ。二度は言わんぞ……!」
「隠したって無駄ですよ。そこのレイシアとか言う機械生命体から放出されている魔力――――どうやらこの領域で反応されている機械兵から出ている電波の周波数と極めて類似した反応です」
「そーそ。この辺に展開されてる【遮断領域】も、思いっ切りその子が中心になってるし、もうとっくにバレバレなんだよねー?」
……見抜かれている。――何故。相手はただの小さな子供なのに。
「貴様等……何者なのだぁッ!?」
「世の中を知らない『子供』ですよ――僕等は」




